ビジネス書を読む心得を説く本はたくさんありますが、どの本にも以下のいずれか、あるいはすべてが含まれるでしょう。
- 目的を明確にしよう
- メモを作ろう
- 実践しよう
これらは次のように言い換えることができます。
- ゴールから逆算しよう
- 学びを再現できるようにしよう
- 行動を起こそう
そうなると、本の読み方もおのずと違ってきます。目的が「読む」ことから「読み取る」ことに変わるのです。
タイトルにある通り、勉強というインプット活動をいかに成果に結びつけるか、すなわちアウトプットに変換するかに焦点を絞り、その考え方から具体的な方法論に至るまでが解説されています。
今回は、個人的に特に共感できたアイデアを7つ、ご紹介します。
1.「メチャクチャ長い一通のメール」で頭をすっきりさせる
思いついたことをメモ代わりに自分にメールし、ジャンルごとに分類して、1ジャンルあたり1メールを割り当てて管理する、という方法です。
すぐにやらなくていいことや一日ではできないものは、コピー&ペーストして一通のメールにまとめます。一日のうち「営業の課題」「経営の課題」といったメールが仮に10通来ていたら、やらなかったものをジャンル別にまとめて一通のメールにコピペし、それをまた自分あてに送るというやり方です。
すると、一日の終わりには、今後やるべきことがジャンルごとにまとまった未読メールが、各一通あるだけという状態になります。
2.毎日「90点」を目指す
著者が経営するライブレボリューションでは「ヤリヌキシート」と呼ばれる日次のスケジュール管理シートが使われており、このシートでその日の成果90点を目指しているそうです。
このシートについてはこちらに詳細説明があります(ダウンロードも可能)。
3.ハッとしたら読むのを中断して行動を起こす
本当に役立ちそうな本、参考になりそうな本であれば、自分でも実行できそうなことが見つかった時点でいったん本を閉じ、そのテクニックについて考えたり、一つひとつ実際に試したりと、「寄り道」しながら読むことです。
手段であるはずの「読む」ことにとらわれすぎるあまり、本来の目的である「読み取る」ことがおろそかになっては本末転倒。
個人的には、「毎日1冊読む」とか「月に○冊読む」という数値目標を掲げてせっせと本を読むのはやめたほうがいいと思っています。
読書慣れしていないうちはそういった数値管理も効果があるかもしれませんが、すでに苦もなく本を読めるのなら、例えば「どれだけ行動を変えられたか」を指標にするなど、「読み取る」ことを意識せざるを得ないようにしたほうがいいでしょう。
4.チームリーディング
いわゆる読書会ですが、会社を挙げて徹底して取り組んでいるようです。これについては、以下のエントリーで詳しく紹介していますので、そちらを参照ください。
5.「メンター本」を決めておく
「メンター本」とは、文字通りメンターのように、迷った時や悩んだ時に読み返して、判断のよりどころを見いだすうえで役に立つ本。著者は以下の3冊を挙げていますが、自分なりのセレクションを決めておきたいところです。
» 人間関係、人間心理に悩んだら読む本
» 会社の利益を考える本
» 会社が目指す方向性を考える本
6.日記を書く
著者は自身のみならず、新入社員や「ちょっと不調かな?」という社員に報告日記をメールで書くように要請しているそうです。社長に毎朝メールをすることになるために、次のような効果が得られるとのこと。
「いい話を日記に書きたい」こう思って仕事をすると、やがて自然にそれに見合う働きをするようになる──私は今、そんな社員を目の当たりにすることで、日記のパワーを再認識しています。
日記は、その日を反省し記録を残すだけにとどまらず、仕事や生活のパフォーマンスを格段にアップさせるための優秀なペースメーカーにもなるのです。
これは、毎日ブログを書くという以上のプレッシャーになりそうですが、応分の見返りが期待できそうです。何よりも、読んでくれる人がいるという確かな手応えは、人をして行動を起こし、そして継続させるうえでは欠かせない要素といえるでしょう。
7.先を見越してイチからやる
人材採用を採用コンサルティング会社に頼む会社が多い中、同社はあえて自社で採用の仕組み作りを始めます。ここでポイントとなるのは、どこに力点を置くかです。
確かに、プロに頼めば時間を節約できるかもしれませんが、本当に自社に合った仕組みが手に入る保証はありません。かといって、素人がイチから取り組むのも気が進まないでしょう。
実はこのジレンマの中に著者の強みが発揮されるヒントがあります。
つまり、「みんなが○○と考える」という一点に注目するのです。そして、この「○○」とは相反する発想で行動を組み立てていく。
多くの人が効率的であると考える方法を前にしたら、その方法を採用することで失われるものは何かを考える。つまり、疑いようのない事実に対しても、まず疑ってみるという姿勢です。
例えば、著者のいう「失われるもの」とは以下のようなものです。
採用コンサルティング会社に頼むということは、サービスをお金で買うということです。仮に一人につき5000円かかる適正テストであれば、会社がまだ小さくて志望者が10人のときなら5万円ですむでしょう。しかし、ビジネスの成長とともに志望者が1000人になったとしたら?
この可能性を見越して、同社はイチから独自の適正テストを作りあげていきます。その後どうなったか? これについては本書に譲ります。
まとめ
今回ご紹介した以外にも様々な方法論が紹介されているのですが、いずれも著者あるいは著者の会社だからこそうまくいくものが中心です。もちろん、そのまま適用できるものもあるでしょう。
でも、多くは自分や自社の状況や環境あるいは目指す成果に合わせて手を加えなければうまく機能しないはずです。
例えば、最初の「メチャクチャ長い一通のメール」を使った方法は、Evernoteを使ってすでに実践している人もいるでしょう。大切なことは自分にとって続けやすい方法を見つけて、時には編み出して、継続することです。
その意味で本書は、自分なりの方法論を作っていくうえでのガイドあるいは触媒となる一冊といえます。
▼合わせて読みたい:
最近も紹介したばかりの本ですが、特に以下のエントリーは今回の内容と重なる部分が多いでしょう。
» 「方法」は陳腐化するが「方向」は無限にある
» 常識を疑い、自分の頭で考え抜く
▼関連エントリー:
・成功の一歩手前であきらめていないか?──あと一歩を踏み出すヒント
・仕組まれないための仕組みの作り方を学べる2冊
・常識を疑い、自分の頭で考え抜く
「ブラッド・ダイヤモンド」という映画をDVDで観ました。少し前に観た「ロード・オブ・ウォー」という映画と世界観をともにする作品で、両映画ともに目を背けたくなる、あるいは意図的に覆い隠されている現実を突きつけられる、という意味で貴重です。ドキュメンタリーではないのにドキュメンタリーを見るようです。