例えば、以下のようなスケジュールがあったとします。
- 06:00 起床
- 06:05 検温
- 06:08 燃えるごみ出し
- 06:11 入浴
- 06:35 着替え・身じたく
- 06:45 朝食
- 07:15 座禅
- 07:30 出発準備
- 07:35 オフィスに移動
- 08:45 仕事準備
朝起きてからオフィスに移動して仕事を始める直前までの流れです。
このとき、「通知」を設定するとしたら、どのタスクが良いでしょうか?
「通知」はバッファに設定する
おそらく「出発準備」と「オフィスに移動」の2つでしょう。「出発準備」は予鈴(そろそろ)であり、「オフィスに移動」は本鈴(いますぐ)です。
- 06:00 起床
- 06:05 検温
- 06:08 燃えるごみ出し
- 06:11 入浴
- 06:35 着替え・身じたく
- 06:45 朝食
- 07:15 座禅
- 07:30 出発準備
- 07:35 オフィスに移動
- 08:45 仕事準備
もし「出発準備」の予鈴が鳴ったとき、まだ「朝食」の最中であれば、即座に「朝食」を切り上げ、「座禅」はあきらめて、「出発準備」に入る必要があります。
- 06:00 起床
- 06:05 検温
- 06:08 燃えるごみ出し
- 06:11 入浴
- 06:35 着替え・身じたく
- 06:45 朝食
07:15 座禅- 07:30 出発準備
- 07:35 オフィスに移動
- 08:45 仕事準備
このような、どちらかというとあまり望ましくない切り替えを促すのが予鈴の役割です。
言い換えると、予鈴であるがゆえに最悪の事態は免れることができます。
もし、この「出発準備」という予鈴がなく、まだ「朝食」の最中にいきなり「オフィスに移動」という本鈴が鳴り出したら手の打ちようがありません。「朝食」を切り上げ、「座禅」をあきらめて、「出発準備」に入りますが、出発準備には5分かかるわけですから、その分だけは遅れが出てしまいます。
「出発準備」という予鈴があることで、「出発準備」がバッファとして機能します。「朝食」を切り上げるのにかかる時間(ゼロ分では済まないでしょう)を吸収してくれるからです。
その意味では、本当に必要な通知は「出発準備」という予鈴であって、「オフィスに移動」という本鈴はおまけのようなものといえます。
「出発準備」が終わらないことには「オフィスに移動」を開始することはできないからです。
従って、通知は「出発準備」にのみ設定しておけばいいでしょう。
「たすくま」での設定例
このスケジュールをiPhoneアプリの「たすくま」で再現してみました。
5:59時点のキャプチャですので、このまま見積もり時間どおりにいけば、予定より1分早い7:29に「出発準備」を開始することができることを表しています。
わずか1分とはいえ余裕があるために青字で表示されています。
6:00になると、時間きっかりの進行になり、余裕はゼロとなるため赤字に変わります。
通知は2種類ある
通知は以下の2種類に分けられます。
- 1.プッシュ(割り込み)
- 2.フェッチ(取り込み)
1.プッシュ(割り込み)
1のプッシュは、割り込んでくる形の通知です。アラームやバイブやポップアップなど、とにかく何らかの形で介入してくるものです。
「割り込み」は必要なタイミングを外さないという意味では便利ですが、その強力さゆえに回数が増えると、そのたびに仕事が中断させられることになります。中断からの復帰にかかる時間と、中断前の思考状態を思い出すための精神的なエネルギーを消費します。いずれも中断がなければ発生せずに済んだ、言わばロスです。
ちなみのこの「精神的なエネルギー」とは以下の記事でいうところの「MP」に当たります。
2.フェッチ(取り込み)
2のフェッチは、こちらから取り込みに行く通知です。こちらから見に行かない限りは通知内容が把握できません。
「取り込み」は任意のタイミングで見に行くために、必要なタイミングを外す可能性はありますが、代わりに、作業のキリのいいところで、すなわち自らの意志で見にいくために、時間やエネルギーのロスは発生しません。
先ほどの「たすくま」の画面は、実は「取り込み」型の通知と言えます。
6:00の時点でこの画面を目にすると、「予定通り7:35にオフィスに移動を開始することができる」という「通知」を受け取ることになるからです。
さらに、それぞれの予定にかかる時間(見積もり時間)が正確であれば、途中にある各タスクの“通過予定時刻”も信用できるため、例えば、「座禅」は予定通り7:15に始めることができそうだ、という「通知」も受け取ることができます。
そして、唯一設定している「出発準備」の開始予定時刻が当初予定の7:30から遅れない限りは、焦ることなく、そのままのペースで予定をこなしていけばOK、という「通知」も受け取ることになります。
以下は「朝食」の最中の画面ですが、このままのペースであれば、「座禅」をしっかり15分やっても、予定より3分早い7:27に「出発準備」を始められるという「通知」を表しています。
「割り込み」の通知を可能な限り「取り込み」の通知に置きかえる
以下のブログ記事は、まさにこの「取り込み」の通知の優位性について書かれています。
最初は気に入って使っていたのですが、しばらくすると、どうもアプリを開くこと自体が嫌になり、通知が来ることもストレスになって、通知を切ってしまいました。
このアプリに対するストレスと、たすくまに登録したおそうじタスクに対して抱く気持ちの違いの違いはなんだろうと考えてみたところ、「強要される感じ」のあるなしだと思い至りました。
当初は「割り込み」の通知をしてくる別のアプリを使っていたものの、嫌になって「たすくま」に移管したところ、ストレスが軽減された、という内容です。
このストレスの軽減は、たすくまの持つ「取り込み」の通知によってもたらされたものと言えます。
たすくまのくまは、私に掃除を押し付けようとはしません。
押し付けないけど、やらなかったら次の日にもさらっとタスクを置いてきます。
その無表情な感じがいいんだろうなと思います。タスクが均質化されているというか。
タスクを完了したときに出てくるくまは可愛いですけど、あいつはかなりドライなヤツです。
「やらなかったら次の日にもさらっとタスクを置いてきます」という一文はまさに「取り込み」によって初めて気づかされる通知であることを指し示しています。
「通知」を受け取れる準備ができた状態で、自らの意志で「たすくま」に見に行くので、「押しつけがましさがない」と感じられるわけです。
▼可愛いけどドライなヤツら
従って、「この順番にやっていけば予定通りに終わる」というリストさえ用意できれば、小うるさい「割り込み」の通知は最小限で済むことになります。
例えば、ミーティングの開始時刻や移動の開始時刻など、人と関わるタスクにのみ「割り込み」の通知を設定します。
残りのタスクは、結果的に「取り込み」の通知扱いとなるため、焦ることなく、そのままのペースで予定をこなしていけば済みます。通知に邪魔されることがないために、集中して取り組むことができるでしょう。
まとめ
以下は極端な例ですが、すべてのタスクに通知(開始予定時刻)を設定したものです(間違った使い方です)。
この状態で放置すると、以下のように通知が押し寄せてくるので、嫌になるわけです。
「忘れないようにしないと」と思うあまり、「割り込み」の通知をやたらと設定することは、自ら先回りして地雷を埋めておくようなもので、行く先々でいちいち不意打ちを食らって時間とMPのロスを被ることになります。
「割り込み」の通知はここぞというところに絞って仕掛けておくことをおすすめします。
ちなみに、「この順番にやっていけば予定通りに終わる」というリストを作り上げ、このリストに沿って淡々と仕事を進める方法がタスクシュート® です。