チームの力を最大化させたいリーダーが学ぶべき「質問会議」という手法

カテゴリー: 書評

あなたが所属するチームのリーダーはチームの力を最大限に引き出せているでしょうか?
あなた自身がリーダーということであれば、それは自明のはず。

もし、引き出せていないとすれば、その方法を知らないだけかもしれません。

『質問会議 なぜ質問だけの会議で生産性が上がるのか?』は、そのための方法である「質問会議」について詳しく解説した一冊。

「質問会議」のベースである「アクションラーニング」というメソッドは、GE、モトローラ、ボーイング、IBMといった企業で導入されており、日本では「質問会議」という名前でトヨタ自動車、NEC、富士ゼロックスなどの企業で管理職研修に取り入れられているといいます。

「質問会議」の出発点は以下の課題意識。

いま必要なリーダーシップとは、解決策をチームメンバーから引き出すことのできる力です。リーダーは自ら答えをもたなくとも、メンバーが答えを発見できるような場や雰囲気をつくり出す必要があります。(p.38)

チームの力を最大限に引き出す力をリーダーに宿らせるのが「質問会議」というメソッドの目指すところといえます。

質問会議の8つのポイント

 1.参加者とその役割
 2.ALコーチの設定
 3.時間とその配分
 4.基本ルール<質問中心>
 5.基本ルール<振り返りとALコーチ>
 6.現実の問題<本当に困っている等身大の問題を扱う>
 7.行動計画と実施
 8.成長と変化に対する意識づけ

それぞれについて詳しく紹介したいところですが、長くなりそうなので以下の3つに絞ります。

 1.参加者とその役割
 2.ALコーチの設定
 5.基本ルール<振り返りとALコーチ>

1.参加者とその役割

・4〜8人が適当
・参加者の3つの役割
 1.問題提示者(会議における問題や課題を提示する)
 2.問題提示者以外のチームメンバー
 3.ALコーチ(質問会議のファシリテーター)
・参加者は全員平等な関係性
・多様性のあるメンバー構成がベター

2.ALコーチの設定

・ALコーチの「AL」とは「アクションラーニング」の略。その役割としては次の4点が求められる。
 1.問題解決に直接関与しない
 2.結果を導くより、プロセスを管理する
 3.みんなが考える時間、振り返りの時間を提供する
 4.会議進行と時間の管理をする

ポイントは以下の一文に集約できるでしょう。

ALコーチに求められるのは、チームが信頼を基盤に、円滑なコミュニケーションとチームワークをはかれる場や雰囲気をつくる知恵を備えていることです。自ら問題の解決策を提示するのではなく、チームが一緒に考え、行動することを促進し、メンバーみんなでそれができる場をつくることが役割です。(p.50)

5.基本ルール<振り返りとALコーチ>

質問会議では、いま、どのプロセスにいて、何をしているのか、何が起こっているのかが明解です。それは会議の途中でALコーチがストップをかけ、「振り返り」の時間をとるからです。実は、この「振り返り」が、失敗を回避する、または成功を再生産することのカギになる力です。(p.56)

ここが質問会議のハイライトではないかと個人的には思えるのですが、本書の3章では実際の質問会議の様子を模した「質問会議でもセッション」(事例)が展開されており、その中で「振り返り」のパワーを垣間見ることができます。

「リーダーの仕事はチーム脳を出現させること」

以上のことから、質問会議においてはALコーチの役割がとりわけ重要なことがわかります。この役割はリーダーが担うわけですが、彼(彼女)がALコーチという役割を通して実現させようとしていることは何でしょうか?

チームリーダーの仕事はチームとしての思考力を上げることです。
これを私は「チーム脳を出現させること」と考えています。
一つの問題を見る場合でも、個人が見る場合とチームが見る場合では違います。複数の人がいると多様性が出ます。(p.136)

この点について非常に明解に説明してくれるのが次の4つの比較です。

 1.自問自答(自分で質問し、自分が答える)
 2.他問自答(他人が質問し、自分が答える)
 3.自問他答(自分が質問し、他人が答える)
 4.チーム問チーム答(チームが質問し、チームが答える)

このうち、2の他問自答や4のチーム問チーム答を通して、思考の枠を広げ、チーム脳(=多様化した複数の思考プロセスの集積)を実現することを目指すのが質問会議、とまとめることができそうです。

人は質問されると、瞬時に考えます。まるでスイッチが入ったように、脳というマシーンがくるくると動きだすのです。非常におもしろいと思いませんか。質問者は、相手の脳を遠隔操作でもするかのようにスイッチを入れることができるのです。

実は質問とは相手の脳を働かせるスイッチです。(p.139)

本書を読みながら思い浮かべていたイメージは、石を氷上に滑らせるカーリングというウィンタースポーツ。リーダーの役割は、石を直接動かすことではなく、石があるべきゴールを目指してスムーズに滑っていくようにブラシで氷面を掃く(スウィープする)ことではないでしょうか。

このように考えると、「質問会議」におけるALコーチの役割である「自ら問題の解決策を提示するのではなく、チームが一緒に考え、行動することを促進し、メンバーみんなでそれができる場をつくること」の意味が浮かび上がってきます。

チームの力を最大限に引き出すためにすべきことは、「チームの場」を滑らかにすること。『質問会議 なぜ質問だけの会議で生産性が上がるのか?』は、そのための方法を教えてくれます。

「質問」つながりで、以下の一冊も同じ方向性を指し示しています。

質問をするときには、相手が答えやすい具体的な質問やクローズドクエスチョンから入っていくのがセオリーである。答えやすい質問に答えているうちに、だんだんと相手の中でそのテーマに関する意識が明確化され、抽象的な質問にも答えられる準備が整う。またコンサルタントの側も「この人はこんな考え方の持ち主なんだな」「知識や情報量はこのレベルだな」という相手の人間像が見えてくる。つまり仮説が立てられるわけだ。(p.116)

「相手が答えやすい具体的な質問やクローズドクエスチョン」がブラシになっているわけです。

▼次にすること:
・自分の所属するチームの「場」はリーダーによって滑らかに保たれているかを確かめる。

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