前回は、日々の仕事の中で左脳的能力を高めることができるとお話しましたが、リーダーに必要とされるのは左脳的能力だけではありません。同時に右脳的能力、すなわち人を動かす人間的な魅力、すなわち人間力も大切になると私は思います。
右脳的能力とは、笑顔がいい、明るい、ユーモアがある、心が温かい、懐が深いなど性格的なものと、一貫性があってぶれない、言葉に責任を持っている、前向きに考える、威張らないなど考え方や姿勢に関するものと私は定義しています。
ではどうやって右脳的能力を伸ばすか。いくつか方法がありますが、今回は人から学ぶというアプローチをご紹介します。
人は生涯で多くの人に出会います。その中には「心の恩師」と呼べる人もいれば、こうはなりたくないと思う人など、様々な出会いがあります。
私の過去を振り返ると、「この人から学びたい!」と強く思った「心の恩師」が3人います。
1人目からは、学生時代に「死ぬまで自分の机を持て(勉強せよ)」「世の中は順送りである(自分のことばかりを考えるのではなく、後世の人に貢献せよ)」ということを教えて貰いました。
2人目は、入社したころの先輩。「さわやかに生きる」「自分の哲学を持つ」ことなどを学びました。
3人目は、私が30代後半に出会った会社の大先輩。「前向きに、明るく、逃げず、知ったかぶりせず」を哲学として、失敗を恐れず自ら積極的に行動する人です。読書の大切さも教えていただき、私を変えてくれました。
私は若い頃から仕事は自己流でがむしゃらにやってきたのですが、自己啓発書やビジネス書とは縁が深くはありませんでした。
また、スポーツ観戦、パチンコ、マージャンなどで多くの時間を使い、勉強の重要性については無頓着でいました。また、人から学ぶということに対してもあまり意識をしていませんでした。
その後、先のような尊敬できる先輩に出会って、ようやく自分を磨くことの重要性に気付いた次第です。本連載の読者にもお伝えしたいと思います。
あなたにメンターはいますか?
これまで出会ってきた先生や先輩の中であなたの「心の恩師」であるとか、「あの人のようになりたい」と思える人がいますか?
もしいるのなら、彼らがあなたのメンターです。
もしまだメンターがいなければ、ぜひ社内で探してみてください。社外でもいいのですが、できれば社内で、同じ部署あるいは席が近いなど、物理的に距離が近い人が望ましい。パーフェクトな人間はいませんので、自分がいいと思う部分を多く持ち合わせている人を探すことです。
メンターが見つかったら、次の3つを実行してください。
1.しっかりと観察する
普段の行動、会議や打ち合せでの発言、人との接し方、挨拶、表情などをしっかり見ていくのです。自分とどこが違うのか、見習うべきものは何かを観察するのです。
悪いところは別にして、いいところをよく見てください。そして、真似をしてください。最初は格好や服装の好みなどでもかまいません。
2.こちらから積極的に接する
普段から、その人にはしっかりした挨拶をすることや、こちらから話しかけることを心がけ下さい。ランチにいきましょうと言えるようになれればいいですね。
ポイントは、近くに来てくれるのを待つのではなく、自分から一歩前にでてお付き合いをさせてもらうことです。そうすることで、より多くのことを学ぶことができます。
メンターは一人に限る必要はありません。自分が「この人のようになりたい」と感じた相手には自分から歩み寄って、様々なことを学んでいきましょう。
3.誰かにとってのメンターになる
メンターについて最後にもうひとつ。
将来、自分のことをメンターと思ってくれる人が最低でも数人いるようなリーダーを目指しましょう。自分がメンターから教えて貰うのだから、いずれは、自分が後輩に伝えるようになりたいものです。
それが、「後世に順送りする」ということです。
まとめると次の3つです。
- メンターを観察する
- メンターに接する
- メンターになる
以上のように考えて実行すると、あなたのことを後輩達が「あの人のようになりたい」「あんなリーダーになりたい」と思うようになります。リーダーもだんだん成長します。今はともかく、目指すは大きなリーダーです。
「人を動かす力」こそ、20代リーダーに必要とされるスキルです。チームをうまくまとめて良い結果を残したいと思うが故に実力以上に背伸びをして失敗してしまう。そんな「若葉マークのリーダー」のために、上司に、部下に、お客様に信頼され「人の心を動かす」ために必要な10か条と53の心得を指南します。
PDF: 418ページ
▼古川裕倫:
三井物産やホリプロなど31年間のキャリアをもとにユニークで楽しい講演会「プラチナビジネス塾」を開催するほか、経営者・ビジネスパーソンにハイクオリティな講演・研修などを提供する株式会社多久案を経営。