「仕事をしたつもリーマン」からの脱却を提案する海老原嗣生さんの『仕事をしたつもり』という本があります。
その中で著者の読書法が紹介されていました。その名も「ケンカ読法」。一体どんな方法なのでしょうか。
「ケンカ読法」とは?
「ケンカ読法」は、本の執筆者相手に討論するような読書法です。本書の著者は、読書を次のように定義しています。
そう、私は読書とは、著者相手にイチャモンをつけながら進める行為と考え、それを実践しています。
なぜ、そのような行為が必要なのか。それは読書の目的に遡る必要があります。
ビジネス書などの実用書は小説のように単に読むことが目的ではありません。書いてある内容を理解し、実際のビジネスシーンで役立てることが目的です。そのため、スラスラと読み進めて、はいお終い、というのでは「読んだつもり」にしかなりません。
では、どうすれば「読んだつもり」にならないのかというと、
わかったフリをせず、少しでも疑問や違和感を感じるところがあれば立ち止まり、著者の立場に立って「何が言いたいのか?」「何を言おうとしているのか?」とじっくり考える。
という行為が必要だと著者は指摘します。
それを実践するための方法が「ケンカ読法」というわけです。
実際の方法
詳しいやり方は本書に直接当たってもらうとして、簡単にその方法を紹介しておきます。
- 本と自分が対話するように読書を進める
- わからない言葉や納得いかない部分があれば「短くマーク」する
- 納得いかない部分について自分なりに答えをだす
- 考えても答えがでない場合は、とりあえず先に進みながらその答えの手がかりを探す
- その際「未解決」の部分があるページは下端を折っておき、後で参照できるようにする
読み進めながら、納得いかない部分にチェックを入れ、自分なりの答えを出し、出せないならば本を読み進めながら手がかりを探していく、ということです。
本書では、書いてある内容を鵜呑みにせず、自分なりの疑問を提示することを「イチャモンをつける」と表現し、そこから「ケンカ読法」というネーミングが当てられています。なかなかインパクトのある名前ですね。
ただし、重要なことが一つあります。
それは、そのイチャモンに対して、今度は著者の立場に立って、説明や反論を行うという行為です。
おそらく、少し意識すれば「イチャモン」をつけることは簡単にできます。そこから次の一歩に進めるかどうかが「読書」と「読書をしたつもり」の分かれ目になりそうです。
著者も人間ですから
もし、その本の著者と実際に話しているならば、仮に難しい言葉が出てきても「それってどういう意味ですか?」と尋ねることができます。そうすれば、「あぁ、それはね…」とわかりやすい言葉に置き換えてくれるでしょう。あるいは比喩を用いてイメージを説明してくれるかもしれません。
また、話の中で理解できない部分が出てきた場合でも、「これはこういう考え方なんだよ」とか「それは、もうちょっと後の方で詳しく説明するから」と教えてくれるかもしれません。
こういう環境であれば、一歩一歩理解を進めていくことができるでしょう。
しかしながら、読書ではそうはいきません。その部分は一人二役__読んで疑問を持っている自分と、それを説明しようとしている著者の立場__で対応する必要があります。
著者も人間ですから、うっかり難しい言葉を使ったり、ちょっと説明不足な部分も出てきます。あるいは根本的な勘違いがないとも言えません。それを、「なんとなくそんなもんか」という考えで受け入れてしまうのは、「理解」したとは言えないでしょう。
この「なんとなくそんなもんか」と「理解」は簡単にチェックできます。自分で他の人にそれをきちんと説明できれば「理解」、あやふや部分が出てくれば「なんとなくそんなもんか」です。
その「なんとなくそんなもんか」にならないためにも、まず自分で疑問を持ち、さらにそれを自分自身で説明できるようにする、というのがポイントになってきます。
さいごに
ちなみに、本書のタイトルでもある「仕事をしたつもり」とは
- けっこう一生懸命、仕事をしている
- まわりもそれを認めていて、非難するひとはいない
- 本人はその行為にまったく疑問を持っていない
- しかし、成果はほとんど出ていない
という状況を指すようです。
なかなか耳の痛い話ですが、この「仕事」の部分を「読書」に読み替えても通じる部分を見つけられそうです。つまり、たくさん本を読んでいるけど、成果が上がっていないという「読書をしたつもり」です。
次々と新しいビジネス書を読みふけっているけれども、あまり成果が感じられない人は、読書の方法自体を変えてみるのが良いかもしれません。
▼今週の一冊:
シゴタノ!「メンドウ無用のデジタルライフ」でおなじみの五藤さんのライフログ本です。
Evernoteにだいたい何でも投げ込んじゃいなよ、というテーマの本。単純なテクニックだけではなく、そもそも「ライフログって何が楽しいの?」という点もフォローされています。
Evernoteの登場で、個人と記録の関係性が変わりつつあります。1万枚の情報カードを持たなくても、手軽に自分についての記録を残すことができるようになりました。現代を生きる私たちは、一度「記録」が持つ価値について考え直す必要が出てきたのではないでしょうか。
たくさんの記録を残し、その効果を感じておられる五藤さんの著書は、その足かがりになるかもしれません。
Follow @rashita2
最近ブロガーさんの本が沢山出ていますね。というか私もそうなんですが。
出版がそれほど高いハードルではなくなってきたというのは、無名の個人が活躍する場が出てきたとして好意的に捉えられる面もありますが、じゃあその中でどうやって差別化するのか、という難しい問題もまた提起しているように思われます。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
PDF: 226ページ