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「好き」になることは、できる



佐々木正悟 少し時間をかけさえすれば、嫌いなものを好きになることは、できます。

仕事でも食べ物でも、できます。好きでもないもの、生理的に受け付けないものを好きになることは、できるのです。

しかしながら、これは慎重にやりましょう。なぜなら「好き」というのもそれはそれで厄介だからです。タバコ、アルコール、ギャンブル、たちの悪い…。とにかく、好きになればいいというものではありません。

ダリル・ベムの「自己知覚理論」というものがあります。

認知的不協和論とよく似たところがありますが、厳密には違います。しかしここではその話には深入りしないことにします。

人は、自分のことを、あたかも他人のことを推論するように扱うことがあるのです。

私の知人に、ビールが飲めなかった人がいました。

ある時彼は、20年ほど昔のことなのでこういうことがあったのですが、会社の新歓でどうしてもビールを飲まないわけにはいかなくなったということです。

「あ、俺はこれが好きなんだ」

その日を意識して非常に恐怖していたそうなのですが、とにかく自分はビールが大好きで仕方がないと思うことにした、という、誰にでも思いつきそうなやり方で、その日を乗り切ろうとしました。

案の定、当日、「好きで仕方ないことにして」飲んだビールは少しもおいしくなくて、翌朝までずっと気持ち悪くて吐きそうだったという、とても同情したくなるような話だったのですが、それ以来、毎日ビールを飲むようになったというのです。

どうも、好きでしようがないと思っているうちに、「こんなにおいしくないものを、みんなで飲んでいるということは、こういうものが「おいしい」というものかもしれない」と考えるようになって、しまいには、こんなに無理して飲んでいるということは、自分は本当は、これが好きに違いないと考えるようになったという話でした。

当時は私は、心理学をアメリカで勉強する前でしたから、これはなんとも奇妙な考え方だとしか思いませんでした。

よおく考えれば、私だってこれとまったく同じ考え方で「コーヒーが好き」になったのだし、それどころか、これとまったく同じ手順で「英語が好き」になってしまったことに、思い至るべきでした。

ダリル・ベムのことは、その後勉強して知って、「あ、あれだ!」と思い出したのです。人は、他人を見るように、しばしば自分のことを推理する。ある日、同じようなバーガーショップで同じバーガーを注文していることにふと気づき、「あ、俺はこれが好きなんだ」と理解する。するともう、そのバーガーを食べずにいると落ち着かなくなってしまう。

仕事とか、使いにくいアプリとか、苦い味のする食べ物だとか、そういう「最初はどうもなにがいいのかわからない」ものを、何らかの理由で「好きになる努力」をしてしまうと、引き返すことができないほど、大好きになってしまうことがあります。

私たちの「好き嫌い」はそんなに合理的なものでも自明なものでもないからです。
というよりも、実にいい加減なところがあるものです。

しかし、と言うよりもだからこそ、それを好きになって本当にいいのか、事前によくよく考慮する必要はあります。この方法は、意外と強力なので、役に立つことはたちますが、注意は必要です。

会社を好きになる努力をするのはけっこうですが、その会社に一生勤めることになるかどうかは、おそらく不明でしょう。

▼編集後記:
佐々木正悟



11月17日 ライフハック勉強会02@渋谷編(東京都)

今週土曜開催です!

ご参加いただくかたには、なにか一つで良いので、「どうしても身につけたい習慣」(英語の勉強とか)または「どうしてもやめにしたい習慣」をご用意いただけるといいかと思います。

特に何か厳しい難しい話をするわけではありませんし、カミングアウトしていただくような必要もありません。習慣化というのは、ごく日常的な現象で、うまくいくときはうまく行くものです。

そのうまくいく生き方のお話をしたいと思います。