自分のやっていることをわかりやすくセミナーで話すと、言葉は悪いですが見世物小屋できわものを晒しているような反応をされがちです。でも私がやっていることのほとんどは、すでに大橋悦夫さんがやっていたことのマネでしかないのです。
- お金がゼロになるところまでシミュレートしておく。
- 自分のお金の出入りを全部把握できるようにする。
- 向こう1週間の時間の使い方をシミュレートしておく。
- 自分の行動記録を全部残しておく。
これは私が昔から、それこそ学生時代からやりたかったことでしたが、できないと思っていました。
大橋さんと出会って、彼はそれを全部やっていることを知ったので、できるということが分かったのです。すでにできている実例に出会うということは強力です。
こうした話をすると「その成果は?成果は?」とたたみかけられることもあります。
私は成果よりも心が落ち着くことを強調したいのですが、いかにも面倒そうなことをする以上、それだけの見返りが必要だということなのでしょう。
私と同じことをやっても同じ成果が上がる保証はないですが、一番わかりやすい成果としては28冊の本(共著を含む)を出せたことです。ですから少なく見積もっても、150万字を書いたということです。確実に言える成果としては、タッチタイプが速くなりました。100万字打てば誰だって多少は速くなるはずです。
やる気の99%は不要
しかしシミュレートしておくことの本当の成果は、やはり安心して物事に没頭できることなのです。今この記事を書いていますが、これにも十二分過ぎる時間をとっています。つまり、シゴタノ!を時間無制限という気持ちで書いていていいのです。
なぜそれができるかというと、他のことをやるための時間も、少なくとも向こう1週間程度に関してならば、完璧に確保されているからです。来週の木曜日までにやるべき事は、今のペースで百%終わります。
準備しておくべき準備も百%全部準備されます。やりたいことも今考える限りは全部できます。
「ここでシゴタノ!をすばやく書き上げてしまわないと、やりたいこともやれなくなるし、しなければいけないことも終わらなくなる」という、あの根拠のない焦燥感がないのです。
昔はこの焦燥感にしょっちゅう襲われていました。「やりたいこともやれなくなる!」「しなければいけないことも終わらなくなる!」と。
でもそれは正確ではないのです。
正確には「やりたいこともやれなくなるかもしれない!」「しなければいけないことも終わらなくなるかもしれない!」でした。タスクシュートがなかったので、先のことはかなり大ざっぱな直感的計算に頼っていたためです。
ただ、分からないので、本当に終わらなくなる可能性は否定できません。だから早くやり遂げてしまうに越したことはなかったわけです。
早くやり遂げようと思ったとき、必要になるのが「気合い」です。今まったく使っていないのも、これです。早くやる必要がないことは明らかなので、「気合いを入れて少しでも早く終わらせる」という必要がまったくないのです。
大橋さんとの共著『スピードハックス』を書いたとき、大橋さんから吸収した最大のことは、「気合いを入れない」ということでした。
気合いはたいてい有益ではなく、場合によっては害にしかならない。大橋さんはタスクシュートを持っていて、私は持っていなかった中での仕事だったため、その違いが顕著でした。
私は取りかかりに「気合い」が必要でした。なぜなら「他にもっとやるべきことがあるような気がしていた」中で、タスクをやるからです。気持ちを取りかかる対象に「集中する」(これも気合い同様、幻想に近いものです)ためにも、一時的な覚醒によって意識的な努力を要しました。
それからすでに述べたとおり、何をするにも「可能な限り早く終わらせる」ために「気合い」が必要だと思っていました。「他にするべきことがあるかもしれない」中でタスクに取りかかっていたからです。
最後に、物事を完全に終わらせるためにも「気合い」が必要でした。「終わらせる」ということは簡単なことではなく、一方で「終わり」が見えてくることで緊張感は緩みます。緩みがちな緊張感を「維持する」ためにも「気合い」という意識的努力が入り用だったわけです。
でもこれも要らないことでした。「終わらせる」という必要が絶対でないことも私は『スピードハックス』で学んだのです。
取りかかるための「気合い」も要らず、スピーディに進める「気合い」も要らず、終わらせるための「気合い」も要らないとなると、気合いというものはどこにも出てくる必要がないのです。すると私がいつも必要としていた「やる気」は、その1/100程度で済んでしまうのです。それが「スピードハック」でした。
「気合いを入れない」この方法は「安定飛行」を可能にしてくれます。この記事を書くために見積もった時間は40分でした。朝の7時に書き始め、今7時37分54秒です。多少の誤差はありますが、まったく問題にはなりません。「気合い」を無駄に使わなかったことで、このあとの仕事にも支障がないのです。
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クラウド時代のタスク管理の技術―驚くほど仕事が片付いてしまう! | |
佐々木 正悟
東洋経済新報社 2011-11-25 |
上記の「やる気を不要にする」方法を、クラウド時代に合わせて私なりにまとめたものが、この本です。「やること」の全てをクラウドに置き、そこで時間のシミュレートをする方法に、全てのページを割いています。
やる気を使わないために必要なのは「方法」です。膨大なタスクにかかる時間をアタマでシミュレートするのは普通できません。それは機械に任せるべきところだと思います。