10-10-10 人生に迷ったら、3つのスパンで決めなさい! 小沢 瑞穂 講談社 2010-01-21 |
この本で紹介されているたった1つの方法は、良い方法です。この方法1つについて書くだけで、よく258ページの本を作れたものだと感心もさせられましたが、その方法はここに書いてしまいましょう。
10分後
10ヶ月後
10年後
という3つの未来をイメージするというだけの方法です。
著者も書いているとおり、別に10分後ではなく9分後でも、10年後ではなく13年後でもいいのですが、10-10-10としておいた方が覚えやすいのは当然でしょう。
10分後をイメージする
とりあえず、やってみましょう。一例として、結婚生活を続けるか、離婚するか?
こういう問題でうなっているなら、10分後のイメージは「離婚する!」に傾くはずです。さぞ、スッキリするでしょう。
以上で、終わり。10分後のイメージで考える限り、「離婚する!」が結論になりそうです。
10ヶ月後
では、「離婚した」10ヶ月後のイメージはどうでしょう? おそらくなかなかシビアな現実がイメージされるでしょう。
収入面のことは問わないにしても、生活は寂しいものになっています。子供がいるなら、その子供との関係も、大きく変わっているでしょう。
また、自分の両親などの関係というものも、見逃せません。引っ越しの荷ほどきも、全部は終わっていないかもしれません。どんなイメージになるかは、まったく人それぞれでしょうが
10分後のポジティブなイメージほど、ポジティブなイメージは描きにくい
という人が多いのではないでしょうか。もちろん、ここでもポジティブなイメージが描けるなら、やっぱり「離婚する」ということになるでしょう。
10年後
さらに進んで、10年後。
これはもう、推測の世界でしかありません。そもそも、離婚した10年後も独身でいるかどうかすら、分かるわけがありません。自分のことでも分かりませんし、人のことなどなおさらです。
けれども、たいていの人は、そんな多様なイメージが描ける条件でも、なぜか1つのイメージを思い浮かべるものです。これは大事なポイントです。
私たちは、自分の10年後、15年後のイメージを、おぼろげにでもイメージできます。「離婚したら、こうなるだろう」「結婚生活を続けるなら、きっとこうだろう」と。「自分のことだから、たぶん」。これはなかなか正確にやれるのです。
と言って、完全的中などということは、まずあり得ません。よくて、当たらずといえども、遠からず、でしょう。それでも、イメージしてみるということが、大事なのです。結論を出すのは、その後にすべきなのです。
10-10-10の効用
やってみれば、なかなかの方法だということがおわかりいただけると思いますが、自分のケース・スタディだけでは物足りないという方は、本を読んでみるべきです。250ページの本書に詰まっているのは、10-10-10を喫緊に必要とした人たちの、「人生の宿題」なのです。
もちろん、アメリカ産の自己啓発書ですから、そのほとんどは「めでたしめでたし」に近いエンドで終わります。つまり、独特の精神的清涼剤として機能するわけです。
私はそれ自体は悪いことだと思っていません。ただし、精神的清涼剤として機能するのみで、方法論があまりにお粗末な自己啓発書は、読まない方がいいと思っています。本書は、精神的清涼剤として機能する上に、10-10-10の方法論も、一定の効力を持ちます。
ですから、読んで損はないでしょう。読まなくても、10-10-10の方法を試すことはできますが、読んだほうがより効果的に活用できることは、たしかです。
実はこの本は、私の「ライフハック心理学」のエントリを読んでくださった読者さんが、「同じようなテーマの本がありますよ」とメールをくださったので、慌てて読んだという次第です。
エントリは次のものです。
決められないときの心理ハック – 6つの「今」を検討する
http://www.mindhacks.jp/2010/01/post-1850
私としては、ちょっと違う話をしていたつもりですが、なるほど、似ていると言われれば似ています。
あえて言えば、「10-10-10」方式は、「状況について決断する時」のためのものです。すこし、問題が大きいのですね。
それに対して私の「6つの今」は、「タスクをどうするか」について考えるためのものです。先送りにするのか、分割するのか、なしにするのか、今すぐやるか。
「結婚生活」は「タスク」ではありませんね。「結婚生活をどうするか」を考えるのに、「6つの今」はそれほど向いているとは思いません。それにはやはり10-10-10の方がいいでしょう。
一方で、「セミナーの準備をどうするか。やりたくないなあ・・・」という時には、私なら「6つの今(うち使うのはおそらく4つ)」で対応します。10-10-10はまず使いません。セミナーの準備をせずにセミナーに挑んだ10ヶ月後をイメージしても、たいして意味はなさそうですから。