自分の変化を感知しやすくするために

By: Shane AdamsCC BY 2.0




もともとこのブログを始めたきっかけは、その日に自分が取り組んだ仕事について、たまたまであれ意図的であれ、うまくできた仕事のやり方があれば、これを忘れないようにするために書き残しておこうと思ったことでした。

時間がたてば記憶は風化し、たとえ自分の書いた文章であっても、字面以外の周辺情報は肉が朽ち果てるかのように消え失せてしまいますから、後に残った白骨テキストだけを見て、それが“生きていた”時の様子を再現できるようにしておく必要があるわけです。

ルール化すれば、次の3つです(実際にこれらのルールを意識してはいませんが、どれも無意識に実践しているところではあります)。

1.「今の自分」にしか分からない言葉は一般語に置き換えること

文字通り、今なら「つーかー」な言葉であっても、1年後に同じような関係を維持できているという保証はありません。そういう意味で、あらゆる言葉は分け隔てなく、等間隔なつき合いをキープした方がよかろう、ということです。ひいきもしないし冷遇もしない、言わば「年賀状だけは欠かさない」ような間柄です。

例えば、省略形はなるべく使わず、完全な形で書いておくようにします。こうすることで、過去の記事から目的の記述を探し出す際に見つけ出しやすくなります。完全な形で書くのが面倒であれば、単語登録しておくと良いでしょう。これは、『日記の魔力』でも推奨されていました。

たとえば、私はつねにジャンルの違った三冊の本を「並行読書」しているのだが、そうした本のタイトルというのは、読んでいる間は何度も日記に登場することになる。移動中の電車の中で、喫茶店でコーヒーを飲みながら、仕事の合間にと、読むたびに著者名とタイトルを記録するからだ。手書きだとこれがまた面倒くさい。

だが、パソコンなら一度辞書登録してしまえば、何度出てこようとまったく苦にならない。そのため、以前より短時間でより詳細な記録を残すことができるようになった。これは明らかにパソコンの効用だ。(p.83)

ちなみに著者の表三郎氏は、「き」と打てば「起床」、「ぐ」と打てば「グレープフルーツ・ジュースとタバコで目を覚ます」と変換されるようにしている、と書かれています。

「どんだけー!」と思ってしまいますが、確かにストローク数は圧倒的に減りますので、これなら確かに入力の面倒さはなくなります。でも、それは実に些末なことで、それ以上に大きいのが、行動に与える影響です。

行動に与える影響

定期的に日記やブログを書く人というのは、何かを見聞きすると「あとで文章に書くかもしれない」という感覚が芽生えるでしょう。外部からの刺激であれ、ふと思いついたことなど内的な刺激であれ、「これを文章化するのだ」というゴールがパッと頭の中に浮かぶわけです。

この時、文章にするのが面倒な内容であれば、「見なかったことにしよう」あるいは「思いつかなかったことにしよう」などと、都合良く封印してしまうかもしれません。入力が面倒だったり、説明が困難だったり、といった些末なことが行動を抑制しうるわけです。

変な話ですが、日記に書くのが面倒だから、という理由で特定の行動を避けるようになったり、逆に日記に書くのが楽だからという理由で、特定の行動パターンを繰り返したり、ということも出てくるでしょう。

日記ではありませんが、僕自身は、家計簿の入力が楽になるから、という理由でコンビニで同じ商品を買い続ける、ということがありました。レシートを見て商品名をチェックし、これを打ち込むという行為は面倒ですから、入力済みの過去データを参照し、これをコピーすれば、金額も同じですから手間が省けるわけです。

でも、このような極度なパターン化は本来目指すべき方向と逆──家計簿を入力するために生活している──になってしまうため、コンビニについては単に「コンビニ 940円」のような合計金額だけの入力で済ませることにしました。その結果、コンビニでの商品選択の自由が生まれました(本来は当たり前のように与えられている自由を改めて与えられた気分です)。

つまり、あらゆる言葉と等間隔な“つき合い”をキープするためには、それぞれの言葉が生み出す起伏をなだらかにしておく必要があるわけです。そうして初めて、変化に気づきやすくなります。言葉が透明になり、その向こう側が見通せるようになるからです。

長くなってしまったので、以下の2つはまた後日に。


▼関連:

タスクごとに「心境」を書き残す効用 

人は、一日の仕事を終えてリラックスしている時よりも、緊張状態にある仕事の途中の段階にいる時の方が、様々な発見にさらされているものです。こういった発見は可能な限りその場で「生け捕り」にしておく方が、その後に役立てることができるはずです。リラックスしてからでは、発見を取り逃がしてしまうでしょう。

思考や行動の“跡”をつけておく効用 

それ以上展開の見られない場合もあるかも知れませんが、論理的に正しかったり、世の中がそう認めていたり、あるいは趨勢的にそのように判断できる、という「ある程度保証された選択肢」にはない、自分ならではの“伏線”であることが少なくないはずです。

映画やドラマにおける伏線がことさらに印象に残るのと同様に、我々の前を通り過ぎていく中に、どうしても気になる“顔”があるのなら、それをそのままにするのは、その後の展開のきっかけを失うことになるかも知れません。

意味は分からなくても、とりあえず書いておくことで、それを生きながらえさせることができます。

“日記家”のための座右の書 

ふと思ったことをそのまま流してしまうのではなく、日記に書く。そして、後日読み返す。これが、自分の関心を知るための有効の方法になるでしょう。時代の変化だけでなく、自分の変化についても深く知ることができるようになるはずです。


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