「意志の弱い人」がしている3つの誤解

カテゴリー: ビジネス心理書評

By: aka TmanCC BY 2.0


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本書は読みどころ満載、事例も満載ですが、そのすべてを紹介するスペースも時間もありませんので、私自身にとってもっともなじみの深い、「心理学的な話」をピックアップします。それが「意志の弱い人」がしがちな3つの誤解です。

誤解1 意志力を発揮できないのは取り組む姿勢に問題がある

本書で取り上げているのはダイエットに関する心理実験。なるほどダイエットと言えば、「意志力の弱さ」が問題にされる典型的な事例です。

意志が弱いからツイスイーツを食べてしまうということが問題だとすれば、意志さえ強ければ我慢ができて、理想の体形になれる、という思い込みがあるわけです。

しかしそれは事実ではないと、本書の冒頭の心理実験が申し立てています。その心理実験によると、まずくて仕方がないようなポップコーンを渡された被験者たちのうち、大きな容器で食べた人たちは、たくさん食べてしまったということでした。

つまり、容器が大きいと、まずいポップコーンでも多めに食べてしまう。ちなみに、比較された人々は小さな容器でポップコーンを食べたわけですが、彼らも食べきれなかったのです。

食べきれないほどまずいポップコーンをたくさん渡された人たちと、もっとたくさん渡された人たちを比較すると、より多く渡された人たちは、まずいまずいと思いながらも、より多く食べてしまったわけです。

ダイエットに関する限り、成功したければ意志力に関係なく、小さなお皿でものを食べるようにするべきでしょう。これを一般化して言うと、目的を果たすには取り組む姿勢を云々するより、環境に目を向けるべきだということになります。

誤解2 「意志力」は使っても減らない

私は拙著『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』の中で、この件をこれでもかと突っ込んでみたのですが、本書ではさらっと流されていて、ちょっと悲しくなりました。

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やる気にせよ意志力にせよ、使うと減っていくのです。こういう話は直感に反するのでなかなか信じてもらえません。人はなんだかんだと言っても心身二元論を信じているので、「精神」と「肉体」を完全に別のものととらえてしまうのです。

『スイッチ!』で紹介されている心理実験によると、チョコレートを食べるのを我慢したのと我慢しなかった人を比較してみると、我慢した人はその後、我慢強さを発揮できなくなってしまいます

チョコレートを我慢した人たちに、「回答不能の問題」に挑んでもらうと、あっさり諦めてしまうのです。チョコレートを我慢しなかった人たちは同じ問題に対して、より粘り強く解こうと努力しました。

やる気、意志力、我慢強さ。それに類する精神力は、使用するとその分失われるというわけです。

誤解3 考えてばかりいて行動を起こそうとしない人はやる気が足りない

このように思っている人は多いのですが、実際には「やる気が足りない」から行動を起こさないのではなく、「見通しが足りない」から行動を起こさせずにいるのです。

考えてばかりいるという事実に、見通しの足りなさがよく現れています。見通しを見つけたくて、思考にふけって時間を空費しているわけです。やる気が足りないわけではないのです。

これに関しては心理実験よりも、GTDなどの仕事術で強調されている話の方がわかりやすいでしょう。「次にやること」を明らかにしろとか、1つに絞れとか、曖昧なタスクを小分けにして行動を起こせるようにしろというのは、「見通しを明らかにするため」です。

「無駄な支出を抑えよう」というよりも、「外食は月4回まで」という方が、どうすればいいかがわかりやすくなり、やる気にもつながるわけです。

以上の3点は本書の冒頭で語られている話で、他にも「理性」(自我)を「像使い」に喩えたり、「感情」(衝動)を「像」に喩えるなど、読者がつきあわされる条件が多いので、読んでしばらくは内容理解につっかえてしまうかもしれません。

そういう意味で、3章くらいまで読み進めないと、スムーズに頭に入ってこないのですが、一度彼らのいわんとするところが頭に入ってしまえば、本の厚さが全く気にならなくなるほど、楽しめてためになる読み物です。

なお、本書の著者は『アイデアのちから』の著者でもあります。続編というわけではありませんが、両方読むと「なるほど同じ著者だ」と誰にでもわかるでしょう。『アイデアの力』が面白かったなら、『スイッチ!』も楽しめます。

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いよいよ近日発売です。といっても私もまだ中身を1ページも見ておりません!しかし著者からいただくことは決まっているのに、すでに予約までしてしまったという。モレスキンをこよなく愛しているというわけでも、活用しているとすら、言えない自分ではありますが!

でもどうしても気になりますよね!

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