仕事の進捗を1つのツールに集約するメリット



エンジニアのための時間活用術、第9回です。

前回は、「進捗を管理する方法」をご紹介しました。まとめると次の通りです。

進捗を管理する目的

進捗管理の3要素

これらを説明するうえでジグソーパズルの喩えを用いました。

全体の枠があり(予算)、ピースがあり(購入予定のモノ)、どこまで組み上がっているかが目に見える(消化状況)からです。さらに、進捗管理の実践としてExcelのツールをご紹介しました。


今回は、Excelのツールを使って進捗の管理をすることのメリットについて考えていきます。具体的には、次のようなメリットがあります。


1.やるべきことを漏れなく把握できる(「時間負債」の一元化)

これは、どんなツールにもいえることですが、あるツール1つに情報を集約することでアクセスが良くなります。「アクセスが良い」とは思いついたことが実行に移されるまでのタイムラグが少なくて済む、ということです。

例えば、ペンを使ったらペン立てに戻す、という場合、机の上にペン立てが1つだけあれば、迷わずに使ったり戻したりすることができます。

ところが、ペン立てが3つも4つもあれば途端に混乱するでしょう。たとえ、それぞれのペン立てについて使い分けの基準があったとしてもです。

あるいは、銀行口座。本来であれば1つあれば十分なはずの銀行口座も、社会人になって数年たつとなぜか増えているものです。複数の口座を使い分けている人にとって悩ましい問題の1つが、「現時点で自分がいったいどれだけの資産を持っているのか?」という疑問に即座に答えられないことです。

複数の銀行口座の残高を一つひとつ調べて、それを合算する必要があるのです。もし保有口座が1つだけであれば、その口座の残高がそのまま自分の資産を示すことになるはずです。

そんな理想に少しでも近づくための方法がツールを使うことです。仕事においては、時間が通貨になりますから、時間の単位でタスクを整理していけば、おのずと全体が見えるようになるでしょう。

それがこちらでご紹介した「残り作業一覧」によるリスト化の効用です。

それぞれのタスクごとに所要時間が割り振られていれば、それを合算した時間が現在自分が抱えている「時間負債」すべてということになります。

具体的には次のようなイメージです。

このように、その日に予定しているすべての作業をリストアップし、それぞれに時間を割り振ることで、すべての作業がきちんとその日のうちに終わるかどうかを事前に見通すことができるようになります(「見積」の欄の数字を合計した時間が「時間負債」の総額です)。

もちろん、この数字はすべてが予定通りに進捗した場合に限ります。それでも、「予定通りに終われば、定時に帰れる」という手応えが得られるのとそうでないのとでは、その日一日の仕事へのモチベーションにも影響が出るでしょう。

2.「クローズリスト」が得られる(タスクの一元化)

タスクリストには、その形態から大きく分けて次の2つの種類に分けられます。

オープンリストとは文字通り、「開かれたリスト」といった意味合いで、際限なくタスクを追加していくことのできるリストです。例えば、「将来訪れてみたい国」などはオープンリストです。

一方、クローズリストのほうは、「閉じられたリスト」です。それ以上タスクを追加することのできない、すなわち「一見さんお断り」な状態です。「クローズドな集まり」という表現がありますが、まさにその「クローズド」です。

クローズリストのメリットは、原則として今以上にはタスクは増えないことが保証されることです。もちろん、例外はあるにせよ、常に「今日やるべき仕事はこれだけだ」という意識を持ち続けることができます。

先ほどのExcelの図は、「今日」限定のクローズリストといえます。

3.作業記録を兼ねられる(経験の一元化)

3つめのメリットは、次の図のように開始時刻と終了時刻を入力していくことで、かかった時間を把握することができる点です。

例えば、上記では「朝のレシピ」について15分(0.25時間)の見積もりに対して、倍以上の34分(0.58時間)かかっています。こういった結果を目の当たりにすることで、実行において問題がなかったかを振り返ったり、見積の精度を改めるための後押しになるでしょう。

また、タスクの種類と時間帯の相関を知ることもできます。

いずれも、スケジュールを立てる上で役に立つはずです。

まとめ

以上、タスク管理をExcelのツール1つに集約することで得られるメリットについてご紹介しました。

なお、今回は説明の都合上Excelのツールを例に話を進めましたが、同じことができるツールとして現時点ではExcelのツール(TaskChute)以外にも、iPhoneアプリの「たすくま」とウェブベースの「TaskChute Cloud」があります。

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参考文献:

クローズリストの考え方を分かりやすく、かつ徹底的に教えてくれるのが『マニャーナの法則』。著者のマーク・フォースターさんはクローズすることの重要性を懇々と説いています。

また、「チェック・リスト」はよくて「TO DOリスト」はよくない、とも。

この2つの違いがあいまいな方はぜひ本書でチェックしてみてください!



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本書については、これまでにくり返し言及していますので、合わせてご一読ください。


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