選ばれるためには、何か特別な能力、振舞い、目立つことが必要と思っている人は少なくありません。
本当にそうでしょうか?
私たちがこれまでお付き合いしてきた成功者を見ていると、必ずしもそうとはいえません。彼らに共通しているものは他にあります。それは日常生活の一つひとつからにじみでるその人の心の状態であり、他人に配慮できる度量の大きさ、そして優しさです。
社会的に影響力がある人、強いブランド力をもっている人は、一見強いポリシーやパフォーマンスによって注目されてしまいます。が、彼らが長けているのはもっと他のところにあるのです。たとえば、朝の挨拶やレストランでのウェイターへの感謝の一言など、身近な生活の行動一つひとつが素晴らしいのです。
この本からわかることは、次の2点。
- テクニックで得られる成功に持続性はない
- 日々の小さな習慣の積み重ねが偉大な成果を生み出す
言われてみれば、当たり前のように思えますが、問題はその当たり前のことを日々の行動に落とし込む時に生じる摩擦や抵抗をどのように克服するか、でしょう。
本書にはこの問題の答えが書いてあります。
とはいえ、紹介されている「法則」は77もあり、個別にチェックしていくと「木を見て森を見ず」になりかねません。そこで、今回はこれらの法則の上位に位置する5つのチェックポイントを見ていくことにします。
- 選ばれるための基準を知っているか?
- 期待されていることを正確に捉えているか?
- 期待されていることに応えられているか?
- 期待と現実のギャップに目を向けているか?
- いま不足していることを満たそうとしているか?
1.選ばれるための基準を知っているか?
「基準」を満たしているから取り上げられ、「基準」を満たしていないから取り上げられないのです。
「自分はこんなにがんばっているのだから」は基準にはなりません。
ではどうするか。
2.期待されていることを正確に捉えているか?
「期待を知る」という行動は、独りよがりにならないためにも必要です。
自分なりに正しいと思えることであっても、それが相手にとっても正しいとは限りません。逆に、自分にとっては不本意だったり物足りなかったりすることであっても、相手にとっては「それこそ求めていたもの!」というケースも往々にしてあります。
こちらから相手の期待を知ろうとする努力に加えて、その期待を受ける自分自身の間口も広げておく必要があります。せっかく相手が期待の言葉をかけてくれていても、それを期待として受け止められなければ、キャッチボールが成立しないからです。
例えば、僕自身がこれまでにいただいた「期待」で象徴的なものは、本の執筆の最中に毎日のようにメールのやり取りをしている編集者からいただいた一言。
それはメールの末尾に添えられる「(原稿を)楽しみにしてます!」というささやかなものなのですが、これがどれほど励みになったかわかりません。この一言をプレッシャーではなく「期待」として受け止められたからこそ、それが書き続けるモチベーションに転化できたのだと思います。
そういう意味では、相手の発する言葉を何でもかんでも「期待」として受け止められれば、その人の成長スピードは間違いなくアップするでしょう。その言葉がたとえクレームであったとしても。
3.期待されていることに応えられているか?
経験や考え方の違いでアプローチの仕方はいろいろありますが、「結果」と「影響」に全力で取り組んでいる人が、選ばれ続ける人の共通点です。
やり方にこだわりすぎるな、ということですね。
4.期待と現実のギャップに目を向けているか?
ですから、ブランディングを実践するうえで重要なことは、メッセージの発信者と受信者のギャップを意識し、常に注意しながらマネジメントすることなのです。
強いブランドをもつ企業は、このギャップを重視し、対応策もしっかりしています。それだけ、ギャップにどのように対応するのかを最重要視しているのです。そこにこそ強いブランドをつくる深い意義があること、またそれによって新しいチャンスが生まれることを知っているのです。
最終的な着地点と現在地点とのギャップを知ることは、適切な行動を起こすうえで欠かせません。特に、現在地点の正確な把握が大切でしょう。カーナビは目的地に加えて、現在地がわかっているからこそ、最適なルートが示されますが、これは仕事でも同じです。
5.いま不足していることを満たそうとしているか?
ギャップを認識したら、次のアクションはそのギャップを埋めること、つまり不足している技術や知識や経験を身につけることです。その繰り返しがあるからこそ成長があり、選ばれ続けることが固定化するのです。
「繰り返し」と書かれていますが、つまりは「継続」です。ギャップを埋めたいというモチベーションがあるからこそ努力が継続できるわけですが、そこにはもう一つ欠かせない要素があります。
継続の醍醐味を経験すれば、継続することへの忍耐力がついてくるでしょうし、その結果として、少しずつギャップは埋まっていくものです。ですから、継続の醍醐味を実感するまでは、まずバカになって続けてみることです。
つまり、バカです。
納得できなくても、見通しが得られなくても、まずは愚直に続けてみること。頭のいい人ほど「どこかにショートカットがあるはずだ」ということで、近道を探そうとしますが、そうではなく、自分にとって最も楽しくバカになれる道を探すこと。それが結果としてショートカットになるはずです。
まとめ
以上ご紹介した内容は、本書の序論に過ぎません。本論にあたる77の法則は「心・技・体」の3つのパートに分けられて、より具体的な「やり方」に踏み込んで解説されています。
全体を貫くコンセプトは「自分を掘り返せ!」になると思います。
特に、
「私には特殊な技術がない」と落ち込む必要はありません。選ばれる理由は何も特別なことができるからだけではありません。ちょっとしたことでも選ばれる理由になります。(p.26)
という一文はこのことを端的に言い表しているでしょう。
著者二人はいずれも日本だけでなく世界においても、選ばれ続けているビジネスパーソンたちですから、その言葉には説得力があります。また、常に「与えるスタンス」でいる著者たちだからこそ、「(後輩たちに)本当に成功して欲しい」という想いが行間から伝わってきます。
結局のところ大切なことは、冒頭でも引用したとおり、日々の小さな行動の積み重ね、すなわちルーチンです。積年の雨だれは岩をうがちますが、たとえ高水圧であっても一瞬の放水では無力に等しい。
何ら特殊技術を持たない雨だれも、バカになって岩を打ち続けるからこそ突き抜けられるのです。
また、本書のテーマである「選ばれる」とは自分一人ではできないことです。だからこそ、じっくりと自分に向き合い、一点集中できるテーマを求めて掘り返し続けることが重要になってきます。
僕自身も、今のブログに行き着くまでに7つのブログをつぶしてきましたが、このプロセスというのはまさにこの掘り返し期間であったと思っています。
周りのすごい人に惑わされることなく、愚直に自分を掘り返したい人にとっては非常に役に立つ一冊です。
▼合わせて読みたい:
本書は僕自身にとってもたいへん勇気づけられるもので、最近読んだ以下の本とも親和性が高いです。いずれも、周囲に惑わされることなく愚直に自分を掘り返すことの大切さを教えてくれます。
まずは、Lifehacking.jpの堀さんの「小さな習慣のつくり方」ガイドともいうべき一冊。
続いて、自分を掘り返すことの大切さを説いた骨太な一冊。
そして、今回の共著者の一人である浜口直太さんの真に迫るストーリー。
最後に、愚直に繰り返す「ルーチン力」を身につける上では、ズバリこの一冊。