親というのは勝手なもので、妻の「ムスメに集中力をつけさせたい」という、私には理解に苦しむ理由でムスメにレゴを買い与えたわけですが、ムスメがあまりにもレゴに集中力を発揮しすぎているため、妻は毎日カリカリです。
その怒りがすべて私にぶつかるのです。これもまた大変理解に苦しむ展開です。
ムスメは最初レゴを買ってきたとき、マニュアルのあまりの厚さにかなり尻込みしていました。
「だから最初からシンデレラ城なんて買わなければいいのに」と私は心の中でつぶやいたのですが、もちろん妻子のどちらにも伝わりませんでした。
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しょうがないので私はムスメに余計なアドバイスをしました。
親のアドバイスというのはいつだって余計なものです。
「最後の完成形を見るのやめた方がいい。説明書も先のページ見るのやめた方がいい。いま作っているところだけをみればいい」
ムスメは私のアドバイスをそっくり受け入れました。
今のところ私の言うことなら何だって聞いてくれます。あと十年もすると、そのことを後悔し、交換日記に私の悪口を書きこみ、受験がうまくいかなさそうになると、なんとかカウンセラーに私の教育のなってなかった事例をあげつらうのでしょうが、今のところ父娘関係は必要以上に良好なのです。
先を見るな!
今回に限っては私のアドバイスは幸運にも功を奏し、買って2日半でシンデレラ城は完成しました。
もちろんこれは5歳にしてはかなり不自然な展開で、寝ても覚めても食事中もおやつ中もテレビを見ていても、レゴのことばっかり考えているからできたことです。
蛇足ですが、買った日には「早くお風呂入りなさい! お風呂に入ったらレゴやっていいから!」といわれると、まさに娘は脱兎のごとく書けだしてお風呂に入りました。
児童心理学者の中には「微妙な」育児法だといいそうなやりかたですが、風呂ぎらいの子を持つ親は児童心理学者になんかかまってられないのです。
ただし、買って二日目には、「お風呂に入った後はもうレゴしちゃダメだからね!」などといわねばならない始末で(寝るのが遅くなる)、まったく児童心理学者はえらいものです。
そんな事を言われたらもう娘は決して風呂に入らないという気分が鉄の意志と化すに決まっていますのに。(こういう現象を経済学者は「コブラ現象」と呼んだのでしたっけ?)
長期計画を進めるコツは俯瞰しないこと
ともあれ、先が長そうだと思ってめげそうなときには、そもそも先の心配をしたり、先の喜びをそれこそ先取りしたりしないことです。
よく、踏み外すと命に関わりそうなところを歩く人に「下を見るな!」とアドバイスするように、長期計画、変わるための習慣、夢に向かってまっしぐら、という状態を維持したい人に声を大にして言いたいことは「先を見るな!」なのです。
5歳児でも「先が長そう、ウェー!」となったらめげます。
大人にとっての「先の長い話」はもっとずっと厄介です。あなたがウチのムスメの100倍の意志の強さ、1000倍の根気、10000倍の能力に満ちているのは当然として、課題の難易度もシンデレラ城を作ることの比ではないのです。
計画における俯瞰の重要性はよく説かれるところではありますが、俯瞰ばかりしていても、プロジェクトは1ミリも前には進みません。
そもそも計画の俯瞰をしているのか、それとも達成を夢想しているのか、本人には区別が難しいものです。
先を見たらダメです。
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— Phil Libin (@plibin) 2015, 3月 5
拙著『Evernote仕事術』の表紙をEvernoteCEOが気に入ってくれたみたいで、こんなびっくりな写真が飛んできました。
Evernote仕事術 | |
佐々木 正悟
東洋経済新報社 2015-01-30 |