- “城壁”を築くことで「ソトの敵」からの攻撃を防ぐことができる
- “城壁”を築く過程で「ウチの敵」を見つけて仕留めることができる
“城壁”には「ソトの敵」からの守りという側面ももちろんあるのですが、実はそれ以上にやっかいな「ウチの敵」対策でもあるのです。「ウチの敵」というのは、一言でいえば「己の弱さ」あるいは「疑う心」。
「ウチの敵」は人の数だけバラエティに富み、それだけにその攻略は一筋縄ではいきません。そういう意味で、勉強とは極めて私的(プライベート)で個人的(パーソナル)なものといえます。
この視点で、以下3冊の「勉強本」を眺めてみると、面白いことに気づきます。
» できる人の勉強法
» 3000人の指導実績を誇る人気No.1カリスマ講師が教える 資格試験の合格技術[Kindle版]
ノミネート3冊のそれぞれの特長
まずは、それぞれの本の輪郭を浮き彫りにするところから。
『できる人の勉強法』──勉強の認識を改めよう
“落ちこぼれ”の生徒も短期間で成績アップへと導いてきた著者が開発した時間対効果の勉強法、やる気を維持する法を初公開!
本書が刊行されたのは2006年12月(奥付より)で、この辺りからいわゆる「勉強本ブーム」が始まります。「勉強法」という言葉の指し示す概念に変化が生じるのです。
それは「限られた人のための特別な手段」から「多くの人にとっての当然の習わし」という変化でした。
Amazon.co.jpで「勉強法」というキーワードで検索し、「出版年月が新しい順番」で並び替えてみると、本書が登場するのは、283冊目(2009/04/27時点)。
以下が「勉強法」がタイトルに含まれる書籍の出版年月が新しい順の一覧です(カッコ内は刊行年月日)。
- 1冊目 『人生を劇的に変える東国原式勉強法』(2009/5/20)
- 2冊目 『脳にいい勉強法』(2009/5/20)
- 10冊目 『マインドマップ資格試験勉強法』(2009/4/15)
- 30冊目 『仕事頭がよくなるアウトプット勉強法』(2009/03/16)
- 98冊目 『いつも目標達成している人の勉強術』(2008/10/7)
- 101冊目 『竹中式マトリクス勉強法』(2008/10)
- 125冊目 『村上式シンプル英語勉強法』(2008/8/1)
- 134冊目 『脳と心を味方につける マインドハックス勉強法』(2008/7/25)
- 138冊目 『「お金を稼ぐ!」勉強法』(2008/7/18)
- 164冊目 『レバレッジ英語勉強法』(2008/4/4)
- 204冊目 『脳を活かす勉強法』(2007/12/4)
- 228冊目 『レバレッジ勉強法』(2007/9/25)
- 265冊目 『無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法』(2007/4/5)
いずれもビジネスパーソン向けの勉強本のうち個人的に印象に残っている(=目についた)本だけを挙げているので、偏りがあることは否めませんが、とにかく2006年以前の勉強本は大学受験か資格試験のそればかりであったところに『できる人の勉強法』が風穴を開けたという構図になっています。
前置きが長くなりましたが、本書の主張を一言にまとめるなら
- 「勉強の認識を改めよう」
です。「勉強」という言葉を耳にするだけでアレルギー反応を示すような状態を打破し、むしろ楽しいものに変えてしまうこと。そうすることで、勉強に取りかかる敷居が下がり、より少ない努力で勉強に向かうことができるようになります。
様々な方法論が紹介されていますが、いずれも勉強というものにこびりついたネガティブなイメージを払拭するためのものばかりです。言い換えれば、勉強に対するスタンスが変わらない限りは、紹介されている方法論をいくら試しても効果は望めない、とも。
“城壁”の作り方を見た目だけなぞっても、「ウチの敵」を放置していれば、いずれ内部崩壊してしまうでしょう。
『仕事頭がよくなるアウトプット勉強法』──「貯める」勉強から「使う」勉強へ
以前、次のようなことを書きました。
でも、こうは考えられないでしょうか。
- お金が手元にないのは、それを使う用途がないからであって、貯め方を知らないからではない
と。
使う用途があれば、人はどうにかしてお金を工面し、必要ならば貯めもするはずです。
「お金」を「知識」とか「経験」に置き換えても、意味が通るでしょう。
すなわち、
- 知識が手元にないのは、それを使う用途がないからであって、勉強法(貯め方)を知らないからではない
まず、用途ありきなのです。勉強ということでいえば、目指す成果がまずあって、そこにたどり着くための手段としての知識や経験があり、知識や経験をドライブして成果に持っていく行為が勉強、というわけです。
そうなると、勉強法というものは単体で成立しうるものではなく、カーナビのように現在地と目的地の両方があって初めて明らかになるものだといえます。
“城壁”を作るにしても、どこからどこまでの範囲を囲めばいいのか、どれだけの高さなら大丈夫なのか、厚さはどうなのか、といったスペックが決まらなければ工事を始められません。“城壁”を作る方法がわかっても、作る意義や大義がわからなければ着工できず、もたもたしているうちに「ソトの敵」の来襲によって駆逐されてしまうでしょう。
『資格試験の合格技術』──時間の主導権を勝ち取る
ところで、ビジネスパーソンにとって最も価値のあるリソースは何でしょうか?
それは、時間です。
目的地までの距離が明らかになったとしても、目指す時刻までに走破できなければ、すべての努力は無に帰します。このことは、資格試験や大学受験においては誰もが経験し、痛感しているところでしょう。
であるがゆえに、受験日までに合格最低点より1点でも高い点数を取れる状態を実現できさえすればいい、と主張する人も少なからずいます。
『資格試験の合格技術』で紹介されている方法論は、すべてある一点に向かって収斂しています。その一点とは「時間の壁」。
できない人の時間にまつわる言い訳はたくさんあるものです。
「仕事さえなければもっと勉強時間を確保できた」「家族サービスに時間を取られた」「育児に追われて大変」「本試験日をもう1ヶ月遅らせてくれたら合格する自信があった」「試験時間があと5分あれば最後まで解答できた」・・・。挙げ句の果てには、「ちょっとくらい勉強しても変わらないし」といった開き直りのような言い訳もあります。
その気持ちはわからないでもないのですが、時間のせいにしていては何も始まりません。試験を受けると決めた以上は、時間に対する意識を高めて、自らの力で時間を支配するべきなのです。
時間を支配するべきなのは、資格試験を受ける人だけに限った話ではありません。
仕事には期限がつきものですから、限られた時間の中で求められる成果を上げようとすれば、必然的にスピードの勝負になります。スピードとは「距離÷時間」ですから、距離(求められる成果)が不変であれば、時間を短くしていくしかありません。
「資格試験の勉強」という、限定された条件の下でのチャレンジになりますが、これは言ってみればスポーツジムでマシントレーニングをするのに似ています。すなわち、現実世界にあるさまざまなノイズや例外事項を取り払って、原理原則に沿った身体の動かし方を身につけること。
そうすることで、基本となるフォームが固まりますから、これを土台に頑強な“城壁”を築いていくことができます。
とにかく急いで作らなければならない、ということで急ごしらえで作った“城壁”では、「ソトの敵」に簡単に突破されてしまいます。そもそも、そのような地に足の着かないやり方では、戦いにすらならないでしょう。
まとめ
ところで、冒頭で予告した「面白いこと」とは何だったか?
その前に、繰り返し登場した“城壁”という言葉の意味を確認しておきます。というか、今回“城壁”と呼んでいるところのもの、それ自体には意味はありません。敵と対峙するときに「防備」の意味が生じたり、使ったり失ったりする過程でその価値が見いだされたりするだけです。
つまり、使ってみて初めて意味の“明かり”が灯るのです。
その中の一節。
そして私は、その「ひとつ」を見つけた。人並み外れた成功者たちのすべてが、ほかのどの成功の秘訣よりも、普遍的に共有し、頼りにしているたったひとつの「成功の極意」である。そして、本書を読むどんな人でも、この極意を発見し、受け入れ、理解し、もっとも重要であると思って重点的に取り組めば、直ちに信じられないほど画期的な人生を切り拓くことができる──ここにポイントがある。
少々アゲアゲすぎな感は否めませんが、多くの人が「その極意とやらを是非教えてくれ!」という前のめりな気持ちにさせられるでしょう。
でも、著者はもったいぶります。「名刺サイズのカードにその極意なるものを書き出すことだってできる」とさえ言っているのにも関わらず。
そこには、やはり、理由があります。そして、その理由を述べたうえでさらに続けます。
実際、これまで「これがそうですよ」と教えてあげた人たちは、あまり有効活用できていない。逆に、何とか自力で探り当てた人たちは、「これは本当に大事なことだ」と信じるだけではなく、実際に大いに役立てているようなのだ。そこで、読者のみなさんには、この極意をぜひ自力で見つけてほしい。「それ」は本書のあちこちで、あなたに発見されるのを待っている。
「極意」への期待が最高潮に達しますが、まぁ、それはさておき、この「極意」こそが実は“城壁”です。
「極意」とは方法論なのです。それを誰かから聞いたり教えてもらったりしても、有効活用することはできず、自ら探り当てなければならない、という特長は、まさに私的で個人的な「勉強法」そのものです。
「勉強法」は電気回路のようなもので、行動という電気を流して初めて成果という“明かり”が灯るのです。
ということで、勉強本を読む時には、自分の状況に照らしながら、以下の問いを用意しておくといいでしょう。
- 改めるべきは何か?
- 目的地はどこか?
- 残り時間はいかほどか?
これらの問いを念頭に勉強本に臨むことで、今のあなたに最適な“城壁”を築くヒントが得られると同時に、それがあなたにとっての「極意」となるはずです。
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本書もある意味では「勉強本」ですね。
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