スターバックスコーヒーでは、行動という部分を全員がきちんとおさえ、それから考え方のマニュアルを提供しているのでしょう。基本を押さえ、基本部分では行動のマニュアルという教科書で仕事をマスターするのです。そして、現場では「お客様をもてなす心」を第一に、基礎をベースに「その瞬間」を考えて動いていくのです。これは、自分自身で応用問題を解いていることになるのです。
分かっていてもなかなか手を着けられないのが仕事の標準化。
僕自身、最初はエンジニアとしてキャリアをスタートしたこともあり、標準化とはすなわちルーチン化であるという考え方がしみついています。
よく使う定型的な処理をサブルーチン(プログラムの部品)として独立させて、使い回しができるようにすることで、次回以降に同じような処理を持つプログラムを作る時に大いに役に立ちます。
これは、ちょうど週末にまとめて作ったブラウンソースやネギの千切りを冷凍しておいて、忙しい平日にレンジでチンして料理の時短を図るのに似ています。ブラウンソースやネギの千切りがサブルーチンというわけです。
仕事においては、手順書やチェックリストによって構成されたマニュアルがサブルーチンの役割を果たすでしょう。慣れ親しんだ、分かりきっている仕事であっても、手順書があることで間違いやモレのない仕事ができますし、チェックリストを駆使することで、品質を上げることができます。
以上のことは、頭ではよくわかっているはずのことなのですが、いざ手順書やチェックリストを作ろうと思うと、これが非常に手強い。
・今すぐやらなくても特に困らない
・やったからといって誰も褒めてくれない
・なんか面倒くさい
…といった言い訳が先に立ってしまうのです。
いっそマニュアルを作るためのマニュアルがあればいいのに、と思っていたら、すでにありました。
『仕事と組織は、マニュアルで動かそう』がそのマニュアル・マニュアルです。
マニュアルづくりで押さえておきたい5つのポイント
- 利用目的が明確である
- 評価基準がハッキリとしている
- 誰が読んでも理解できる
- 一つ一つの手順が具体的で、体系的にまとまっている
- 見直してみる
1.利用目的が明確である
作ろうとしているマニュアルは、
- どういう場合に
- 誰が
- 何のために
必要とするものなのかを明示しているか?
2.評価基準がハッキリとしている
作ろうとしているマニュアルは、
- 当該作業をどう達成すれば「できた」「完了」と言えるのか
を明示しているか?
3.誰が読んでも理解できる
作ろうとしているマニュアルは、
- 誰が読んでも理解できる
ような普遍性を持っているか?
4.一つ一つの手順が具体的で、体系的にまとまっている
作ろうとしているマニュアルは、
- 実際の手順通りに作業が列挙されているか?
- 段階を追って記述されているか?
5.見直してみる
作ってみたマニュアルを
- 一度じっくりと読み直したか?
- そのマニュアルで自分がいつも行っている業務が再現されるか?
非常に簡単な紹介でしたが、このように質問形式でまとめることで、チェックリストになります(以下参考)。
まとめ
本書のタイトルにも「組織」という言葉があるとおり、マニュアルというと「チームのためのものでしょ」というイメージがあります。僕自身もそう思います。でも、冒頭でも書いた通り、一人で仕事をしていても、マニュアルがあると間違いやモレをなくすことができます。
そういう意味では、一人で仕事をしている人にも役に立つ一冊といえます。著者もそのあたりは心得ているようで、「自分をマニュアルで動かそう」という章(第6章)を立てて解説しているくらいです。
ピカソも最初は緻密なデッサンというマニュアルから入って、そして飛び出しました。マニュアルのない仕事は、ブラウンソースのないビーフシチューのようなもの。
コクのある仕事を目指しているなら、あるいは部下にコクのある仕事をさせたいのなら、本書は格好のソースになるでしょう。