トーキョー無職日記 トリバタケハルノブ 飛鳥新社 2013-07-05
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このマンガの中の人ほどではないにせよ、誰だってこうした経験の1つくらいはあると思います。
「勉強しなきゃ!」と思い悩んでいるのに、なぜかマンガを読んだりネットにふけったりしているうちに一晩をあかし、1秒も勉強しないまま中間試験の英語を迎えてしまう。ならせめて寝てればよかった、というあれです。
私は昔からこういう愚かなことを繰り返しては「この心理はいったい、どういうからくりになってるんだろう」と恨めしい気持ちでいっぱいでした。
中間テストくらいならまだいいですが(でもけっこう悲惨なものでしたが)、この心理がこうじて受験の夏を台無しにしたり、就職活動をまったくしなかったり、気づいてみたら上の漫画みたいになっていたら、ちょっと怖いでしょう。
病気はなぜあるのか?
非常に唐突なようですが、私たちはなぜ病気になんか、なるのでしょう?
だって、病気にならなければいけない、合理的な理由など、ないという気がします。
病気は決して「自力」で治すことができず、たとえばどんなに軽い鼻風邪であっても、お医者さんに行って抗生剤でももらわない限り治すことができずに必ず死ぬというなら、まだわかります。
その場合には、つまり「病気になる理由」があるわけです。なぜなら「自分では治せないもの」に取り憑かれ、それは「自分では治せない」からこそ「外用薬」という外部の力に依存しなければならないのですから。
しかし、少なからぬ人が、病気になってもすぐ医者になど行かず、「自力」で治してしまいます。だったら、そもそも病気になる前に「自力」で「健康状態」を保てばいいのではないだろうか。なぜこの「自力」(自己治癒力とか自然治癒力と言ってもいいでしょうが)は、「病気になってから」でないと発揮されないのでしょう?
という問いを「病気はなぜあるのか?」という形で発することができるわけです。
これに対し、実にユニークな「解」を与えてくれた人たちがいます。彼らによれば「病気を治すのが、常にその努力に見合うとは、限らない。むしろ病気のままでいた方が「快適」なケースもけっこうあって、そういう場合に「病気」という症状は継続するのだ」というわけです。
これは面白い考え方で、「自力」では決して治せない病気について考えると、確かにこういうことは現実にあります。虫歯を治そうとしない人々のことです。
虫歯は痛いし不快である。しかし、虫歯を治すという努力にも、それはそれで大きなコストがあるので、人によっては、虫歯になったときの苦痛と、それを治す苦痛とを天秤にかけ、どうにもガマンできないと思うまで虫歯の治療をはじめないということもあるわけです。
「自然治癒」というのは言葉のイメージが「歯の治療」よりも「痛くなさそうで優しそう」ですが、きっとそんな事はないのです。「自然治癒のコスト」は「歯の治療」に匹敵するコストだという可能性を考えると、病気のままでいた方が、治すよりマシだというケースがきっとあります。
やるべきことをやらずにいることには、メリットがある
話を戻しましょう。
「勉強しなきゃ!」と思い悩んでいるのに、なぜかマンガを読んだりネットにふけったりするのは、やるべきことをやらずにいる「苦痛」のほうが、「やるべきことをやる苦痛」に比べて、ガマンしやすいからでしょう。
つまり、ドキドキしながらテレビゲームをしているのは、虫歯の苦痛に似ているわけです。それが快適とはいえないにせよ、そこから踏み出す苦痛の大きさに比べ、当人にとっては「まだしも」なのでしょう。
整理するとこうなります。
- やるべきことをやらずにいることには、メリットがある
- やるべきことをやることには、コストがある
この状態が続く限り、やらなきゃいけないと永らく思い悩み続けながらも、決してそれに踏み出せないという奇妙な迷路に迷い込みます。
まして、やらずにいるメリットをテレビゲームのような「ちょっとした快感」によって体験的に強化されていると、結局「やらずにいるメリット」が時間に比例して強化されてゆき、やることのコストがわずかずつにせよ上昇する(何もしない期間が長引いたり、持ち時間や所持金が減るのでそのぶん相対的努力の必要量が増える)ため、ますますやるべきことを実行するのが難しくなってしまいます。
「やらなきゃ!」と思っているのにできないのは、私が思うにこういうからくりによります。ではこれをどうしたら解決できるか。大枠としては、やらずにいることのメリットを減らし、やるべきことをするコストも下げることによってですが、それについて次回以後考えていきます。
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上のような話をコミック化してくれているのが、岡野純さんです。
いまけっこう本書く長編ファンタジーが進行中です。
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