“日記家”のための座右の書

『日記の魔力』という本を読み終えました。

著者の表三郎氏は、1940年生まれで、駿台予備学校英語科講師をされています。この、「始まりと今」よりも注目に値するのは、「日記歴30年」(執筆当時)という表氏のキャリアでしょう。

僕自身、日記は12年ほど続けていますが、30年にはとても敵いません。この本では、30年の重みがずっしりと感じられる内容となっており、著者の日記に対する熱い思いとその効用について懇々と述べられています。

表氏は、初めは京大式カードを使って日記を書いていたそうですが、1992年からはパソコン日記に切り替えられたとか。

実は、僕自身も1994年6月29日を境に、それまで紙ノートに記していた日記をパソコンに移しました(パソコン日記に限れば、表氏と同程度のキャリアということになります。それゆえ、共感できる部分が多かったのかもしれません)。

最初は、「メモ帳」を使って記録するようにしていたのですが、より細かく行動記録をつけるために、DBProというデータベースソフトで簡単な管理システム(システムというほどでもないですが)を作り、

 ・日付
 ・行動内容
 ・開始時刻
 ・終了時刻
 ・備考

という5項目を入力していく、という方法に移行しました。データベースソフトですから、検索も抽出も思いのままで、数ヶ月間の間に特定の行動が何回行われているか、頻度や時間帯はどうか、といった分析ができ、それが非常に楽しく感じられたのを今でも鮮明に覚えています。

この時の“システム”が現在も日々活用しているタスク管理ツールに受け継がれているのだと、改めて気づかされます(タスク管理ツールを自作してみる(序))。

ところが、DBProもデータが多くなると起動に時間がかかるようになり、ファイルサイズの肥大化も無視できなくなるなど、限界が見え始めたため、テキストファイルに戻ることになりました。

とは言え、その当時は、起動も動作もスピーディーなテキストエディタ(秀丸エディタ)を常用するようになっており、このソフトが持つGREP(複数のファイルを横断して検索を行う)機能を使うことで、検索や抽出が自由にできたため、特に支障はありませんでした。

また、その頃までに「どのような行動を書き残しておけば、後から自分の役に立つのか」の目星がつくようになっていたため、日記を効率よく書くことができていたと思います。つまり、日記を書くという時間投資の回収率を最大化できている、という実感がありました。

この点について表氏は以下のように書かれています。

多くの人は、昨日と今日は変わらないと思っている。
だが私は、本人は変わらないつもりでいても、絶対に変わっていると思っている。
この「絶対に変わっている」という自信が大切なのだ。

しかし、日記をつけないかぎり、その自信は得られない。
毎日同じ24時間、自分も変わっているようには見えないし、女房も同じ顔をして同じようなことをしている。
だから昨日と今日は同じ、と思ってしまうのだが、それは観察が粗くて気づいていないだけなのだ。

日常を細かく観察していけば、変化は必ずある。

私は、人生におけるさまざまな事実については、すべて日記に書く値打ちがあると思っている。
だから、できるだけ細かく記録しているのだ。

事実はすべて書く価値がある。

そうはいっても、一日の行動をすべて日記に書くことはできない。
1日24時間の行動を細大漏らさずすべて書いていたら、翌日の24時間が日記を書くことで潰れてしまう。そんなことをしていたら、その次の日は、一日中昨日の日記を書いていたと書かなければならなくなる。
そこまで極端でなくても、やはり日記に書く内容は、ある程度取捨選択する必要がある。

では、何を捨てて何を書けばいいのか。
この答えは一人ひとり違ったものになる。
自分にとって必要なこと、自分にとって大切なことを書けばいい、というのが答えだから。

目安をつくるとすれば、「書いておけばよかった」「書かずにもったいないことをした」と、あとで後悔しないように、ということだろう。

「書いておけばよかった」「書かずにもったいないことをした」と感じるためには、実際に日記を書いてみて、“書き漏らす”という失敗を経験する必要があります。

でも、表氏の指摘するようにあらゆる行動を書くことはできないわけですから、どこかの時点で妥協することも求められます。

昨年4月に上梓した『「手帳ブログ」のススメ』の中でご紹介した「4行日記」(原典は『4行日記』)という方法は、その手段として有用だと思います。

さらに、単に書くだけでなく、読み返すことで、「記録しておくべき行動内容とは何か?」という疑問に対するヒントが得られるはずです。それがわかれば、日記の“回収率”はどんどん向上していくでしょう。

ふと思ったことをそのまま流してしまうのではなく、日記に書く。そして、後日読み返す。これが、自分の関心を知る上で有効の方法になるでしょう。時代の変化だけでなく、自分の変化についても敏感になれるからです。

そんなわけで、『日記の魔力』は、日記を習慣としていない人はもちろん、続けている人にとっても、新たな発見が随所にちりばめられた、“日記家”のための座右の書になると思います。



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