人は時間を管理する用意ができていない
ドラッカーは、『プロフェッショナルの条件』の中で「人は時間を管理する用意ができていない」と書いています。
あらゆる仕事が時間の中で行われ、時間を費やす。しかるに、ほとんどの人が、この代替できない必要不可欠な資源を当たり前のように扱う。おそらく、時間に対する愛情ある配慮ほど、成果をあげている人を際立たせるものはない。しかし一般に、人は時間を管理する用意ができていない。
時間はお金と違って、何もしなくても減っていくうえに、増やすことができません。
その意味では氷に似ています。塊のままではうまく使えません。グラスに入れるならグラスに入るサイズである必要があります。かき氷にするなら粉砕する器械が要ります。使わないまま放っておくと溶けてなくなってしまいます。
使うためには用途に合わせた加工が欠かせないわけです。
しかも、それが溶けてなくなってしまう前に。
時間がうまく使える場合
「今日は時間がある!」という日でも、うまく使える場合と使えない場合があります。うまく使えるのは、時間をどのように使うかをきちんと決めている場合でしょう。用途に合わせてあらかじめ加工しているのです。
たとえば、、、
「今日は午前中は特に予定がない、あ、午後の会議で使う資料を作らないと。じゃあ、午前中はまず資料作りから始めよう。代わりに午後に回してもいい仕事はどんどん午後に回そう。もう一つ昼までに提出しないといけないレポートがあるので、これも午前中にやらないと。そうしたら、まず会議資料作りから始めて、その後にレポートだ」
<午前中>
●午後の会議資料作成
●レポート作成<午後>
●会議
「会議資料を作るには、まずどうすればいい? 前回の資料をもとに作るので、前回の資料チェックだな。あと、前回の議事録で継続案件も確認しないと。今日の議事内容についてはBさんに最終確認が必要だ。Bさんは社内にいるから、まずBさん確認からやろう。次に前回の資料チェック。最後に前回の議事録で継続案件の確認、と。あとはこれらをまとめるだけだ」
・・・という具合に時間の“用途”を明らかにしながら、その“内訳”についても詰めていきます。
<午前中>
●午後の会議資料作成
└Bさんに最終確認
└前回の資料チェック
└前回の議事録で継続案件の確認
└まとめる
●レポート作成<午後>
●会議
内訳が見えてくれば、それぞれの項目に必要な時間もある程度わかるようになります。見積もることができるのです。
<午前中>
●午後の会議資料作成
└Bさんに最終確認(10分)
└前回の資料チェック(5分)
└前回の議事録で継続案件の確認(10分)
└まとめる(15分)
●レポート作成<午後>
●会議
「レポート作成」についても同様にこの「加工」を行なうことで、午前中に収まるかどうかが見えてきます。収まることがわかれば、安心して仕事に取りかかることができるでしょう。
時間がうまく使えない場合
一方、「今日は時間がある!」という認識だけしかない場合はどうでしょうか。
「とにかく今日は時間があるから、何でもできるぞ」という過大評価が無意識のうちにおこなわれます。
その結果は…ここに書くまでもないでしょう。
ドラッカーは、先ほど引用した箇所の直後に次のように書いています。
空間感覚は、闇でも保てる。だがたとえ電気の明かりがあっても、何時間も密閉された部屋に置かれると、ほとんどの人が時間感覚を失う。経過した時間を過大に評価したり、過小に評価したりする。
われわれは、どのように時間を過ごしたかを、記憶に頼って知ることはできない。
「何でもできるぞ」という過大評価は、「何でも」の中身を決めていないということですから、氷を大きな塊のまま持てあましてしまうことになります。
そもそも「何でもできる」ことはめったにないでしょう。一日の終わりに「今日は何でもできて満足だ」と実感することはないと思うのです。
「今日はAとBとCができて満足だ」という風に実際に「できた」ことが具体的に出てくるはずです。
この「満足」をもう一度味わいたいなら、この「できた」を起点に逆算して考えていけばよいでしょう。それが、上記の「時間がうまく使える場合」で書いた一連のプロセスです。
参考文献:
関連エントリー:
・できそうだと思ったことは、たいていできない
・未来の自分に期待する、過去の自分を裏切らない
・ネガがあるからポジが引き立つ
・時間がないときほど「すぐにできる仕事」は後回しにすると仕事がはかどる
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