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Evernoteで行き詰まったときに読む1冊

佐々木正悟 正直に言うと本書を紹介するのは今ひとつ気が進みませんでした。本書のタイトルとデザインは堀正岳さんとの共著である『iPhone情報整理術』を連想しないわけにはいきませんし、電子書籍『Evernoteハンドブック』の企画に関わった者としても、「Evernote本」の紹介には乗り気になれなかったわけです。

にもかかわらず本書は紹介します。本書はとてもよい本だからです。もっともよい点はこれまで数点出版された書籍の中になかなか見つけられなかった「著者がノートブックとタグをどう扱っているか」について、納得のいくように書かれているところです。

» EVERNOTE 情報整理術


「ノートブック」と「タグ」で「立体的」に情報整理する

Evernoteは決して複雑怪奇なツールではありません。ある意味ではメールクライアントにも似た「デジタル情報管理ツール」です。もう少し簡易に言えば「デジタルノート」でしょう。IT系が大の苦手というのでもなければそうそう「Evernoteの使い方で悩む」ということにはならないはずです。

それでも紙では考えられないほどたくさんの情報を詰め込んでみたり、どんどんタグを増やしていったりするうちに、「なんだか収拾がつかなくなってきた…」と感じることはあるでしょう。ここで「ノートブック」と「タグ」のような、整理のための異なる機能をどう使いこなせば、「情報整理がうまくできるか」知りたくなる人もあると思います。

「ノートブック」には今では「スタック」という新たな機能も追加されましたが、基本的には「フォルダ」でわかりやすい。「タグ」は「ラベル」のように1つの「ノート」に「何枚」でも貼り付けられて、しかも階層式に見せられる。

では両者をどう活用すれば「自分にとっていい感じ」に情報を整理できるのか?考え慣れていない人には難しい問題でしょうし、そもそも考えたくないかもしれません。どう考えればいいかすら、わからないかもしれません。

この疑問に対してきわめてわかりやすい形で『EVERNOTE 情報整理術』の著者は「提案」を示しています。たとえば「ノートブックの分け方」として「ペルソナごとに分類する」ことを提案しています。ここで「ペルソナ」というのは我知らず使い分けている「役割」のことだと考えておいてください。たとえば私は「父親」であり「夫」であり「物書き」であり「ブロガー」であり「セミナー講師」にもなる佐々木正悟です。

家族旅行に必要な情報を得るには、「じゃらん」などの情報サイトや旅行会社のWebページを調べ、パンフレットを集めて比較検討するでしょう。また、仕事のためにバレーボールのスコアシートやルールブックを読むこともありませんし、息子として両親に接するときにブログで書くような話をすることもありません。
 このように、ペルソナごとに必要となる情報は異なるため、ペルソナは3−3で挙げた条件である「属性の重ならない」分類であると言えるでしょう。(p.102)

だから著者は「属性が重ならないノートブックでペルソナごとの情報を分類すると便利だ」といっているのです。これは実に明快です。

さらに「情報利用段階ごとにノートブックを分ける」という分け方も提案しています。両者を組み合わせると「ペルソナごと、情報段階ごとに、ノートブックを作っていく」という結論になります。実際著者はそうしています。おそらく今後「ペルソナごとのスタック」を作り、その中で「段階ごとにノートブックを分ける」ようになるのではないかと思います。

「タグ」には2種類ある

ではタグはどう使うかというと、「5W1H」「感情タグ」「プロジェクトごと」という3タイプの使い方をまず提案してあります。いずれも「属性が重なる」からでしょう。「いつ」と「どこで」の情報は付けられるなら両方ついていた方がいいでしょうし、「悲しい」と「悔しい」が重なることも多いでしょう。複数のプロジェクトに役立つ情報ももちろんあります。

こういうふうにほとんどすべての「ノートブック」の間を横断する分類軸の他に、「特定のノートブックの中だけに登場するタグ」があります。『EVERNOTE 情報整理術』は両者の使い分けについても言及し、「ノートブック内の情報をタグのマトリクスで管理する」という表現を使っています。

読者が欲しいのは以上のような「提案」なのです。しかし多くの書籍は「どうすればノートブックを作れるか」とか、「タグをノートから外す方法」などのマニュアルに終始しています。にもかかわらず、突然「ノートブックとタグを組み合わせて情報を絞り込む」といった項目が登場するので、そういうことができることはわかっても、どうしてそうすると良いのかがよくわからないまま、取り残された気持ちになるのです。

『EVERNOTE 情報整理術』を通して読めば、どのように「ノートブック」と「タグ」を組み合わせるとどんな情報が現れそうかが(実践していない読者にも)想像できます。「夫」(ペルソナノートブック)としての「使用済み」(段階ノートブック)のノートを、「20091224旅行」(プロジェクトタグ)と「悲しい」(感情タグ)で絞り込んでやれば、せっかくのクリスマスイヴの旅行で大げんかしたことがまざまざと思い出せるわけです。

著者のEvernoteは楽しめると思いませんか? これはマニュアル本をいくら読んでもかきたてられない想像です。「自分も同じようなノートの一覧を作ってみたい」と思わせられるのが、本書を際だたせているポイントです。

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