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Illustrator / Photoshop が苦手? 「ちょっと使い」に便利な代替アプリをどうぞ

堀 E. 正岳

Overkill (名)1. (兵器などの)破壊力、殺傷力、2. 過剰、やりすぎ、3. (ソフトウェアなどの)機能が多すぎる状態のこと

Mac といえばデザイナーやイラストレーターなどといった職業の人によく利用されることで有名です。そうしたときに定番ツールとして有名なのが Adobe Illustrator などといったドロー系のツールや、Adobe Photoshop などといった画像編集ツールでしょう。

でもこの二つのアプリは、絵を描いたり写真を加工するのが本職ではない人にとってはちょっと荷が重すぎる傾向があります。

もちろん使いこなせるなら素晴らしいのでしょうけれども、ふだんの仕事で画像処理のアプリを使いたいと思うのは「ちょっとプレゼンに使うダイヤグラムを作りたい」「ちょっとウェブ上の地図に書き込みをして同僚に送りたい」「ちょっと写真に手を加えて見栄えをよくしたい」という程度のことに限られます。

Illustrator や Photoshop はもちろん定番アプリで、他では得られない機能が多数そろっているのですが、一方で普段の仕事でちょっと使うのにはあきらかに “Overkill” なのです。

そこで今回は、仕事でちょっと絵や写真を扱わなくてはいけないというときに便利な、ほとんどトレーニングなしですぐに利用することのできるアプリを紹介してみたいと思います。


 

OmniGraffle

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プレゼンテーションのために箱や矢印が踊っているダイヤグラムを作らなければいけないことがよくありますが、そうしたとき PowerPoint や Keynote の図形機能を使うよりも手間が少なく、かつ美しい画像を作ることができるのがこの OmniGraffle です。Mac における Microsoft Visio であるといえばわかりやすいでしょうか。

OmniGraffle はダイヤグラムを描くことに特化した機能が多数組み込まれています。たとえば図形に対するマグネット機能は、二つの四角を線でつないだあとで片方の四角を動かした場合でもちゃんと線を二つの箱のあいだの最短距離で描き直してくれます。

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また、たくさんの図形を等間隔で整列させたいような場合にも、オブジェクトを表のように「整列しつつ複製」させることができます。この機能を使えば、たとえば元素表のようなものでも手間なくすぐに作ることができるわけです。

OmniGraffle にはデフォルトでプログラムのフローチャートや UML をつくるためのコンポーネント、オフィスの LAN の配置を描くためのステンシル、家具の配置を決めるときに便利な素材が組み込まれています。また、思うままにアウトラインエディタにブレインストームした内容を自動整形して分岐図にしてくれるという便利な機能もついています。

イラストツールとして見た場合でも、レイヤー機能、ベジェ曲線機能、SVG サポート、Adobe Illustrator 形式の読み込み(一部制限有り)がそろっていて、ライトな使い方とヘビーな使い方の両方に答えてくれます。

しかし何よりも OmniGraffle を使っていて楽しくなるのは、ほとんどデザインセンスがなくても、時間をかけなくても、「へえ、これきれいな図だね!」と喜んでもらえるようなダイヤグラムを作れるという点です。

投入する時間と手間に対して十二分に美しい結果という形での手応えが感じられるのが、OmniGraffle をおすすめしたい最大の理由です。

(注意:OmniGraffle は Pro 版とそうでないスタンダード版で機能が若干異なりますので注意してください。また、Omni Group のサイトから購入する場合、アカデミック割引などもありますので学生の方はこちらを利用すると得できます)

 

Skitch

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仕事の現場で意外に多いのが、「ちょっと画面をキャプチャーして、加工して送る」という作業です。

たとえばちょっと Google Map で行き先を表示してキャプチャーし、画像に追加の解説などを加えてメールで送信する。あるいは使っているアプリケーションの画面をキャプチャして、操作に関する注意書きを書き込んでから送信するといった、いわゆる「雑用」です。

でもこうしたときに、「ああ、画像にテキストを書き込むにはどうするんだっけ」「画像がメールに添付するには大きすぎるよ、面倒だなあ」といった小さな壁にぶつかってイライラすることがあります。

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Skitch はこうした作業を、「キャプチャーして、マウスで数回クリックし、ボタン一つで共有」というエレガントで楽しいワークフローにしてくれるツールです。楽しすぎるので、Skitch を知って以来、なんだか画面キャプチャを付け加えてメールを送るのがくせになってしまっています。

Skitch を起動したら、すぐにメニューの Capture を選び、フルスクリーン、範囲、iSight カメラといったオプションから画像のキャプチャーを行います。あるいはクリップボードから画像をペーストするのでも大丈夫です。

そこからは適当に線、矢印、テキストといった要素を選び、ほとんどマウスの操作だけで思いのままにキャプチャーした画像に書き込みを加えることができます。すべての操作は編集、あるいは取り消し可能ですので、気にせずに大胆に書き込みをして、あとで修正するのがよいでしょう。

できあがったら、画面の下にある Drag Me というボタンを押して好みのメールソフトに向かって完成した画像をドラッグしたり、ファイル名を決めてデスクトップ上にセーブすることができます。

もう一つ重要なのが、Skitch はウェブサービスの側面ももっているという点です。Skitch でスクリーンキャプチャを作ったら、Webpost というボタンを押すだけで作成した画像を Skitch.com にアップロードすることができます。

Skitch.com に置いた画像には一意のリンクが与えられますのでそれをメールにすぐコピーできますし、ブログに埋め込んだりする場合の HTML もすぐに取得することができます。もちろん特定の人だけに公開するプライベート機能もついています。

Skitch を使えば、人に説明するために画像を作ったけれども容量が大きすぎるという場合に、「適当なサーバーにアップロードして、セキュリティを施して…」といった頭痛の多い作業をものの数秒で行うことができるようになるのです。

「言葉で説明するより、みせてしまった方が速い!」という日頃のちょっとした瞬間こそ、 Skitch の出番です。

 

Acorn & Pixelmator

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私の中で「使いこなせたらすごいのだろうけど、どうすればいいのかわわからない」アプリの王座に輝くのが Photoshop です。時間をかけて覚えればいいのでしょうけれども、その時間がなかなか作れません。

そんな Photoshop 食わず嫌いの私でも簡単に利用できるので重宝しているのが Voodoo Pad で有名な Flying Meat の画像編集ソフト Acornです。

Photoshop のクローンといえば Gimp がすぐに思いつきますが、あまりに Photoshop に近すぎるので、私などはたくさんの機能を使えこなせないという印象をもっています。

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一方 Acorn は iLife アプリの一部になっていてもおかしくないくらいインターフェースが簡略化されています。画像に対してブラシを加えたり、フィルターを加えて詳細を調整するといった作業も、Acorn 上では Pages や Keynote のインスペクタと同じくらい簡単な操作で加えることできます。

もちろん Photoshop をあれほど便利にしているレイヤー機能、基本的なフィルター機能、そしてブラシなどといった機能は Acorn にも搭載されています。もちろん Photoshop ほど多機能ではないにせよ、やりたいことの 80% がすぐに実現できるという意味で「一般人のための Photoshop」という位置づけのアプリになっているといっていいでしょう。

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Acorn よりももうちょっと機能がほしいという場合には、Pixelmator がほぼ同様の価格でさらに Photoshop に近い機能を提供してくれます。

Pixelmator はさらに写真のレタッチなどに重点をおいたアプリですのでふだんの仕事で使うチャンスはそれほどはないかもしれません。しかしプレゼンのタイトルをちょっと見栄えの良いものしてみたり、写真に対して Keynote / PowerPoint ではできないちょっとした演出を素早く行うのに力を発揮することでしょう。

これほど安いなら、便利な Photoshop 代替アプリを得物にこっそり加えておくのは苦になりませんし、必ず使う瞬間がでてくることでしょう。

 

まとめ

Adobe の Illustrator CS4 と Photoshop CS4 をスタンダード版で購入した場合、新規購入だと定価で約 19 万円弱かかります。Creative Suite 4 Design Standard でもほぼ同額という状況です。

これに対して今回紹介した OmniGraffle の Professional 版 ($200、スタンダードなら $100)、Skitch (現在オープンベータにつき無料)、Acorn ($50)、Pixelmator ($60) のすべてを手に入れたとしても円換算で3万円を下回ります。こうして考えると安い買い物ですよね?

Illustrator / Photoshop をどうみても使いこなせない、でもちょっとはつかってみて普段のプレゼンや資料にきれいな図や写真を加えたいと考えているなら、金銭的にも時間的にもよい投資になるでしょう。

さて、「Mac でお仕事に使えるアプリシリーズ」を続けてきましたけれども、次回でとりあえずアプリの紹介は一段落させようかと思います。そこで次回は執筆アプリでも、ナレッジアプリでも、画像処理でもない、なんだかカテゴリ分けしにくいけれども便利で毎日使えるシェアウェアをまとめて紹介しようと思います。

 

 
▼最近気になっている一冊:

天才!  成功する人々の法則
講談社
勝間 和代(翻訳)
発売日:2009-05-13
おすすめ度:3.5
おすすめ度5 読みやすくためになります
おすすめ度3 おもしろいが、読んでからも考えよう!
おすすめ度5 成功者の複雑な物語
おすすめ度5 大好きなグラッドウェルの傑作!
おすすめ度2 仮説

原書に「The Story of Sucess」という副題がついている本書は、けっして「成功するために何をすればいいのか」を教えてくれる本ではありません。むしろ、「成功」とは個人の才能や行動が生み出すのではなく、社会として私たちが醸成しているものなのだということが描かれています。

天才とうたわれた人、天才的な頭脳を持ちながら無為の人生を生きている人、時代の歯車に押しつぶされて成功できなかった人、あるいはタイミングと才覚のすべてがそろって素晴らしい成功をつかんだ人、文化に縛られた行動しかできなかった人々、それから解き放たれた人々。これらの人々に対する考察を通して、著者は私たちが「成功」という言葉に対して持っているイメージを完全に反転してのけます。

私はいまこの本を4度目の再読中(正確にはオーディオブックで聞いてるところ)ですが、自己啓発書でも、ハウツー本でもない、深い読後感をもたらすこの本はまだまだ考えさせられる点、気になる点が多すぎます。ぜひご一読を!

 

▼編集後記:

6月初旬の WWDC に先駆けて新しい iPhone OS 3.0 の話題や、新機種のうわさがたくさん耳に入り始めています。iPhone 3G を去年買ったばかりですが、新機種がでたらどうしよう? と何も発表される前からドキドキです。これも Mac / Apple ファンの醍醐味!

 
▼堀 E. 正岳:
「これからMacを始めたい人」を徹底ガイド。Lifehacking.jp主宰。