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数字に騙されないようになるための5つの視点

1.自分がイメージできる数字に置き換える(p.40)
2.見える部分を支えている見えない部分に目を向ける(p.49)
3.メディアの情報に「なぜそうなの?」とツッコミを入れる(p.60)
4.小分けにされた数字は分けられる前の全体で判断する(p.166)
5.グラフは縦軸と横軸の比率や目盛の範囲にまず注目する(p.188)

今回ご紹介する『 問題は「数字センス」で8割解決する』は、公認会計士の著者が「数字センス」を鍛える方法を解説した一冊。

「数字センス」とは、次の3つのスキルから成ります。

 1.数字を読む力
 2.数字で考える力
 3.数字で伝える力

この3つの力はそれぞれ、次の3つの力に対応しているといいます。

 1.問題点の把握力(数字を読む力)
 2.解決策の提案力(数字で考える力)
 3.解決策の実行力(数字で伝える力)

そして、これら3つを掛け合わせると、問題解決力となります。

つまり、数字の読み方・考え方・伝え方からなる数字センスを磨くことは、そのままビジネスにおける問題解決力をアップさせることに直結するというわけです。

今回は、その中でも特に「数字を読む力」に注目します。

数字を読む力とは、

 <数字を客観的に見ることによって問題点を正しく把握する力>

ということになります。この力が不足していると、数字に騙されてしまうことになります。

それを防ぐために身につけておきたい5つの視点を本書よりご紹介します。

1.自分がイメージできる数字に置き換える(p.40)

問題は「数字センス」で8割解決する

例えば、伊勢丹と三越の営業利益の比較。

それぞれ、323億円と126億円なのですが、額が大きすぎていまいちピンときません。その差は200億円もあるわけですが、この数字をどう評価したらいいかがわからないのです。

そこで、「自分がイメージできる数字に置き換える」という方法。

三越と伊勢丹のように多くの商品を販売している場合には、架空の商品として1万円のシャツなどを想定して、シャツ1枚あたりの利益を求めると良いでしょう。

ということで、1万円のシャツにスケールを合わせると、このシャツから得られる利益は、

 ・伊勢丹が410円(利益率が4.1%)、
 ・三越が160円(利益率が1.6%)

となり、違いがわかりやすくなります。

少なくとも「200億円も違うのかー、チヨウすげー」と唸っているだけの時よりもイメージがわきやすいはずです。

2.見える部分を支えている見えない部分に目を向ける(p.49)

5億円の豪邸を持っている有名人は、一見するとお金持ちに見えます。でも、実は違うかもしれません。

資産は目に見えるので、豪邸を持っている有名人はお金持ちに見えます。しかし、資産からその人が抱えている借金の金額を差し引かないと、本当の意味でのお金持ちかどうかはわかりません。

つまり、見えている部分に惑わされることなく、その見えている部分を下支えしているところに目を向けることで初めて、見えている部分を正しく把握することができるわけです。

もしあなたが今この瞬間に経済的には何の問題もなく過ごせているとしたら、何がその安定感を生み出しているのかを一度考えておくことは無駄ではないでしょう。

「それ」があなたの意志とは無関係に価値を目減りさせたり、ある日突然消えてなくなったり、といったことがないかどうかを、あるいは「それ」に対して、あなた自身が関与できる余地を増やせないかどうか、を確かめておくことは、「いざ」という時の備えになるはずです。

3.メディアの情報に「なぜそうなの?」とツッコミを入れる(p.60)

本書では事例として次のようなものが挙げられており、「なるほど」と思わされます。

●ナンバーポータビリティー制度によって携帯電話各社のシェアが塗り変えられたが、中でもドコモは「シェアを奪われた」という印象が強い

●しかし、実際には55%から52.9%と2.1%下がったに過ぎない。

●対して、ドコモから奪ったシェアは、AUが0.7%、ソフトバンクが1.2%、イーモバイルが0.2%、それぞれ獲得した

みなさまがドコモのシェアが減ったと感じる一番の理由は、ニュースで、毎月ドコモの契約増加数が一番少ないと伝えられるからだと思います。

つまり、増減数という変化量が比べられているだけで、もともとの契約者数
という母数に大きな差があれば、変化量の差などは簡単に吸収されてしまい
うるわけです。(注:かなり簡略化して書いています)

4.小分けにされた数字は分けられる前の全体で判断する(p.166)

新聞などを見ていると「1日コーヒー1杯の値段で英語をマスターできます」というようなキャッチコピーを大きく目立つように書き、商品の値段をあまり目立たないように表示している広告があります。

ということで、「小分けにされた数字問題」について考察されています。

要するに、いかにもお手頃な値段で引きつけておいて、実際に支払うことになる高額なトータル金額が隠蔽されているのです。

この「小分け戦略」に対処するには、実際に支払う金額はいくらなのかをきちんと計算するほかないでしょう。

ちなみに、コーヒー1杯300円と考えると、1ヶ月で約9000円、1年続けたとしたら約10万8000円になります。

5.グラフは縦軸と横軸の比率や目盛の範囲にまず注目する(p.188)

グラフの線に惑わされることなく、グラフが載っているスケールにまずは目を向けなければいけない、ということです。

逆に言えば、グラフの印象はコントロールできる、ということでもあります。これについては、本書に「メッセージに合わせてグラフをカスタマイズする」という項目がありますから参考にしてみてください。

同一のデータでありながら、資料Eのグラフではあまりガソリン価格が上昇していないように見えますし、資料Fのグラフではガソリン価格が大きく上昇しているように見えます。その理由は、資料Eでは縦軸の目盛りが0円〜180円という「180円の範囲」になっているのに対して、質問Fでは縦軸の目盛りが110円〜160円という「50円の範囲」になっているからです。

まとめ

読み始めた当初は、ありがちな経済入門書だな、と思っていたのですが、読み進めるうちに、個々のちょっとした知識やテクニックが有用なのに加え、全体を通して、読者の問題解決力をアップさせたい、という著者の想いが伝わってきます。

ニュースで報道される数字に疑問を感じている人にとっては、それを解消するためのヒントが得られるでしょう。

すでに、数字センスを身につけた人にとっては、それを人にわかりやすく伝える術が得られるでしょう。

数字に騙されないようにするための数字リテラシーを高めたい人にとっての最初の一冊として最適です。

問題は「数字センス」で8割解決する
技術評論社
発売日:2008-07-09
おすすめ度:5.0

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