不慣れ?じゃあ始めてみよう。

カテゴリー: R25世代の知的生産書評


独立やノマド、新しいチャレンジをしたいと考えられている方には絶好の「エール」となる一冊です。著者は自分のビジネスを作りたいと考えている人に以下のようなメッセージを送っています。

p24
一つのアイディアと、少しの自信と、少しの勇気だけがあればいい。

たったこれだけ。事業計画書すら不必要です。「アイデアを形にするために行動を起こすこと」。これができればビジネスをスタートさせられます。

ジェイソン フリード, デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソン
早川書房 ( 2010-02-25 )
ISBN: 9784153200111
おすすめ度:

 

起業家ではなくスターター

副題は「37シグナルズ 成功の法則」。37シグナルズという会社がどのような手法・哲学で成功してきたのかが語られています。

もしこの本を読み終えて、わずかばかりでも「よし、自分でビジネスをやってみよう」とか「新しい事を何かはじめてみよう」と考えなかった方は、ビジネスのスターターを目指さない方がよいでしょう。

逆に少しでも琴線が触れた方は、アイデアを形にするために、動き出してみる事ことです。「起業家」を目指す必要すらありません。

p24
ビジネスを始める人たちの中に新しいタイプのグループがある。彼らは、利益をあげながらも自分たちを起業家とは考えていない。大部分は自分たちをビジネスのオーナーとすら思っていない。自分の好きな条件で好きなことをやっているだけで収入を得ている。

企業の中で大きく成長したいと考える人もいれば、自分のやりたい事をとことん追求したいと考える人もいるでしょう。現代では後者のような考え方で「ビジネス」を形にできる土壌が生まれています。

大きな投資も必要ありません。パソコンとネットワーク環境があれば始められる事はいくらでもあると思います。小さく始めれば失敗してた時のリスクも小さく押さえられます。

そう、私たちが住んでいる世界はそんな世界なのです。今までの「常識」とはまったく別のルールで動く世界が確かに存在して、それが手の届くところにあるのです。

あとは、それに向けて手を伸ばすかどうか。その差しかありません。

 

どのようなビジネスか

自分の好きな条件で好きな事をするためには、どのようなビジネスを考えればよいのでしょうか。著者はこう述べています。

p30
「自分自身の問題を解決する」アプローチでは、作り手は作るものと恋に落ちる。

自分が困っている事、欲しいと思っているもの、使ってみたいサービス、そういったものが核になって、とことんそれを追求していく事がスタートになります。

そんなニッチなサービスなんて意味ないよ、と思われるかもしれません。しかし、例え千人に一人、一万人に一人の割合でも日本全国が市場ならばどうでしょうか。あるいは世界が市場ならば。

ネット上でサービスを流通させるためのコストはごくごくわずかです。ロングテールのシッポの部分だけを切り取ってもビジネスとして成立する可能性がいくらでも秘められているのではないでしょうか。

大きな企業にすることを目的にしなければ、いろいろな可能性が生まれてくる。そんなとてもワクワクする世界が目の前に広がっている事を37シグナルズという「実例」が教えてくれています。

とりあえず、で始めてみる

ビジネスの始め方も分からないし、どうやって運営していけばいいのか検討もつかない、とスタートを切る事に躊躇しているのかもしれません。

しかし、そんな考え方はまったく不要です。

p31キューブリックは、不慣れなら作り始めることが、必要だと知っている。一番重要なのは、始めることだ。

自分に何が足りていないのか、何を準備しなければならないのか、何を考えなければいけないのか、は実際に始めてみないとわかりません。始めてみる前にいろいろ考えてみても、それが実際に正しいのかどうか検証することも修正することもできません。

まずは、始めてみることです。

目指すべきものは

もしかしたら、あなたは超一流の企業にあこがれを感じてビジネスを始めようとしているのかもしれません。しかし、すこし考えておく必要があります。

p108
あなたはアップルよりもアップルらしくすることはできない。彼らはゲームのルールを握っているのだ。そしてルールを作っているものを打ち負かすことはできない。あなたは少しだけ良いものを作るだけでなく、ルールを再定義しなくてはいけない。

今までのルール、つまり既存の市場に後から乗り込んでもすでに覇権を握っている企業以上の存在になることはできません。もしかしたら不可能ではないのかもしれませんが、マイクロソフトやグーグルを見ても分かるように出来上がった市場の中で巨大な企業に対抗するのは難しいものです。

そこで出てくるのが「自分が欲しいサービス」という考えです。「自分が欲しい」ということは、逆から見れば「今はまだ存在していない」ということです。その分野ではまだルールが提示されておらず、最初にサービスや商品を提示した人がルールを作る余地が多いに残されています。

そのような「穴場」に潜り込む事ができれば、それがビジネスの土台になるでしょう。そこがまず目指すべきところなのかもしれません。

まとめ

今では自分のアイデアでビジネスを始める敷居はとても低いものになっています。あとはスタートを切れるかどうか、が分かれ目といえるでしょう。

この本はその背中をかなり力強く押してくれると思います。

最後にビジネスを始めたいと思っておられる方に向けて一つメッセージを送っておきます。

「さて、まず何から始めましょうか?」

 

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小さなチーム、大きな仕事 
・現代版ギルド社会とそこで生き抜くための術 

▼合わせて読みたい:

ネット時代の「仕事」のやり方、ということであれば、以下の一冊も合わせて読んでおきたいところです。以前書評を書きましたが何度もプッシュしたい一冊です。ブログやTwitterは個人の「マーケティング」として非常に重要でそれがビジネスのきっかけになる可能性を秘めています。

佐々木 俊尚
宝島社 ( 2010-01-09 )
ISBN: 9784796674850
おすすめ度:

 

▼編集後記:
 買ったまましばらく本棚に置いておいた本ですが、何人かのブロガーと、先日の佐々木さんの書評を読んで本を取る気持ちが高まって一気に読みました。読書のコツは読みたい気持ちが高まった瞬間に読む、というものです。この方式だと読書のスピードも、集中力も何となく読んでいる時に比べて大きく上昇します。お試しあれ。

 
 
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

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