「平面に見えて実は立体だということです」
結論から言うと「考える仕事」をたくさん抱えている人にはおすすめの一冊です。
本を書くのが苦手
本を書くのが苦手です。
本を書くときは「構成案」(=アウトライン)を作って編集者と共有します。
構成案つくるときはものすごくテンション上がるのですが、
いざ構成案に沿って原稿を書きはじめると一気にテンションが下がります。
構成案をつくる段階では見えていなかった“伏兵”が次々と現れてすぐさま膠着状態に陥るからです。
このあたりについては本書でも指摘されていて、読みながらニヤニヤしてしまいました。
「アウトライン・トラウマあるある」です。
かいつまんで紹介すると、
- アウトラインを作ったときには簡単に文章化できそうに思えた内容も、書いてみるとアウトライン以上の内容が出てこない。
- 無理に書こうとするといかにも空欄を埋めたような貧弱な文章になってしまう。
- 逆に何かの拍子に筆が走り出すと、今度は決めてあったアウトラインからどんどん逸脱してしまう。
- レポートの課題での「苦痛」、「事前にアウトラインを提出してOKをもらわなければ本文作成に入れない」「一度アウトラインを承認されたら変更は許されない」
アウトラインとは呼ばなくても、「構成案」や「目次案」に基づいて文章を書こうとして、同じような経験をした人は多いのではないでしょうか。
まさしく。
プレゼンはけっこう得意
本を書くのは骨が折れますが、プレゼンはけっこう得意です。
まぁ、出来はともかくとして、セミナーの準備でスライド資料を作るときは、ほぼ事前に作ったアウトライン通りに仕上がります。
アウトラインを作っている時点でプレゼンをしている自分のイメージがかなり鮮明に浮かんでいるので、その一部をなぞっていくとスライド資料になる感じです。
文章を書くときは構成案どおりにいかないのに、不思議です。
この謎については後半で解明されます。
アウトライン、ぜんぜん分かっていなかった
本書のテーマである「アウトライン・プロセッシング」(以下アウトライン)ですが、
「未知」のものではありませんでした。
とはいえ「熟知」にはほど遠く、
「あぁ、アウトラインね。使ってますよ、便利ですよね」
という程度。
例えば、以下の記事で紹介しているように、やることを洗い出したり、混乱してきたときに頭の整理をするために使ったり。
それが本書を読んでみて、アウトラインの認識が一変。
今後、アウトラインとどのようにつき合っていけばいいのかがよく分かりました。
アウトラインの認識が一変した
以下、メモも兼ねて列挙します。
「文章を書く」にまつわる課題
- 書こうとする内容を事前に完全に決めておくのはほとんど不可能
- 何をどんな風に書くべきかは「実際に書くこと」を通じてはじめてわかってくる
アウトラインの役割
- アウトラインを活用することで「考えてから書く」のではなく「考えながら書く」、
あるいは「書きながら考える」ことが可能に
→ 欲しいのは「完成品」の内容ではなく「当面の仮説」
- 文字どおり「アウトライン」(≒全体マップ)を常に確認できる
・今どのあたりを書いているか?
・足りていないものは何か?
- 文章を書くという重い作業を、あまり頭を使わなくていい「作業」に分解することができる
・打ち込み
・見出しつけ
・該当箇所に移動
最後の「分解」のくだりが画期的でした。
アウトラインとはタスク管理でいえば「タスクの分割」を後押ししてくれるものであり、同時に分割したタスク群がばらばらにならないように保持するためのパッケージでもあるのです。
この意味では、「クローズリスト」と言ってもいいでしょう。
「平面に見えて実は立体だということです」
本書を読み進めていて、ハッとさせられたのが以下の一文。
アウトラインが単なる目次と異なる点は平面に見えて実は立体だということです。
この一文を読んだとき、立体であるサイコロと、これを切り開いて平面に展開するときのイメージが浮かびました。
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立体状態(=アウトラインの段階)で、書こうとしているテーマを複数の角度から眺めることで、一番よい展開の仕方を検討することができます。
「文章を書く」とは、伝えたいこと(=立体のサイコロ)を最も的確に想起させる“展開図”を作ること、といえるでしょう。
ただし、この「展開図を作る」という部分には多分に熟練を要します。分かっていても、分かっている通りに書けないのは技術が足りないから、というわけです。
プレゼンはできるけど文章が苦手なのはそういうことか、と腑に落ちました。
文章は一本道の“単線”ですが、プレゼンではその場で別の言葉に言い換えたり、聴衆とやり取りする、といった“複線”が可能であるという違いも大きいかもしれません。
文章を書くところまでいかなくても、その前段階、すなわち立体状態のものをあれこれと検討するシーンは少なくないでしょう。
この「立体状態のものをあれこれと検討すること」は、いわゆる「考える仕事」といえます。
アウトライン・プロセッシングは、まさにこの「考える仕事」を前に進めるための技術。その後に控える「展開図を作る」すなわち文章を書く技術とは切り分けて考えても良いと感じました。
このあたりはもう少し「考える」余地がありますので、とりあえず今回はこのあたりで。
久しぶりの、「終わって欲しくない」と思いながらページを繰った一冊となりました。
※本稿は、Workflowyでアウトラインを作りながら書いてみました。