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「なぜあの人はうまくいくのか?」の疑問に答える3冊

特に商品開発に携わっていなくても、身の回りでヒットしている商品は気になるものです。それは例えば、

 「確かに自分でもよく使っている(買っている)が、
  どうしてこれがこんなにヒットしているんだろう?」

という素朴な疑問から出発し、

 「ここで使われているやり方を真似すれば、
  自社でも同じようにヒットが飛ばせるのかも!?」

という期待が膨らむからです。

ここまでは経営者や商品開発責任者など、どちらかというと企業向きの話です。でも、構造をそのままに次のように言い換えたらどうでしょう。

 「同じようなことをやっているつもりなのに、
  どうして彼だけが営業成績が良いのだろう?」

 「彼がやっているやり方を真似すれば、
  僕も同じように成績がアップするかも!?」

個人向きの話になってきました。最近読んだ次の3冊は、まさに上記の構造に斬り込むものでした。

 1.『スティーブ・ジョブズ 神の交渉術』
 2.『視覚マーケティングのススメ』
 3.『ビジネス脳を磨く』

1.規格外の非常識──『スティーブ・ジョブズ 神の交渉術』

仮に彼とまったく同じ条件下で同じ方法で取り組んだとしても、得られる結果は変わってくるでしょう。考えるまでもなく分かりきったことだと思われるかも知れませんが、スティーブ・ジョブズならそう思うのに、身近な同僚ではそう思えないのはなぜか。

それは、どこかで線を引いているからでしょう。相手がその線の内側にいるのか外側にいるのか、そのいずれかにおいて模倣の是非を決めているのです。

 「それは、ジョブズだからできることでしょ」
 「あいつにできて、オレにできないはずがない」

こうした判断を下す拠り所となる「線引き」の段階からして、そもそも間違っていたとしたらどうなるか──そんな漠たる不安に改めて対峙させられます。

ジョブズの交渉術を学ぶというより、仕事人としての極北であるジョブズから自分がどれだけ離れているのかを知り、自分の立ち位置を見定め、そのうえで行く末を考えたい人にとって示唆に富む1冊です。

2.今の“視力”で先が見えるか?──『視覚マーケティングのススメ』

視覚マーケティングのススメ
ウジ トモコ
クロスメディア・パブリッシング ( 2008-05-14 )
ISBN: 9784756911995
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

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視力が1.5の人と0.1の人とでは見える世界にはどんな違いがあるでしょうか。コンタクトレンズを常用されている方であれば、その落差は馴染みあるものかも知れませんが、そうでない人にとっては、見える世界だけが常識となります。

日頃から“良いもの”にふれる習慣をぜひつくってください。これは、毎日コンビニ弁当ばかり食べている人が、だんだんと味覚がそれに慣らされてしまい、保存料や化学調味料の味に気づかなくなってしまうことと同じで、とても怖いことです。(p.47)

これは、「視力問題」にも通じる話でしょう。自分が見えている世界にとらわれず、むしろ自分ではなくターゲットとなる顧客に見えている世界、すなわち顧客の視力にマッチした世界を提供する必要があります。これが「視覚マーケティング」。

とはいえ、ビジネスのカギを握るのは「どう見えるか」というデザインだけで決まるものではもちろんなく、機能やこれを下支えする技術力が不可欠です。

アップル社の場合、もちろん価格帯別の展開はしているものの、「デザインにします? 機能にします?」的な、二者択一はしていないはずです。iPodにもiMacにもMacBookProにも、その両方を盛り込んでいるといえます。ユーザーのニーズをしっかりと把握し、新しい技術を創り出す。そして、その技術を求められるデザインで提供し、顧客に感動を与えているのではありませんか?(p.84)

つまり、デザイン一辺倒でも機能一辺倒でもない、両者が共存した状態を作り出すわけです。すなわち、機能に見合うデザイン、デザインに見合う機能。それゆえ、誰かのデザインだけを真似たり、機能だけを似せても、そこに両者の共存がなければ、競争力は生まれないでしょう。

自分という人間が最大限に力を発揮するためには、どんな相手にどのような見せ方をすれば良いか。そんな疑問があるなら、本書はその解決のためのヒントになるはずです。

3.フレームを変える──『ビジネス脳を磨く』

ビジネス脳を磨く [日経プレミアシリーズ] (日経プレミアシリーズ 6)
小阪 裕司
日本経済新聞出版社 ( 2008-05-09 )
ISBN: 9784532260064
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

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さらに一歩進めて、具体的な行動を促すのが本書。しかしながら、方法を紹介するのではなく、方向性を指し示すのみです。でも、その方法でしか本書の方向性は表現できない、ともいえます。

もう一度同じことをいうが、すべてのビジネスは、すでに情報を扱う産業なのである。先ほどお話しした視点から見れば、すでにレストランビジネスは情報がお客さんの印象や意志決定、購買行動を左右しているのだし、ワインも携帯電話も情報がそれを左右している。

さらにいえば、今や実際にはほとんどのビジネスはお客さんの高次情報処理機能、つまり感性に訴える必要性に迫られている。そういう意味ではそれらのビジネスは、感性に訴える情報を扱う産業「感性産業」と呼ぶべきものなのだ。

すると、ほとんどのビジネスにとっての課題は、お客さんの感性に訴えて「意味あるもの」と思ってもらえるかどうかにかかっている。(p.92)

ターゲットであるお客さんにとって、自分が「意味あるもの」であり続けるためにはどうすれば良いでしょうか。

そのカギとなるのが本書で繰り返し登場する「工業社会」と、これと対になる「感性社会」という言葉です。それぞれは、世界の見方であり世界そのものでもあります。「工業社会」のフレームでは見えなかったものが「感性社会」のフレームの中に立ち上がってくる、そんな様子が行間からありありと伝わってくるでしょう。

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