前回は、「時間とタスクと進捗の3つを同時に管理する方法」をご紹介するにあたって、その要となる「日次スケジュールの作り方」をご紹介しました。まとめると次の通りです。
- 1.残り作業一覧から今日中に終わらせるべき作業を選出する
- 2.朝の時点で今日中に終わらせるべき作業が終わる見通しを得る
- 3.遅れが発生した際でも混乱することなく立て直しができる
一言でいえば、全体スケジュールと残り作業一覧から、いかにして毎日のスケジュールに落とし込んでいくか、ということです。
日単位のスケジュールをきちんと作ることができれば、限られた時間で決められたタスクを漏れなくこなす準備が整ったことになります。
さらに、作業の遅れや予定外作業の飛び込みによって崩れたスケジュールを立て直す方法を知っておくことで、単にスケジュールを作るだけでなく、これに沿って作業を進めていくことができるでしょう。
これを踏まえて今回は、進捗を管理する方法について考えていきます。
進捗を管理する方法
そもそも進捗を管理するのはなぜでしょうか。それには次の2つの目的があります。
- 1.上司に報告をするため
- 2.自分で状況を把握するため
お金を管理するのに予算を組み、その消化状況をたえずチェックするのと同様に、時間の管理においても予算と消化状況のチェックが欠かせません。
この消化状況のチェックが進捗の管理です。途中経過を見て、それが想定どおりのペースかどうかを確かめるわけです。
このとき、自分で見てわかるだけでなく、それがそのまま上司への報告資料としても流用できれば手間が省けるでしょう。
つまり、以下の3つの管理を1つの資料で兼ねてしまえばいいのではないか、ということです。
- 1.持ち時間の管理(予算)
- 2.タスクの管理(購入予定のモノ)
- 3.進捗の管理(消化状況)
イメージとしてはジグソーパズルが近いです。全体の枠があり(予算)、ピースがあり(購入予定のモノ)、どこまで組み上がっているかが目に見える(消化状況がわかる)からです。
ジグソーパズルのコツは、似たような絵柄のピースを集めて、その部分を先に作ってしまうことです。さらに、周辺部分(一辺あるいは二辺が直線のピース)についても枠を決める上では優先した方がいいでしょう。
タスク管理においては、たくさんある仕事を5分ずつ実際にやってみること(第3回参照)が枠の部分を作ること作業に似ています。手のつけやすいところを先にざっと作ってしまうことで見通しが良くなるからです。
進捗管理で欠かせない3つの条件
話を進捗管理に戻しますが、前回の記事で次のようなことを書きました。
「どうせ遅れているんだから、10分も20分も変わらないだろう」
というやけくそな気持ちが生まれてしまうのです。
こうしたことを防ぐには、やはりどれだけの遅れが出たのかの“被害状況”を具体的な数字で把握し、立て直しを図ることです。このようなとき、一日の作業一覧と作業時間を管理するためのツールがあると便利です。
ここで重要なことは現状を数字で把握することです。
具体的に何分あるいは何時間遅れているのか(あるいは進んでいるのか)を知ることで初めて、「これはまずい」という危機感(あるいは「これなら大丈夫だ」という安心感)が生まれます。
特に危機感は人を行動に駆り立てますから、危機感は買ってでも手に入れるべきです。行動が早ければ早いほど傷も浅くて済むからです。
一方、「何となく遅れている感じはあるが、気合いを入れれば何とかなるだろう」という程度の認識では危機感は醸成されず、火の手が回って逃げ場を失ってから、すなわち手遅れになってから初めて気づくということになってしまいます。
とはいえ、現状を数字で把握するのは手間が掛かります。次の3つの条件を漏れなく満たす必要があるからです。
- 1.現在抱えているタスクをすべて把握している
- 2.それぞれのタスクごとにかかるであろう時間を把握している
- 3.現在のコンディション(気分や体調)がタスク遂行に与える影響の程度を把握している
1はこれまでに繰り返し書いてきたことです。2については前々回に以下のように書いたことと関連します。
つまり、所要時間を見積もろうとすることによって、仕事に対する自分の認識の甘さを事前に知ることができるのです。
「まぁ何とかなるだろう」という、良く言えば楽観的、悪く言えば「えいやっ」なスタンスの入る余地がなくなるわけです。
3についてはさほど厳密な数値は求められませんが、例えば「残り4時間」という見通しに対して、体力的に、あるいは気持ちの面でひるむことなく取り組み続けられるかどうかを自己診断できる必要性を指しています。
これは、数字に対する感受性あるいはセンスを身につけるという意味でもあります。
ものの本には「朝の1時間は昼の2時間に匹敵する」といったことが書かれていますが、これはあくまでもその本の著者の感覚であって、人によっては「昼の4時間に匹敵する」と感じる人もいれば、「朝も昼も変わらない」という人もいるかもしれません。
つまり、他人はどうあれ自分が時間帯によって、あるいは気分によってどれほど時間感覚が変わるのか、その振れ幅を知っておく必要があるわけです。
そのためには、かかるであろう時間を見積もり、実際にかかった時間とを比較してそのギャップを思い知る、という地道な活動を積み重ねていくほかありません。
このあたりについては以下の一連の記事で詳しく書いています。たくさんありますが、いずれも今回のテーマと密接に関わる厳選記事なので、よろしければぜひご一読ください。
進捗把握をツールに託す
こうした活動を支えてくれるのがツールです。具体的には以下のようなExcelで作った表がそれです。
左からタスク名、見積時間(時間単位;0.5なら30分)、実績時間、開始時刻、終了時刻で、実績の欄には数式(※)が入っており、終了時刻から開始時刻を差し引いた値、すわなちかかった時間(実績時間)が自動的に算出されるようになっています。
※数式:=IF(終了時刻=””,””,(終了時刻-開始時刻)/TIMEVALUE(“1:00”)*60)
つまり、この表で行うことは、タスクに1つ取りかかるたびに開始時刻を入力し、完了したら終了時刻を入力することです。これをタスクの数だけ繰り返すわけです。
こうすることで、まだ終わっていない(=終了の欄に時刻が入っていない)タスクすべての見積もり時間を合計した時間が残り時間ということになります。そして、この時間を現在時刻に足せば「終了予定時刻」がわかる、という仕組みです。
例えば、上記の図でいえば「マニュアル全ページをざっと見る」というタスクのみ完了している状態ですから、残りは1.9時間(0.4+1.0+0.5)です。現在時刻が16:00であれば、終了予定時刻は17:54となります。
これにより、上司に「17:54に終わる見込みです」と報告することができます。
自分自身がタスクと時間を管理しながらも、進捗も把握でき、それが同時に上司への進捗報告としても活用できるわけです。
次回は、進捗を1つのツールで一元管理する効用について考えてみます。
まとめ
ツールを活用して以下の3つの条件を満たすことで、時間とタスクと進捗の3つを同時に管理することができます。
- 1.現在抱えているタスクをすべて把握している
- 2.それぞれのタスクごとにかかるであろう時間を把握している
- 3.現在のコンディション(気分や体調)がタスク遂行に与える影響の程度を把握している
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参考文献:
2010年に読んで、その後の僕の「タスク管理」に影響を与えた一冊。それまでに実践してきた「タスクシュート」の考え方と一致している部分が多く、共感を覚えつつ繰り返し読みました。短くシンプルでありながら実に的確な指摘の数々に唸らされます。
以下はそんな指摘の一部。
- 最初の1時間に最も重要な仕事に取り組む
- 一日の初めに今日のスケジュールを立てる
- 1つの作業を終えたら、リストに書かれている次の作業を開始する
- リストの順に作業を行う
- 何かを達成したかったら、目標を立てる
- 目標を達成するための手順を考えて書く
- 大きなプラス効果をもたらす大規模なプロジェクトを1つ実行する
- 大きなプロジェクトは、小さな段階に分割するか、大きな区切りを設ける
- 頼まれたことを記録する
- 割り込み仕事が舞い込んできたら、スケジュールを組み直す
- とにかく着手する
- 作業に取りかかろうと努力する
- 少し先の未来の効率を優先する
- 一回考えれば済むことはルーチンにする
- 悩んだときの答えは「イエス」
- 答えが常に「はい」である質問のストックを増やす
- 終業時間の30分前に1日の仕上げを行う
2006年刊行の本書ですが、未だにAmazonに在庫がしっかりあり、長く売れ続けていることがうかがえます。