前回は、情報摂取における管理要素を検討しました。その際、ソース(情報源)の管理において、次の三つのポイントを示しました。
- 普段正しいことを言っているサイトでも間違うことがある
- 自分が好きな情報ばかりに寄せてしまうと、偏ってしまう
- ソースの性質は変化する
今回は、これを掘り下げてみましょう。
普段正しいことを言っているサイトでも間違うことがある
情報ソースの選別の際、「怪しいことを言っているサイト」を弾くのは至極当然の話です。すると、「正しいことを言っているサイト」がたくさん集まることになります。
しかし、ここで一つ注意があるのです。日常的に正しい情報を発信しているソースであっても、たまには間違うことがある、という点です。その前提自体は何も不可思議なものではないでしょう。ソースの発信者は人間なわけで、人間は誰しも間違いを犯します。絶対に間違えないソースは、原理的に考えにくいものです。
すると、普段正しいことを言っているサイトでも、絶対に正しいわけではない、という極めて当たり前の話が出てきます。しかし、私たちはこれをよく忘れます。特に、ノイズを弾いてシグナルだけを集めていると、より強くそれが起こりがちです。
対策はごく単純で、「どのようなソースでも、それだけで鵜呑みにはしない」という姿勢を持てば良いのですが、それ以外にも「同じジャンルの情報でも、複数のソースを持っておく」という具体的な対策があります。複数のソースが別のことを言っているなら、どちらかが「?」だと言うことに気がつけるので、そこからアクションが起こせるでしょう。
ちなみに、Aのソースを参照にしているB、C、Dといったものを複数参照しても、あまり意味がないことには注意してください。数自体は増えているかもしれませんが、多様性はまったく増えていません。
また、気をつけておきたいのは、普段怪しいことを言っているサイトも、たまに正しいことを言うことがある、という点です。正しいサイトが間違うことも含めて考えると、ソースへのジャッジメントは、記事1つを見て判断するような断片的な態度は避けたいところです。
自分が好きな情報ばかりに寄せてしまうと、偏ってしまう
自分で自分のソースをコントロールできるツール、たとえばRSSリーダーやTwitterのタイムラインの場合、自分好みの情報を集めることができるわけですが、それは情報摂取における「偏食」のような状態を引き起こします。さらに、アルゴリズムによる「オススメ」がその偏食をもっと偏らせる危険性もあります。
そのあたりの対策については、以下の記事で書きました。
ちなみに、偏っていること自体は悪いことではありません。自分の好きなジャンルの情報を徹底的に収集することは、その道のプロになる一つのルートでもあるでしょう。ただ、「偏りすぎていること」と、「自分が偏っているかもしれないという自覚が欠如していること」は、あまりよろしくありません。少なくとも、情報に対する評価・判断に悪影響が生まれることが考えられます。
それについては、ネイト・シルバーが『シグナル&ノイズ』の中で、ハリネズミとキツネという概念で解説しているので、ご興味あればそちらもどうぞ。
ソースの性質は変化する
ソース(情報源)は、たいてい情報を発し続けます。よって、その評価は、動的に更新される必要があります。
個人ブログの場合でも、面白そうだとRSS登録してみたら、時間が経つうちに発信される情報の内容が変わっていた、ということはないでしょうか。そのような場合でも、一度RSSに登録したブログを解除するのは億劫なのでそのまま購読し続けていることが少なくありません。すると、意図しない情報を目に入れることになります。
時間が経つにつれ「正しさ・怪しさ」のプロパティーが変わってしまうサイトがあることも考慮すると、定期的にその評価を見直す必要がありそうです。
Twitterにおいても、一度作り上げたタイムラインを__フォロー・アンフォローを行い__再構築していくことは、普段使いの情報源ならば必須でしょう。クラスの席替えを行うように、あるいは窓を開けて空気を入れ換えるように、ソースを組み替えるのです。
そうしたリストラクチャリングやリフレッシュを怠ると、ソースの健全性は損なわれてしまいます。
さいごに
これまでの情報メディアは、たとえばどこかの新聞を一度購読したら、それが恒常的に情報源として機能したわけですが、最近の多様なメディアの在り方は、そのような万年床ならぬ万年ソースの姿勢はあまりフィットしません。
自分でソース群を選別し、ポートフォリオを組み上げた上で、定期的にそれを更新していく必要があります。どう考えても面倒なのですが、情報化社会に住む市民にとっては、欠かせない行為なのかもしれません。
▼今週の一冊:
本文中でも紹介しましたが、米国大統領選挙でも注目を集めたネイト・シルバーによる予想と統計の本です。2013年と少しだけ古い本ですが、今でも十分に、というか今だからこそ読みたい内容がぎっしり詰まっています。「情報摂取概論」なるものがあれば、テキストに選ばれること間違いなしです。
» シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」[Kindle版]
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さて、いよいよ発売です、ということを書けたら良かったのですが、もう少しだけお待ちください、な状況の電子マガジンです。もう99.9%はできているので、おそらく来週ぐらいには……。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由