わかっちゃいるのに動き出せない人のための一冊

カテゴリー: 書評
By: Ryan DickeyCC BY 2.0

 

やるべきことがわかっているのに行動を起こさないのは、今の状態が心地良いからなんです。

痛みを感じたくないという感情が、心地良い状態の中に、あなたをとどめてしまうのです。心地良い状態の中で気をまぎらわそうとするのです。

心地良い状態というのは、痛みを殺します。
そうすると、何が起こりますか?

モチベーションは上がりません。行動できません。

おいしいもの食べたいな、飲みに行きたいな…など、心地良い状態はモチベーションを殺します。

どんなに優れた方法論であっても、実践されなければ効果はあがりません。配線をつなぎ終えても、電源スイッチを入れなければ映らないテレビと同じです。逆に、いくら電源スイッチを入れても配線が間違っていればやはり映りません。

ここで欠かせないのは正しい配線のやり方以上に、「何としてもテレビを見たい!」という強い想いでしょう。その想いがあれば、配線がうまくいかずに往生したとしても、別の手段を講じるはずです。ワンセグ機能つきのケータイを持っていれば代替になりますし、それがなければ友人の家に押しかけていく方法もあるでしょう。

今回ご紹介する『目標達成する技術』は、やり方としての技術というより、行動を起こすための技術を解説した一冊。具体的な方法論も書かれていますが、それ以上に読んでいるだけで、「やらなきゃ!」という気持ちが盛り上がってくる不思議な本です。

成功は80パーセントが心理面、わずか20パーセントが方法論

目標を達成する人は、目標を作ったときには、方法なんて知らないのです。でも、どうしてもそれを達成しなくてはならない感情的な理由を持っているのです。

どうしても達成したければ、方法は後からついてくる、おのずと思いつく、ということですね。方法が先にあって、後から「じゃぁ、やるか」と行動が続くわけではない、ということです。

痛みがあるから行動する

手軽な方法で自分を満足させると、目標は達成していないのに、痛みがなくなってしまい、目標に向かわなくなってしまうのです。

どうしても達成したい、という想いの原点はハングリーさだと僕自身は考えています。今に満足できていないから、もっと言えば、不足を感じているからこそ、その穴を埋めたいがために行動を起こすのです。

傷口が開いていて痛みを感じている状態です。傷口をふさがずに、例えばお酒を飲んだり、より直接的に麻酔を打って痛みを沈静化したりすれば、一時的には痛みを飛ばすことはできるかもしれませんが、根本的な対処にはならないでしょう。

1時間はムリでも1分ならOK

多くの人が目標達成のための計画を実行できないのは、そのプロセス全体にフォーカスしてしまうからです。

でも、1分間でいいと思えば感じ方が変わってきます。たとえば、テレビを1分間だけ見ようと思ったら、何が起きますか?

あっという間に10分は経ちますよね?

気がついたら1時間、2時間…という経験は、多くの人があるはずです。このようにダウンサイジングの力の効果が出るのも、この方法が感情にフォーカスしているからなのです。行動は感情次第なのです。

たとえば、ずっと先送りにし続けている、苦手な相手に送らなければならないメールがあったとします。繰り返し先送りをしてしまうのは、「苦手な相手にメールを送る」というプロセス全体に嫌悪感を抱いているからだと考えられます。

そこで、

「メールを送る必要はないから、とりあえずメール作成ウィンドウを開いて、相手の宛先アドレスを入力するところまでやったら、今日はおしまいにしよう」

ということで、取りかかるようにします。

実際にやってみるとわかりますが、宛先アドレスを入れてみると、

「ついでにタイトルも入れておくか」

「書き出しの部分だけでも書いておくか」

といった具合に、良い意味でずるずると前に進めてしまうことが多々あります。それでも、気持ちの上では

「今日は終わらせなくてもいい」

という約束になっているわけですから、プレッシャーもほとんどありません。

僕自身はこのやり方をよく使うのですが、本書においては「ダウンサイジングの力」がこれに当たります。「30分はかかるな」と思えば、それだけでやる気がなくなってしまうところを、「1分だけやれば今日はOK」ということにすれば、「1分だったら、まぁいいか」ということで、やる気を「おびき出す」ことができるわけです。

心地良さを感じたら、警戒する

あなたは、この本を読んで、成長したいと思っているはずです。そこでわかっておいてほしいのは、

心地良い状態というのは、成長することと反対のこと

であるということです。

「あなたの成長は、居心地の悪さから来るものなのです」
「あなたの成長は、居心地の悪さをどれだけ、居心地良くするか」

なのです。

本書は人によっては、「パッと見が怪しい」と感じられるかもしれません。でも、怪しくない、すなわち自分にとって抵抗の少ない、読んでいて心地良い本ばかりを選んで読んできたのなら、ここであえて「居心地の悪い」本を読んでみることは変化や成長のきっかけをつかむ上で役に立つはずです。

 

▼合わせて読みたい:

「感情」つながりで、「衝動の脳」と「理性の脳」のせめぎ合いから独自の時間管理術を編み出したマーク・フォースターさんの一冊。本書でも言葉は違いますが「ダウンサイジングの力」が取り上げられており、興味深いです。

 

▼編集後記:その『マニャーナの法則』ですが、佐々木さんも僕も、その内容が気に入って、シゴタノ!(ブログ)で繰り返し取り上げていたところ、先日ご担当編集者より「重版が決まった」とのご連絡が! しかも、オビに名前まで入れていただきました(驚)。

これを機に装丁も一新。「緑化」しましたね。

今回の重版が同書の初版(2007年4月)以来最初の重版だったのですが、干場社長がブログでも書かれているとおり、「渋い売上げ」だったそうで、「発掘」できてよかったです。

後日、改めてきちんと紹介します。

 

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