クラウドサービスを「有機的」に活用するためにはいま最高の1冊

カテゴリー: Journalビジネス心理書評
新時代のワークスタイル クラウド「超」活用術
北 真也

シーアンドアール研究所 2011-11-16
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本書はまるで「図鑑だ」と思う人もいるかもしれませんが、そういう印象は正しくありません。本書は実は著者による「クラウド活用スタイル」の総括なのです。

私も本書を読んで、非常に勉強になりました。紹介されているアプリや活用法を断片的に読む限り、知らないことや驚くべきハックはほぼ皆無です。しかし、全体の流れを自分で実行してみると、「合理的だ!」とうならせられるのです。

ある意味で本書は「ライフハックの紹介本」ではまったくありません。むしろ新しいワークスタイル(もしくはライフスタイル)を提案している本です。テレビと雑誌と新聞と、ワープロと電卓と大学ノートと、というスタイルから永遠に決別する第一歩になる本です。

クラウドサービスを「複合的に」使うということ

Dropboxはご存じですね? Evernoteもご存じでしょう。 Googleリーダーはもちろんご存じのはず。iPhoneは? いうまでもなくご存じでしょう。iPadもご存じのはず。この連載をご覧になっている方であれば、Toodledoもご存じです。

GoodReaderはご存じないかもしれませんが、ちょっと調べればすぐに情報が見つかります。Gmailなどはいうまでもありません。

しかしこれらをどう連携させているでしょうか? これらを使っているにもかかわらず、まったく連携させていないなどということは考えられません。しかし、御自身のやっている連携は、はたして十分にねりつくされたものでしょうか?

本書がフォーカスしている内容はまさにそこです。一つ一つは十分によく知られたサービスですが、それらをどう連携させ、情報収集や、アイデア発想や、情報発信の武器とするか? 本書は著者の性格も反映し、半ば自然体で書いているため、一見したところその「凄み」が伝わってこないのですが、実は鬼気あふれる調子に覆われています。

一言で言えば、本書全体で行われていることは、異常なのです。「いやこれ、ふつうだろう」と言い出しそうな人はすぐ思い浮かびますが、それはほほえましい自尊心の表れでしょう。日本全体でいえば、著者はまったくふつうではないスタイルをすでに確立してしまっているのです。

クラウドサービスはまだ始まったばかりです。世間一般ではまだまだテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、それからMSオフィスに大学ノートが主流です。「職場だけ」は異なるかもしれませんが、クラウドに生活スタイル全容を覆わせている人は決して多くはないのです。

決して多くはないために、極めて不便なことになってもいます。今新聞を購読している人がみんなクラウドスタイルで生きるようになっているなら、情報収集、整理、活用、発想支援、情報発信は絶対に今のように「連携させづらい」ものになってはいません。(そう願いたいものです)。

なぜ今のように「RSSとReadItLaterとEvernoteとTwitterを連携させる神アプリ!」といったエントリにこうも人気が集まるかというと、それらを個々に使うだけではひどく不便なままだからです。誰もがやりたいことはほぼ共通しているのに、黙っていてもそれが出来るようにはなっておらず、「神アプリとか神操作だとかを見つけ出す」のに苦労までさせられるのが現状です。

一歩先を行く発想支援と情報発信術

著者はこういう「過渡期の面倒な時代」にあって、もう一歩先のワークスタイルを確立するために果敢に挑んでいます。ところどころアクロバティックなやり方を駆使しながら、RSS、はてなブックマーク(!)、Evernote、SimpleOutliner、Screvenerという組み合わせを呈示してみせます。

私にとってとびきり興味深かったのはChapter5で、ここに至って著者は、アイデアを発想するところからスタートし、メモを集め、情報を集め、Evernoteに配置し、マインドマップでブレストし、アウトライナーとScrevenerでKJ法風に情報整理し、それからプレゼンテーションを行う準備を整えるという、ビジネスパーソンにとっておそらくかなり困難な全プロセスを、ほぼ無料のクラウドでやってのけるワークフローを提案しているのです。

ここは著者の能力を見せつけられた印象です。このような仕事のやり方は、まずどこにも書いてありません。「クラウド」に類するビジネス書は相当数ありますが、本書以外ではめったに見かけないサービスも多く、連携のとり方などはほとんど見あたりません。

特にP276の図には、ちょっとぞくっとさせられます。非常に簡単な図式なのですが、今まで著者が扱ってきた全ての資料がもしこの簡単な図解のようにまとまっているならば、著者にとって必要な記憶は全て、いわゆる「記憶と想起」のレベルを圧倒的に超えるレベルに上っていけそうです。著者の前著にあるEvernote内のペルソナとタグのシステムを、この参照リンクシステムと連動させれば、仕事のための記憶で著者が思い出せないことはほとんど何もなくなるでしょう。



私もこういうことをやりたいのです。ビジネスパーソンである著者と違って、資料だとかプレゼンテーションにかかる手間は減らせますが、記憶と知識をタグで徹底的につなぎ合わせたいという欲求の突き上げは激しいものがあります。それだけにうつつを抜かしていると生活できなくなりますが、数週間は、せめて数日は無生産的に生きたいものです。

Dropboxにただファイルをアップするだけでは、共有に少々便利だというだけです。EvernoteにWEBとメモを全て集めて検索すれば、知識活用の可能性は格段にアップしますがそれでもまだまだです。著者のやっているような資料と発想と成果物を有機的に結合してはじめて、クラウドはこれまでにない力を発揮するのです。

▼編集後記:

北さんの本が「クラウドサービスの連携」なら、このたび上梓した拙著はタスク管理のためにクラウドを使うことだけにテーマを絞った本です。



タスク管理だけに絞ったとしてもやはり「連携」は登場します。ブラウザ、ノートブック、スマートフォン、アナログと、連携から完全に自由になれるわけではありません。使うサービスも、カレンダ、タスク管理ツール、メールなど、完全に1つに絞りきることは困難です。

でも昔よりずっと容易になってきたことは間違いありません。より確実にアクションを起こしやるべきことを終わらせるというのが、どの時代にも変わらぬタスク管理のテーマでしょう。


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