この本のタイトルには本当に悩みました。
最近の「○○力」ブームに乗って、表紙に大きくシンプルに、「自考力」「自軸力」「別解力」「自信力」と打ち出すか。
あるいは、「情報氾濫社会に飲み込まれない生き方」「自分主義のつくり方」という候補も…。う~ん、でも、いまひとつインパクトに乏しい。
新書っぽく、皮肉を込めて「成功法則セミナーに行く人はなぜ成功できないのか?」──なんていう案も考えていました。
結局、度重なるディスカッションの末に決定したのが、この『「自分力」を鍛える』でした。
おそらく著者自身もさほどしっくりとは来ていないのだと想像していますが、それはともかく著者が「自分力」という言葉に込めた意図は上記に引用した数行の中に盛り込まれています。
現時点では、これらすべてを包含する概念を指し示す言葉がまだないのです。
そんな『「自分力」を鍛える』ですが、個人的には『千円札は拾うな』を彷彿とさせる一冊でした。つまり、パワフルに行動に駆り立ててくれるのです。
うまくまとめきれなかったので、ぐっと来たところを中心にご紹介。
成功にノウハウはない。これこそが確実な「法則」です。
新しいビジネスアイデアが突然降ってくることもないし、人に言われたとおりに投資して儲かるというようなウマい話も、古今東西、どこを探してもありはしません。成功しようと思うなら、自分なりのスタイルで地道に行動を起こしていく以外、方法はないのです。
「そんなこと言っても、何か方法はあるんでしょ?」という期待感から先を読み進めてしまいます。
すると目に入ってくるのが次の見出し。
目の前のことをちゃんとやる
でも、「そんなことを言っても、それで何になるというのか」という不安がよぎります。
それに対しては、
地道で愚直な経験の蓄積は、人を成長させていきます。ちゃんと仕事をしていると、きちんとステップアップができるのです。
とのアドバイス。
限界の先にこそ成長がある
われわれはストレスから逃げることはできません。日常的に生活していれば、多かれ少なかれストレスの影響を受けるものです。ストレスに耐え、これをはね返そうと頑張るからこそ、人は鍛えられ、成長していくのです。
ストレスから逃げても、人生に追いつかれる、ということですね。
さらに言えば、ノウハウを追わない、ストレスから逃げない、ことも銘記しておきたいと思います。
受け身でいるから腹が立つ
人間関係で悩む人の特徴は、受身であることです。受身でいるから、上司や同僚、取引先の相性が良くない担当者に、自我の発揮を阻害されている、という被害者意識を持つのです。
自分の意思を確立している人、つまり「自分力」をもっている人は、自分を妨げる問題があると感じたら、くよくよ悩む前に、問題を取り除く工夫や努力をします。会社から逃げ出すのではなく、会社に変化を起こそうとします。
そういえば、斎藤一人さんも「すぐ怒るやつは馬鹿だ。この言葉を世界に広げよう」と言っています(「今日の言葉」より;ランダムに表示されるので該当の言葉とは限りません)。さらに、「怒りたくなったら最低3日間考えて、それでも腹が立っていたら怒れ」というようなことを書かれています。
会社は何も教えてくれない
「会社」は別の言葉に置き換えてもいいかもしれません。
自分がわからないことにはすべてちゃんとノウハウがあり、それさえ教わってしまえば事足りると思い込んでいるのです。自分で考えるという意識が低いのです。
(中略)
モチベーションさえあれば、回答やノウハウを人に与えてもらおうなどと思わないし、マニュアルがないからといって悩みません。
自分にとって最も効果的と思われる方法を自分で探し、自分でつくり出していけるはずなのです。
「では、どうすればモチベーションを上げられますか?」という質問をしたくなった人は是非本書を読んでみてください、答えは書いてありませんがヒントは得られるでしょう。
個人的にはノウハウが不要な分野に出て行くべきだと思っています。なぜならノウハウが必要ということは、ノウハウが確立しているということであり、その分野に関する相応の試行錯誤や研究がすでにされ尽くしているということですから、これからそこで実績を出そうと思えば、一番になるのはたいへん難しいからです。
このあたりについては『一番になる人』が直球で解説していますね。
「相対的な人間」は、「具体的な情報」が大好き
みんなが「夢をもて」というから、夢をもたなければいけないとあせってしまう。「目標がない人間は成功できない」と本に書いてあるから、目標をもっていない自分を嫌悪してしまう。
これらの悩みは、「相対の絶対化」によって発生しているのです。
人は、自分という「絶対」をもち、それを基準に物事を「相対化」しておらえながら行動していかなければなりません。
ところが、いまの日本には、世の中や他人を「絶対化」してしまい、これに自分を合わせて「相対的」に生きている人がたくさんいるのです。
そうした「相対的人間」は、具体的な情報が大好きという特徴をもっています。
商談のときは相手の目を何秒見ればいいのか、手帳はどう使えばいいのかなど、人からもらった小さなパーツをいっぱい集めれば、「成功」というジグソーパズルが完成すると勘違いしているのです。
この点は、Steve Jobsのスピーチにおける「自分の直感に従う勇気を持て!」というアドバイスに通じます。
未聴の方は是非こちらの英語版をおすすめします。
「恥と経験」が直感を磨く
「幸せになるための法則」「成功するための法則」がもしあるとすれば、それはただひとつ、「執拗な愚直さをもって地道に行動を重ねていくこと」です。
これを読んで思い出すのは、矢沢永吉さんの次の言葉。
1回目、散々な目に遭う。
2回目、落としまえをつける。
3回目、余裕
まとめ
今回ご紹介したのは、『「自分力」を鍛える』の前半部分のみ。後半にもまだまだご紹介したい「響く言葉」がたくさんあるのですが、自粛します。
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