どっちかというと会社組織で働くのは苦手なんです。でも、チームで何かをやるのは好きなんですよね。
携帯向け広告事業を展開するシリウステクノロジーズ。同社のラボ「シリウスラボ」で所長を務める関治之(せき・はるゆき)さんとランチしてきました。
関さんとは、2005/11/21のRTCカンファレンスという勉強会で知り合って以来のおつきあいです。関さんは一言でいえば後輩の面倒見の良い「兄貴」という印象。僕から見て、是非真似たいと思える要素を挙げるとするなら(というよりたくさんありすぎるので3つに絞ると)、以下。
1.自然体(ムリがない)
2.朗らか(ムリがない)
3.社交的(ムリがない)
いずれも僕が持ち合わせていないものばかりです。できる限りの自然体を目指し、努めて朗らかに振る舞い、人付き合いが苦手なのを押して社交に挑む、という「ムリ」しかない僕の対極なのです。
そんな関さんですが、今回は1.の「自然体」について僕なりに学ばせてもらったところをご紹介できれば、と思います。
自分の立ち位置を見極める
関さんが今の会社に移ったのは2年前。常に最先端を追いかける姿勢を買われ、入社当初から「先端技術開発部 部長」という肩書でジョイン、ラボを任されます。
同社の宮澤社長はラボの意義を次のように説明しています。
» “生の喜び”奏で続け辿り着いた、「輝く星」という名のメロディ(最終回:宮澤弦) – VENTURE VIEW
IT 業界は変化が早いですので、常に新しいことを試みていかないと、次に何が流行るかわからないですね。ですので、1歩先を行く取り組みを意図的に行うための仕組みがラボです。後はエンジニアは大きく2つにタイプに分かれます。ある程度決まった作業をきっちりこなすことで価値を生み出す人と、自分で考えて勝手に価値を生み出す人。どちらかと言うと後者の人たちを中心に、ラボに所属してもらって次に来るサービス開発に取り組んでもらっています。
「自分で考えて勝手に価値を生み出す人」の筆頭が関さん、というわけです。そして、「スーツとギーク、両方の気持ちがわかり、両方の言葉を喋れる」という強みを活かし、「ギークが面白いものを作れる環境を作る」ことを目指して日々活動しています。
そんな関さんは自らの所属組織であるラボを次のように位置づけています。
・最初の半分は会社のため
・残りの半分は社会のため
どことなく某頭痛薬のキャッチコピーを連想させますが、このように「会社」と「社会」の2つのバランスを目指す姿勢にも、関さんの自然体なあり方が投影されているように思えます。
会社への貢献は「ギークが面白いものを作れる環境を作る」であるなら、
社会への貢献は、シリウステクノロジーズ社の属する「ジオメディア」業界を盛り上げていきたい、という想いに現れています。その一環として、ジオメディアサミットというイベントをこれまでに2回開催。
↓CNETでも報じられていますね。
» 位置情報連動メディアの未来を語る「第2回 ジオメディアサミット」開催:ニュース – CNET Japan
位置情報と連動する地理的な性格を持ったメディア「ジオメディア」。この業界を盛り上げようと、同業界のプレーヤーたちが組織するジオメディアサミット運営実行委員会が7月30日にカンファレンス「第2回目ジオメディアサミット」を開催した。
会社に所属していたとしても、自分の立ち位置を見極め、自分にできることで目指すあり方を実現することは可能である。そんな関さんからのメッセージが伝わってくるようです。
相手の立ち位置を知る努力をする
当日のランチオンは関さんの会社がある恵比寿界隈で行われたのですが、お店を出る時に関さんから次のようなお誘いを受けました。
「良かったらオフィスに寄っていきませんか? …寄っていってください!」
もともとはランチオンの取材ということでお会いしていたので、僕としてもできればオフィスを覗いてみたい、という気持ちがありました。でも、午後からの仕事の予定もおありだろうし、そもそも断られたらどうしよう、という不安もあり、なかなか切り出せずにいたのです。
そんな逡巡を見透かしたかのように、上記のごとくお誘いいただき、何か救われたような気分になりました。
特に、「寄っていきませんか?」と「寄っていってください」の“間”が絶妙で、柔道で一瞬のスキをついて気持ちよく一本背負いを決められた時のような、鮮やかさと爽やかさがそこにはありました。
自分の立ち位置と相手の立ち位置、そしてその間の距離感を常に測っているからこそ、余計な力を入れることなく自然体でいるからこそ、繰り出せるワザといえるでしょう。これは、すぐには真似のできない技術ですね…。
#要するに、自分の位置情報と他人の位置情報を正確に測位せよ、ということですね。さすが「ジオメディア」。
仕事の内容ではなく意味に身を投じる
プライベートの面で、高校時代からごく最近までバンド活動に打ち込み、CDも出したことがあるという関さんの話をおうかがいする中で、ふと最近読んだ『会社をぶっ壊して、チームを創ろう!』という本のことを思い出しました。ざっくりと概要を紹介したところ、「会社とチームというテーマは面白いですね」ということで出てきたのが冒頭の言葉です。以下再掲。
どっちかというと会社組織で働くのは苦手なんです。でも、チームで何かをやるのは好きなんですよね。
バンド活動はまさにチーム。
会社をぶっ壊して、チームを創ろう! 吉田典生 日本実業出版社 2008-06-21 by G-Tools |
会社は仕事の内容でつながる集団。チームは仕事の意味でつながる集団。
(中略)
仕事の意味でつながるチームとは、人が自分の存在理由と出会い、それを具現化するために力を合わせる仲間と出会い、そこから生まれてくる内発的な動機に満ちた集団である。(p.52)
この一節が、チームではない会社組織に身を置きながらも、気持ちの上では仕事の「意味」を追求し、その先に「会社」と「社会」という2つのテーマを掲げ、自らの所属組織をチームに作り替えようと奮闘している関さんの姿と重なりました。
ちなみに、本書は会社とチームの違いを対照的に説明しており、並べて比べることで両者の特徴が浮き彫りになるという、これまでに類をみない視点を提供してくれる一冊です。
取材後、シリウスラボの関さんの紹介ページに次のような言葉を見つけて、ガッテンしました。
得意分野はチームハック
あなたは所属するチームの中で、自分をどのように位置づけていますか?
▼次にすること:
・『会社をぶっ壊して、チームを創ろう!』を読んでみる
・会社とチームの違いについて、同僚に議論をふっかける
・メンバーは自分が所属するチームを束ねている「意味」を考えリーダーに伝える
・リーダーは自分のチームに込めている「意味」をメンバーに伝える
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・シリウスラボ