第1話:アイデア出しに四苦HACKの巻
ここは東京某所、ST電機第一ソリューション事業部。
時計が深夜2時を過ぎようかというころ、暗くて寒いオフィスの片隅で脂汗をたらしながらパソコンに向かう一人の青年がいた。
ベック君:うわぁぁ、ヤバイよヤバイよ。何も思いつかないよ!!
時はさかのぼること12時間前---
ベック君:それではブレスト会議始めます。何か面白いアイデアありませんか?
先輩A:・・・うーん。
先輩K:面白いことなぁ・・。
先輩B:そういえば、今年の漢字は絆らしいぞ!
そこから「ブレスト会議」なる会議は2時間ほど、衛星のKIZUNAやShznaやはたまたiPhoneアプリのShazamからStanzaへと迷走を繰り返し「じゃぁ、後は若い頭脳のベック君が考えるということで。ヒント一杯でたでしょ?」という先輩3名の無茶振りで閉幕した。
ベック君:ヒントって何だよ、ヒントって。SHAZNAから新しいソリューションが産まれるわけないじゃん!!
xxx:お困りのようですね、ベックさん
ベック君:そ、その声は!?
振り返るとそこにはベレー帽を被ったマスター・ノキバの姿があった。
ベック君:マスター!
マスターノキバ:いいえ、私はマスターではありません。漫画家ノキバです。
ベック君:何で今日は漫画家なんですか?
マスターノキバ:アイデアのお話だからです。何となくアイデアっぽい仕事でしょ?
ベック君:そんなことよりマスター助けて下さい!アイデアが湧いてきません!明日までに社長向けに発表する新しい事業ネタのアイデア出しと資料作成をしないと行けないんです。
マスターノキバ:一応設定は漫画家なんですが・・・まぁいいでしょう。これをどうぞ。
そういってマスターは薄い一冊の本を取り出した。
実にシンプルなタイトルである。
マスターノキバ:闇雲に考えても良いアイデアは湧いてきません。まずはアイデアを出すための型を意識してみると良いでしょう。新規事業を考えるに当たって今まで集めた資料や考えたノートなどはありますか?
ベック君:資料はいくつかありますが・・・ノートなどはありません。
マスターノキバ:それはいけませんねぇ。情報を集めるだけでなく、ちゃんとそれらに手を加えたり並べて見れるようにしないと・・とは言っても、今からそんなことをしている時間はありませんので、まずは考えている事を書き出して、集めた情報と共に一覧できる状態を作ってみては如何でしょうか?ヤング曰く「アイデアは新しい組み合わせ以外の何者でも無い」ですからね。
ベック君:わかりました!やってみます!
マスターノキバ:それから、疲れていては良いアイデアも浮かびませんから、あまり根をつめずにちゃんと休んで下さいね。案外寝て起きたときなどにすっとアイデアが湧いてくるものですから。
マスターノキバはそう言うと、おもむろに机の引き出しを開き、「では」と一言残して机の引き出しに飛び込んだ。シュルシュルっとアニメの様な効果音を残し、机の引き出しに吸い込まれるマスター。ベック君はそれを見ながら「なるほど、藤子F不二雄のコスプレだったのね。」と冷静に分析を行っていた。
ベック君の長い夜が始まる・・・(続く)
アイデア出しの型を身につけるビギナーズハック
さて、ビギナーズ・ハックの第2章が始まりました。これから数回はアイデアや資料作成系のアウトプットについて取りあげたいと思います。初回は「アイデア出しの型を身につける」です。
■アイデアに関する誤解
ストーリーの中でもありました「とりあえずブレスト」ではあまり成果を期待できないことは多くの方が経験していることではないかと思います。そもそもブレインストーミング自体はアイデアを出し合って連鎖反応や発送の誘発を狙う技法であって、何もないところからアイデアを引き出す手法ではないですから、誰も何も考えていない状態では「誘発」など望むべくもないのです。
つまり、ブレストに臨む前に「誘発」を生むアイデアを考えておく必要があるわけですが、その為にストーリー中で登場した『アイデアのつくり方』という本で紹介されているアイデア出しの型が役立ちます。
本書ではアイデアを次の様に表現します
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何者でないということである
アイデアはどこか天から振ってくる授かり物のように思われがちなのですが、実際には新しい組み合わせこそがアイデアであり、これを見つけるという作業こそが「アイデア出し」なのです。
■アイデアを出す型を持とう
『アイデアのつくり方』で紹介されているアイデア出しのステップは次の5つです
- 関連しそうな資料を集める
- 集めた資料を咀嚼(整理・分析・加工)する
- アイデアを孵化させる
- アイデアを思いつく
- アイデアを具体化させ、発展させる
アイデアの元となる資料の収集は、アイデアが必要な場面であれば無意識の内に行っていることが多いのですが、それを保存し、咀嚼することについては見落とされることが多いように思います。(時々「この日にアイデア出しやるから」と言っても情報収集すらしていない人もいますが・・)
このフェーズで便利なのはEVERNOTなのですが、別にスクラップブックでも、アナログのノートでも付箋を壁一面に貼ってみるでも良いと思っています。要するに自分の中で「集める」フェーズと「考える」フェーズが分かれていることが重要だというのが私の経験則です。
アイデアを孵化させるという表現はわかりづらいかと思いますが、要するに集めた情報は一通り咀嚼したら一旦放置せよということです。考え続けて煮詰まった(もうこれ以上思いつかない)状態になってしまったら、それ以上考えるのを止めてちょっと散歩しにいく、お風呂にいく、時間に余裕があるなら一旦置いておいて別の仕事をする等して一旦アイデア出しを止めてしまうのです。
■My「三上」に委ねて果報を寝て待つ
アイデアを思いつかないうちにアイデアだしを止めてしまうことに違和感を感じるかも知れませんが、論理的な結論を導き出すために「考え抜く」ことと、新しい組み合わせを「見つける」ことは全く別物であるとご認識頂ければと思います。
有名な言葉に「三上」というものがあるのですが、これは中国北宋代の学者/政治家である欧陽修が「帰田録」の中に記した
余平生所作文章。多在三上。乃馬上枕上厠上也。
という文章から来ています。意味合いとしては「文章を思いつくのは馬の上、枕の上、厠の上の三上であることが多い」といった感じで、現代で言えば通勤電車の中や、寝る前・寝起き、トイレの中がアイデアを思いつきやすいということです。
この三上は必ずしも先に挙げた3つとは限らず、個人差があると感じています。個人的には枕の上ではあまりアイデアを思いつかず、通勤電車の読書中であったり、ランニング中や夜道を歩いているときであったり、会社で煮詰まってトイレに立った時などに良いアイデアに巡り会えているように思います。
このMy「三上」を信じて煮詰まった考えは一度手放しましょう。
■5ステップで具体的に何をすれば良いかのヒントが得られる本
先に挙げた5つのステップ、即ち、情報を集め、咀嚼し、手放し、思いつき、最後に仕上げるは、実はかなりの部分を普段の仕事や活動の中で行っているのではないかと思います。それでも「アイデアをなかなか思いつけない」という方は、自分の仕事のやり方に5つのステップを照らしてみて、足らない部分がないかを考えてみると良いのでしょう。何処かに必ず足らないステップがあるはずです。
最後に、この5ステップで具体的に何をすれば良いかのヒントを得られる本を何冊か紹介しておきたいと思います。
考具はアイデア出しのテクニックの総覧とも言える本です。但し、各テクニックの具体的なやり方までは言及されていませんので、この本で様々なテクニックを知った上で、興味があるものについて更に詳しく書いてある本を読むというのが良いでしょう。
かつて大ヒットした『IDEA HACKS!』の続編ですが、今回はハックと言うよりも、アイデアを出すための環境作りや心構え、考え方などが中心という印象です。詳しくは今週の一冊で紹介します。
シゴタノ!仲間の倉下さんが折に触れて紹介しているのでご存知の方も多いと思います。アイデアを生み出すためにどういったことをやれば良いかが具体的に書かれていますので、まずはこの本に書かれていることを真似ていくというのも手だと思います。
シゴタノ!仲間の倉下さんの著書。クラウドやデジタルツールを駆使してアイデア出しを行い、アイデアを形にしていくまでの具体的なやり方が書かれています。
自分の本を出すのもどうかと思いましたが・・、本書にもアイデア出しの考え方や手法、形にしていくまでの具体的な方法論を記しています。
最後に
今回は「アイデア出しの型を身につける」というテーマでお送りいたしました。次回はこの型をEVERNOTEでどうやって実践すればよいかについて取りあげたいと思います。
そういえば、シゴタノ!でEVERNOTEについて書くのって・・はじめてかな?
▼今週の一冊
先日小山龍介さんと原尻さん著の『IDEA HACKS!2.0』の出版イベントに行ってきました。イベントに参加しているメンバーがめちゃめちゃ濃く、参加人数も絞られていたので著者両名と沢山お話も出来、かなり楽しい会でした!
そして、その場で御献本頂いた『IDEA HACKS!2.0』がこれまためちゃくちゃ面白い。『IDEA HACKS!』はどちらかと言うと「技」が主体でしたが、『IDEA HACKS!2.0』は「心」「技」「体」のバランスが重視されているという印象です。
面白いのが実にHacks的なちょっとした技がポンポンポンと続いた中で突如「おぉ!?」というビックリさせられるような「考え方」をたたき込まれたり、著者自身がアイデアを出すときの「体調」、「精神状態」、「環境」をどう作っていけばいいのかという事が書かれていたりするところ。なるほど、成果を出す人というのはここまで考え、段取りをするものなのかと思わず納得させられてしまいました。
これは個人的にかなりショックを受けたことでもあるのですが、例え自分が知っている「技」だとしても、心持ちや考え方一つ、もっと言えば言葉の定義一つで全くの別物に変わってしまうということを改めて痛感しました。「技」に関して言えば「知っている」こと自体に意味はなく、如何に実践していくか、それを使う自分自身がどういう心持ちでそれを使うのかということで、結果は大きく異なることは常に心に留め置きたいと思います。
▼編集後記:
Follow @beck1240
12月1日に「アシタノレシピ」という新しいブログメディアを立ち上げました。
こちらでは「明日を楽しく!」をモットーに、日々の仕事やプライベートを楽しくするためのちょっとした工夫やコツ、考え方をバラエティに富んだ執筆陣で発信していきます。
私個人で言えば、シゴタノ!ではある程度ライフハックや仕事術を知っている人を想定して書いていますが、アシタノレシピではあまりそういったキーワードに馴染みがない人に向けて書いていこうと考えています。
シゴタノ!の連載と合わせまして、こちらも宜しくお願い致します。
▼北真也:
仕事術をもっとカジュアルに! わかりやすさ重視の「ビギナーズ・ハック」をお届け。Blog「Hacks for Creative Life!」と勉強会「東京ライフハック研究会」主宰。