アイデアを腐らせないメモの貯蔵法


Twitterか何かで、「メモなんかするな。メモしたアイデアは、その瞬間から腐り始める」という発言を見かけました。なるほど、なかなかうまい表現です。適切な比喩、とすら言えるでしょう。

しかし、後者の意見に頷けるからといって、前者まで同意できるわけではありません。

「たくさんメモしたけど、結局何の役にも立たなかったな」

という状況の原因は、メモにあるわけではなく、むしろその貯蔵法にあるからです。


お酒の貯蔵法

お酒を寝かせる__つまり発酵させる場合、「そのまま放置しておく」ということはしないはずです。

気温や湿度を調整したり、ときおり中身を撹拌したり、その他もろもろの「メンテナンス」を実施するからこそ、適度な「発酵具合」が維持できます。

そうした手間を省いてしまえば、発酵が進みすぎて酸味が出てきてしまい、最終的に「腐って」しまいます。そうなってしまえば、使いもの__売りもの__にはなりません。

これと同じようなことがメモにも言えます。

骨太のアイデアに近づく

メモが役に立たないのは、書いたメモを見返さないからです。

時間が経てば経つほど、アイデアを思いついたときの、「全体感」「情熱」「意義」「関心」が薄れていきます。それが一定のレベルを超えれば、メモはタダの「ゴミ」に変身します。

それを阻止するためには、定期的に自分が書いたメモを見返すことです。内容を想起し、追記し、補強し、転換し、発展させることです。少しずつでもそれを続けていけば、アイデアを腐らせることはありません。むしろ、豊かで、骨太のアイデアに近づいていくでしょう。少なくとも、「その場の思いつき」だけではないアイデアが生み出せるはずです。

もちろん、そのアイデアが骨太さよりも、速度に重きを置かれるものならば、即実行に移した方がよいかもしれません。種類によってお酒の管理方法が違うように、アイデアだって扱い方が違うのです。


見返すためには?

仕事であるお酒の醸造とは違って、アイデアの管理は誰からも促されません。メモを見返すには、何かしらの工夫が必要でしょう。次の3つの方法が考えられます。

紙のメモ帳(ミニノート)を使っている場合は、過去のメモの見返しは簡単でしょう。デジタルであったり、ちぎり取るタイプのメモであれば、別の方法が良さそうです。

もし「週次レビュー」を実施されているのなら、二つ目の方法は簡単ですね。チェックリストに「アイデアメモを見返す」の項目を追加すれば済みます。

三つ目の方法は、普段使っている手帳やノート、デスクトップの周辺など、一日に一度以上は目を通す場にメモを置いておく方法です。ちぎり取るタイプのメモであれば、箱やビンにメモを入れておき、そこから何枚か取り出して見返す、なんてやり方にすればゲーム感覚で楽しめるかもしれません。

さいごに

こうした方法は、面倒そうに感じられます。少なくとも手間がかかることは確かでしょう。

しかし、「発想の扱い方」は元々手間が掛かるものなのです。一部の天才は、そういう手間を一切無視できるのかもしれませんが、普通の頭脳の持ち主がそのマネをするのは止めたほうがよいでしょう。

ちなみに、放置されたアイデアは「ゴミ」に変わると書きましたが、ビッグデータとそれに関連する技術がその「ゴミ」を宝の山に変えてくれる可能性があります。

メモを__あるいは諸々の記録を__残していく価値は、今の私たちには測れないのかもしれません。

▼今週の一冊:

全体を通して、「あぁ、哲学者さんの書いた本だな〜」という感じが伝わってくる一冊です。
※私の哲学者に対するイメージはかなり偏ったものかもしれませんが。

社会になじめない人が、まったく社会性を放棄するわけでもなく、かといって自分の何かを全て捨ててしまうでもなく、バランスをとって社会性を維持していく。それを非社交的社交性と呼びうるのかもしれません。

「いかにして(この社会で)生きていくのか」

普通に社会になじめる人からすれば、バカみたいな話かもしれませんが、そうでない人にとっては、切実な問いです。時に、その問いから目を背けるために、哲学に没頭してしまう人もいるのでしょう。哲学の魅力的な問いに没頭している間は、「(自分が)いかに生きていくのか」という実践的な問題を考えなくても済みます。それは、逃げられないギリギリの瞬間までは、ある種の楽園として機能します。

本書の後半で、著者が開催する塾に通う「変わった若者」のエピソードがいくつも紹介されていますが、きっと塾内だけの話ではないのでしょう。


▼編集後記:




なにやら知らない間に7月に突入してしまった気分です。一年のもう半分が終わった、ということですね。こういうタイミングで、今年読んだ本を読み返してみるのも面白そうです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。



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