去年に手持ちの情報を整理してさっぱりされた方は、今年一年の自分の思考を整理していくために「メタ・ノート」を作る習慣を設けてみてはいかがでしょうか?
メタノートって何?
メタ・ノートは『思考の整理学』の中で著者の外山氏が自分の考えを深めるために使われていたノート方式の事です。
複数のノートを使い、情報を時間的・文脈的に別の視点から見ることで、深みのあるアイデアを作ることができます。
ファストフード的アイデアと熟成的アイデア
一般的に新しいアイデアは古いアイデアの組み合わせである、ということがよく言われます。特に新商品の開発などにおいて、その様なパターンがよく見られます。
これは、ハンバーグとパンを合わせたらハンバーガーができました、というようなものです。10個のアイデアと10個のアイデアを掛け合わせたら100個の新しいアイデアが出来ました、という発想ツールははいくつも開発されています。もちろん、そういったアイデアに価値がない、という訳ではありません。そういった瞬発力のあるアイデアが求められる場面もあるでしょう。
しかし、アイデアにはそれ以外の面もあります。まるで、お酒を熟成させていくようにじっくりと深めていくアイデア。それは、新商品の企画書を出すためのアイデア、ではなく自分にとっての興味・関心の芯になるような着想です。
この二つのアイデアを上手く使い分けていくことが、スピード感のある知的生産と深みのある知的生産を両方こなしていくコツと言えるでしょう。
そして、「メタ・ノート」は後者の知的生産において効果を発揮します。
実際の手順は?
実際の手順について複雑な要素はほとんどありません。以下のポイントを押さえれば十分です。
- 日々の着想は全てメモや手帳に書き付ける
- それらを時間を置いて見返す(第一次発酵)
- 見返してまだ「おもしろい」と思える着想はノートに書き写す(1つの着想に1ページ)
- ノートに書き写す中で、拡がったアイデアは書き加えていく
- さらに時間を置いて、ノートを見返す(第二次発酵)
- 見返し時にまだ「おもしろい」と思えるものは、さらに別のノートに書き写す(1つの着想に見開き2ページ)
最後に出来上がったノートが「メタ・ノート」と呼ばれるノートになります。
このノートに書かれているアイデアは瞬間的な興味からはふるい分けられた、自分自身の関心に強く結びつくものばかりです。また独自の視点も多く含まれていることでしょう。
道具は何を使う?
『思考の整理学』の中で外山氏はノートとメタ・ノートにはあまりつくりのいい加減な安いものは使わない方がよいと述べられています。
長期間使う事が前提なので、つくりのしっかりした物がよいことは当然です。それ以外にもやはり「良い物を使っている」という感覚は重要な意味合いを持つと思います。自分のアイデアにはそれだけの価値があると思えれば、新しい発想も湧いて来やすいでしょうし、ノートを見返すときも気分が良いものです。
実際に何を使うかは個人の好みですが、カバーノートや日記帳が適していると思います。
デジタルでは?
上の道具はアナログでしたが、デジタルでメタ・ノートを作るとすればどんなツールを使えばよいでしょうか。
着想をすべて書き付ける
手順の一番最初の着想を全て書き付けるという工程をデジタルで実現しようと思えばスマートフォンの存在はかなり重要です。メモやノート専用のアプリが充実しているので着想を全て書き付けることは比較的容易にこなせます。
普通の携帯電話で実現しようと思えば、着想専用のGmailアカウントを取得して、そこに全てメールで送るという形にするのがベストでしょう。
※他の情報を混ぜないため
見返す
大抵のノートアプリはフォルダ式になっているので、書き付けた着想のなかで面白い物を別のフォルダに移動させます。これが第一次発酵です。
あとは、同様に時間を経てノートを見返し、面白さが残る物を別のフォルダに移動させます。これが二次発酵にあたります。
新しい時代の「メタ・ノート」
上の方法でも「メタ・ノート」は作れますが、いかにもノートをそのままデジタルノートに置き換えたものであり、あまり「新しい時代」用とは言い難い感はあります。そこで以下のようなTwitter・ブログ形式を提案しておきます。
つまり
- メモ → Twitterでのつぶやき
- ノート → ノートアプリ
- メタ・ノート → Blog
と置き換えるわけです。
思いついた着想はすべてTwitterでつぶやきとして流し、あとでそれを全て見返して面白い物はノートアプリに移動。そしてさらにそれを見返して面白いものはBlogに書くという手順です。比較的簡単でありながら、最後には「知的生産物」も出来上がります。
このBlogはパブリックに公開する必要はありません。自分だけのプライベートなBlogで十分でしょう。
※もちろん、公開して新しく思いついたアイデアを随時アップデートしていく方法でもよいと思います。
まとめ
メタ・ノートの手法と、それをデジタルアレンジした手法を考えてみました。このメタ・ノートの手法の特徴は、着想を全て書き付ける作業と、それを見返してメタ化していく中で自分自身の関心を明確にしていくことです。その軸さえ外さなければ他のアレンジでも同様の効果があると思います。
思いついたばかりのアイデアというのは、自分が知らない原石のようなものです。
宝石の原石かと思えばその辺の石ころだったり、普通の石だと思っていたら実はダイヤの原石だったりすることはよくあります。そして、それはとても小さいのでしっかりポケットに入れておかないとすぐどこかに行きます。
アイデアをしっかりと確保して、時間をおいて見返す事で、冷静な他者の視点でアイデアを見つめ直せます。それによって、意味のないアイデアの中から意味のありそうなアイデアをよりすぐる事ができるようになるわけです。
さらに、よりすぐったアイデアを見返す事で、いろいろな情報を付加していくことができます。一時的な思いつきを徐々に育てていく感覚がそこにはあります。また、着想を持っている事で、情報のアンテナが鋭くなる効果もあると思います。
アイデアを選別し、そのアイデアを膨らませていくために「メタ・ノート」は非常に適切なシステムだと思います。知的生産の幅を広げていくためにも、今年は「メタ・ノート」元年にしてみてはいかがでしょうか?
▼合わせて読みたい:
アイデアを全て書き付けるというと「ユビキタス・キャプチャー」という単語を思い出される方もおられると思います。着想だけではなく「自分が気になるもの」を全て書き付けていくことで、脳の記憶に関する付加を減らして作業の効率を上げていこうという事が「ユビキタス・キャプチャー」の目的です。これについては堀さんの以下の本が参考になるでしょう。
「メタ・ノート」システムが習慣化できれば、次のステップとして「ユビキタス・キャプチャー」にチャレンジしてみるのもよいでしょう。
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いよいよ2010年がスタートしました。結構どたばたしたまま年末から年始を迎えたので、年次レビューがしっかりできていません。R-styleの「書評企画」のエントリーを全て書き終えてからじっくりレビューしたいと思います。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。