人は、なぜ約束の時間に遅れるのか

カテゴリー: ビジネス心理書評
人は、なぜ約束の時間に遅れるのか 素朴な疑問から考える「行動の原因」 (光文社新書)
島宗 理

光文社 2010-08-17
売り上げランキング : 3864

おすすめ平均
アカデミックかつ実用的な本です。
日常行動の原因を、目で視て判るように描き出す術、教授します

Amazonで詳しく見る

by G-Tools

本書は間違いなく面白い。と同時に、よくこうした本がビジネス書コーナーに置かれていたものだと驚かされた本でもあります。心理学書のコーナーに行かなければ、なかなかお目にかかれない本。新書の扱う守備範囲の広さを、改めて思い知らされました。

タイトルも魅力的で、なにより私のような者にとっては、「行動科学」を「ライフハック」に応用しているという意味で、これ以上の本はなかなかないと感じ入りました。ライフハック×心理学に興味がある人は必読です。

著者の解いている「行動分析学」の基本はこうです。「人の行動は、付随する行動の結果によって強化されたり弱化され、強化が優勢であれば同じ行動が繰り返され、弱化が優勢であれば行動が消えていく」。

これだけであれば、一般的な行動科学であって、目新しくはありません。が、本書の魅力は、この基本線にしたがって、ごく日常的な行動を次々に明らかにしてみせるところにあります。

タイトルにもある「人はなぜ約束の時間に遅れるのか?」も分析されています。そのほかにもたとえば次のような行動についての分析が並びます。

・人はなぜ、(鞄は置き忘れないのに)傘を置き忘れるのか?
・人はなぜ、大災害でも逃げ遅れたりするのか?
・人はなぜ、宝くじを買うのか?
・人はなぜ、感情的になるのか?

以上については、心理学者であろうとなかろうと、誰に尋ねてもそれなりの説明はきっと返ってくるでしょう。しかし、それらの説明を聞いて「行動の原因」がわかった気になったとしても、なかなか行動自体を改められません。

たとえば、「彼はどうしてあんなに感情的になるの?」と尋ねたとしましょう。その人のことをよく知っている人なら、「あの人は気まぐれだから」とか「精神的に不安定だから」などと、非常にもっともらしく教えてくれるかもしれませんが、この説明を聞いたとしても、彼がキレないようにする方法もわからなければ、彼をキレさせないようにする方法も不明のままです。

しかし、本書の著者ならば簡潔に答えてくれるでしょう。キレる行動を強化するような行動要因を明らかにし、その行動を望ましくないと思うなら、弱化する環境をあつらえるべきだと。

そのために著者は「視考術」という方法論を紹介しています。ダイアグラムを使って、行動を強化する原因を突き止めるやり方なのですが、これはなるほどと思わせられます。

著者にいわせれば、思考も感情も行動の一種。(これはかなり徹底した行動科学的な見方です。)つまり、ダイアグラムによる「視考術」を駆使すれば、ある種の思考のパターンや感情が生起することすら、改善することができるというわけです。

本書をさらっと読んでいると気づかないかもしれませんが、本書で主張されていることは、一般的に行動を説明するやり方として、全く直感的には納得できない考え方ばかりです。

私たちのほとんどは

性格(考え方)→行動

という図式になれきっています。「あの人はちゃんと気配りのできる人(性格)だから、ああいうときには、ちゃんと大橋さんに譲ってあげる(行動)のよ」という言い方は、明らかに「性格」→「行動」という図式による理解です。

著者の「視考術」はこの図式を真っ正面から却下します。「気配りができる人」だから「譲った」のではなく、「譲る」もしくは「自己主張を控えておく」という行動を繰り返すように「強化されたのだ」と考えるわけです。

こう考えることのメリットは、もし自分が「気配りのできる人」になりたければどうすれがいいかを、この上なく具体的に知ることができるという点にあります。

 

▼編集後記:
モレスキン 「伝説のノート」活用術~記録・発想・個性を刺激する75の使い方
堀 正岳 中牟田 洋子

ダイヤモンド社 2010-09-10
売り上げランキング : 149

Amazonで詳しく見る

by G-Tools

いよいよ発売まで、ほぼ一週間となりました。目次をぱっと読むだけでも、モレスキン好きにはたまらない内容となっています。

仮にモレスキンが好きでなくても、いわゆる「ノート術」に目がないタイプであれば、この本は買ってしまいそうですね。

それにしてもある種の人はなぜ、ノートや文具、ノマドガジェットなどに「弱い」のでしょう? 「行動分析学」で突き止めてみましょうか。

目次
※一部抜粋
●はじめに――あなたの脳を「拡張」するノート

●第1章 なぜモレスキンノートが選ばれるのか
・モレスキンノートとは何か?
・経験を蓄積する「手帳」としてのモレスキン
・モレスキンの持つ「自由」の精神
・デジタルツールとモレスキンノートの使い分け

●第2章 モレスキンノートに人生を入れる
・忘れるよりも速く記録する「ユビキタス・キャプチャー」
・吹き出しアイコンであえて制限を加える
・すばやいメモにはロディアを使う
・感情をとらえる書き方をマスターする
・スタンプを利用して記入に近道を作る

●第3章 モレスキンノート「3ステップ活用法」
・「毎日レビュー」で情報を立ち上がらせる
・ページとページをつなぐ「ハイパーリンク」を作る
・ページの検索性を上げるための「タグづけ」
・「週次レビュー」でノートの情報を永続化する
・一瞬で重要な情報を引き出せる「索引作り」
・「スレッド表示」で断片的なキャプチャーを一箇所に集約する
・開かなくても中身が見えるようにする工夫
・Evernoteを利用してモレスキンノートをデジタル化

●第4章 モレスキンノート「ビジネス活用術」
・ミニシステム手帳に作り変える
・デイリー・ダイアリーで「時間トラッキング」
・「行動メニュー」で無理なく分単位で時間を活用する
・モレスキンノートで「GTDシステム」を作る
・メモポケットに情報カードを入れて「To Do管理」をする
・偶然の出会いからアイデアを生み出すヒント

●第5章 モレスキンノート「生活活用術」
・絵日記をつける
・万年筆と文字で日記をつける
・読書日記をつける
・フォトアルバムを作る
・トラベルノートを作る
・コレクションブックを作る
・レシピブックを作る
・グルメめぐりを記録する
・健康を記録する
・単語帳を作る

●第6章 モレスキンノート「DIYカスタマイズ術」
・ペンをどうやって持ち歩く?
・しおり紐を自作する
・表紙をデコレーションする
・モレスキンノートにカバーをつける
・拡張ポケットに窓をつける
・モレスキンノートを財布にして持ち歩く
・MSKを利用する

●第7章 モレスキンノートと相性のいい文房具
マイスターシュティック/Safari/ペリカーノJr./ラピッド/ジェットストリーム3色ボールペン/インデックス付箋/モノトーンポケット付箋/スティッキースケジュールメモ/ブックダーツ/マスキングテープmt/DYMO OMEGA/ペンホルダー/サイドペンクリップ/インデックススタンプ/つぶやきスタンプ/バッグinバッグ/POGO

●巻末付録 モレスキンノート一覧


▼「ビジネス心理」の新着エントリー

» 「ビジネス心理」の記事一覧

▼「書評」の新着エントリー

» 「書評」の記事一覧
スポンサー リンク