特によく使っているのは付箋とカードです。
単に頭の中身を出すだけならば紙とペンで構いません。しかし、アイデア出しは構造物(たとえば、本の章立て)を作るために行います。そのため、頭の中から出したものを後から並び替えられないとやっかいなのです。
付箋、あるいはカードは見事にその役割を果たしてくれます。
今回は、そうしたツールを紹介してみましょう。アイデア出しにおける考具の紹介です。
とりあえず付箋
アイデア出しにおいて、一番使われることが多いのが付箋でしょう。よく使われるだけあって、ブレスト向きの特徴があります。
第一の特徴は、貼り替えられる点です。
ブレストから構造物を作っていく際は、常に(仮)の状態で進んでいきます。どこにどんな要素が並ぶのかは、最後の最後まで決まりません。常に手探りかつ試行錯誤な状態が続くわけです。もし一度書き込んだものを動かせないとしたら、そうした試行錯誤を行うのはそうとうに難しいでしょう。万年筆で原稿用紙を埋めていくような作業です。ペタペタと貼り替えられる特徴は、まさにブレスト→構造物の作業に適しています。
また、第二の特徴としてラインナップの多様性があります。最近ではさまざまなサイズやカラーの付箋が発売されているので、必要に応じて付箋に意味や役割を持たせることができます。
たとえば、章題には目立つ色で大きめの付箋を使い、その下に並ぶ項目は中ぐらいの付箋を使う、といったことです。そうした付箋の書式も自分で自由に(かつ臨機応変に)決めていけます。
全面シフト
ただし、通常の付箋の場合、貼り付けた部分の逆側がピラピラと浮いてしまうことがあります。
機能的な問題はないようにも思えますが、長期間使う場合は付箋が剥がれやすくなってしまいますし、単純に見た目の問題もあります。視覚的に邪魔なものは、「考え事」を進める上で、あまり助けにはなりません。認知資源を浪費している可能性すらあります。
そうした場合には、「全面」に接着剤が付いた付箋を使えばよいでしょう。これはピラピラと浮くことがないので、まるでシールのように使うことができます。ただし、普通の付箋ほどのバリエーションはないので、若干色やサイズに制約を受けます。
カードという選択肢
付箋とはまた別に、意外な使い勝手があるのが小型のカードです。
名刺サイズの情報カードや、100円ショップで売られているカラーカードなどが使えます。
基本的な使い方は同じですが、付箋とは違い「剥がして、貼り直す」という手間が必要ありません。付箋よりさらに早く、配置を替えることができます。
その代わり、配置した場所を「固定」することができません。貼ってあるのではく、置いてあるだけなので、カードを片付けてしまうと構造は無に帰ります。どうしても保存が必要ならば、デジカメやスマートフォンで配置を撮影しておけば代替となるでしょう。
面白いのは、カードの場合「シャッフル」ができる点です。構造化が行き詰まった際、カードをシャッフルして、ランダムに並べることで、思考をリフレッシュできるのです。こうしたアクションは、付箋では簡単には行えません。
さいごに
結局、付箋が良いのかカードが良いのかは、結論がありません。付箋の使い勝手が一番良いのですが、シャッフルできるカードにも面白みがあります。一長一短とまでは言えませんが、それぞれに良さがあり、あと一歩な部分もあります。
これまで5年ほど執筆業を営んできて、多数の一人ブレストを行ってきましたが、それでも一人ブレスト用の決定的考具は見つかっていません。「それなりにできる」「やれないことはない」あたりで留まるものが大半です。もちろん、そのためにデザインされたツールではないのですから当然とは言えるでしょう。
デジタルツールでも良い線を付いているものはありますが「アイデア出しから構造化まで」を適切にサポートしてくれるツールは見当たりません。今後、アナログやデジタルで、「一人ブレストのサポートを主目的」としたツールが登場してくれることを願います。
それまでは付箋やカードでなんとかやっていくとしましょう。
▼今週の一冊:
パターンランゲージの歴史から、デザインのパターンまでの流れ。Wikiがどのようにして生まれ、成長していったのか。それらとXPがいかに関わっているのか。そうしたものが紹介されています。
それぞれの要素について、まったく別の方向から興味を持っていたので、非常に面白く読めました。パターンは、「アイデアの発想のパターンランゲージは作れるか」を考えていました。Wikiについては、Evernoteの運用の参考に、XPについては、新しいスタイルの電子書籍の作り方についてヒントを得ようと思っていました。それらが、思想的・歴史的に繋がりを持つとは驚きです。
» パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
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炎上しているプロジェクトは鎮火するまで油断するな、が私のモットーなのですが、あらかじめそれを見込んでバッファーありのスケジュールを組んでいて助かりました。要するに修羅場はまだ続いております。
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新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。