思い出しやすい記憶を作る、二冊の「まとめノート」法

By: Dan FoyCC BY 2.0


築山節氏の『脳が冴える勉強法』に面白いノート法が紹介されていました。


思い出しやすい記憶を作るためのノート法、として紹介されています。講義の内容を自分の頭に定着させるための方法と言い換えても良いでしょう。

今回はこのノート法を紹介してみます。

準備するもの

準備するものは一つの対象に二冊のノート。

私は、一科目につき二冊のノートを用意していました。一冊は清書用、もう一冊は、講義の内容を記録したり、まとめに至るまでの過程を書き留めておいたりするノートです。

清書用のノートを「まとめノート」、もう一冊のノートを「まとめ準備ノート」と築山氏は呼んでいるそうです。

さて、ノートを二冊準備したところで、実際にそれぞれのノートには何を書いていくのでしょうか。

まとめ準備ノート

まずは、「まとめ準備ノート」から。

「まとめ準備ノート」と言えば、聞こえは良いですが、ぱっと見はほとんど雑記帳です。講義の内容をメモしたページがあったり、思考の過程を走り書きしたページがあったり、頭に思い浮かんだ図を描いたページがあったりする。

つまり、普段使いの「ノート」というわけですね。

書き方のポイントとしては「その科目に関することなら、何でも、どんな風にでも書いていい」という雑記帳スタイルが推奨されています。

このスタイルは、私の「アイデアノート」とまったく同じです。丁寧さよりは、いかにささっと鮮度良く自分の思考を書き留められるかに重点が置かれています。
※このあたりは拙著『クラウド時代のハイブリッド手帳術』も参考にどうぞ。

ちなみに、この「まとめ準備ノート」の作成は

  1. 講義の内容のメモ
  2. 講義メモから大まかな内容を再現
  3. 講義や教科書の内容の解釈を進める

という手順で進むようです。詳しい内容については本書を直接参照してください。

まとめノート

こうして「まとめ準備ノート」を書きためていくと、試験の日が近づいてきます。そこで登場するのが「まとめノート」。しかし、いきなりノートに清書する、というわけではないようです。

試験期の一ヶ月前になると、改めて「まとめ準備ノート」を見直し、一項目ずつ「つまり、どういうことか」を自分の言葉で説明できるか、しゃべったり、走り書きしながら確かめていきました。

こういう段階を経て、自分なりに納得感を得られてから、「まとめノート」に清書していく。そういう流れのようです。

つまり、「まとめノート」を作成していきながら内容をまとめるのではく、さまざまな過程を経て頭の中で整理された内容を「まとめノート」の形に出力していく、ということです。

結局のところ、「まとめノート」作成は確認作業でしかありません。何の確認かというと、自分が理解したことの確認です。

試験前に「まとめノート」を貸してしまっても、私としては困ることはありません。それをつくる過程で、内容は概ね自分の知識体系に組み込まれているからです。

ここが重要なポイントです。

おそらく「まとめノート」はずいぶんと見やすく、わかりやすいノートになっているでしょう。試験前に人が借りにくる、というエピソードからもそれはうかがい知れます。

そういう綺麗で丁寧にまとめられているノートを見て、「あんなノートが作れれば、さぞかし勉強がはかどるだろうな」なんて考えがちですが、まったく的外れです。

「まとめ準備ノート」作成はかなり泥臭い作業になります。メモして終わりではなく、それを復習したり、自分なりに解釈を進めるといった手間をかけます。理解するために一つ一つ自分の手を使い、頭を動かしていくわけです。当然時間も使うでしょう。スマートな暗記法とは縁遠い場所に位置しています。

そういう泥臭い理解の過程があって、綺麗なノートが作り出されているわけです。

言い換えれば、綺麗なノートがあるから理解が進むのではなく、理解が進んでいるから綺麗なノートが作れるということです。

だから、理解の過程をすっ飛ばして、綺麗なノートを作ることを目指してもあんまり意味はありません。

ちなみに、著者は「まとめノート」を作成する際に「必ず自分なりの言葉でまとめる」というのを大切にしておられたようです。これはノート術でもよく言われているポイントです。本書では脳科学的な知見からその意義が3点紹介されてますので、気になる方は本書を確認してみてください。

おわりに

以上のようにノートを二段階に分けて、理解を深めていくのがこのノート法です。メモで終わるのでもなく、綺麗にまとめるだけでもない、というのがポイントでしょうか。

以前のエントリーで外科医の山本晋さんのノート法を紹介しました。あちらはどちらかというと「技術」を頭にたたき込むためのノート法でしたが、構造的には似たようなノート法になっています。脳に定着させる方法には共通の要素があるということでしょう。

どちらのノート法も、単に情報を頭に入れるというのではなく、自分の血肉する、ことが目的です。知識の場合であれば人に説明できる、技術であれば自分で実行できる、というのが血肉になっている状態です。

当たり前ですが、自分が接する情報すべてにこのような「ノート法」を使っていたのでは時間はあっという間に無くなってしまいます。

講義&試験のように、何を理解すべきかが示されている場合ならばよいのですが、そうでなければ「自分に必要な情報や知識はなんなのか」を見極めることも必要になってくるでしょう。

▼参考文献:


同じ著者の本です。どのようなことを意識して生活すれば、脳がよりよく機能してくれるのかが紹介されています。実はこの本にも「失敗ノート」というノート法が紹介されています。これについてはまた別エントリーで紹介します。


いろいろなテーマについて書いてありますが、メモのの取り方についても参考になるかもしれません。

▼関連エントリー:

体験の経験値を引き上げる「手術ノート」  

▼編集後記:




紹介した本を読んでいて思ったんですが、「本を書く作業」って、「まとめノートを作成する作業」とうり二つなんですよね。理解したことを書く、というのではなく、書きながら理解していく。で、その清書が一冊の「本」という感じ。なので、本を書くというのはこれ以上ない「勉強法」です。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


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