200万人のインタビュー結果をもとに「強みとなりうる資質」34パターンを抽出、人はこの34の資質のうちの任意の5つを持ち合わせていると主張するのが、今回ご紹介する『さぁ、才能に目覚めよう』という本です。
最近、新版が出た本書ですが、初版は2001年11月30日。僕自身はその2ヶ月後の2002年1月に読んでいました。自分の5つの資質を知るには「Strengths Finder」という180問からなるテストを受ける必要があり、6年前に実際にやってみた結果が以下です。
1. 着想 Ideation
2. 慎重さ Delivative
3. 学習欲 Learner
4. 最上志向 Maximizer
5. 戦略性 Strategic
それぞれについて掘り下げる前に、34の資質について理解を深めるために、本書から補足しておきます。
もちろん、この34の資質は人間の特質すべてをとらえているわけではない。人の多様性にはかぎりがなく、そのすべてを分類するのは不可能だ。しかし、この34の資質は、ピアノの88の鍵盤に似ている。鍵盤を1つずつたたいているだけでは、弾ける曲はかぎられるが、いくつもの鍵盤を組み合わせれば、モーツァルトからマドンナまで、あらゆるジャンルの曲を演奏することができる。34の資質もそれと同じだ。この資質を踏まえたうえで、人を観察し、理解すれば、その人が奏でる独自の旋律を聞き取ることができるはずだ。
ピアノの鍵盤とはわかりやすいたとえですね。そんなわけで、6年前の「Strengths Finder」の結果を改めて見てみたのですが、いずれも「あぁ、やはり自分だなぁ」と思えるものばかりで、当時感じた「しっくり感」はいささかも薄れてはいませんでした。
それぞれ見ていきます。
5つの強み
1. 着想 Ideation
あなたは着想に魅力を感じます。では、着想とは何でしょうか? 着想とは、ほとんどの出来事を最もうまく説明できる考え方です。あなたは複雑に見える表面の下に、なぜ物事がそうなっているかを説明する、的確で簡潔な考え方を発見するとうれしくなります。
着想とは結びつきです。あなたのような考え方を持つ人は、いつも結びつきを探しています。見た眼には共通点のない現象が、なんとなくつながりがありそうだと、あなたは好奇心をかき立てられるのです。着想とは、みながなかなか解決できずにいる日常的な問題に対して、新しい見方をすることです。
あなたはだれでも知っている世の中の事柄を取り上げ、それをひっくり返すことに非常に喜びを感じます。それによって人々は、その事柄を、変わっているけれど意外な角度から眺めることができます。あなたはこのような着想すべてが大好きです。なぜなら、それらは深い意味があるからです。なぜなら、それらは目新しいからです。それらは明瞭であり、逆説的であり、奇抜だからです。これらすべての理由で、あなたは新しい着想が生まれるたびにエネルギーが電流のように走ります。
ほかの人たちはあなたのことを、創造的とか独創的とか、あるいは概念的とか、知的とさえ名づけるかもしれません。おそらく、どれもあてはまるかもしれません。どれもあてはまらないかもしれません。確実なのは、着想はあなたにとってスリルがあるということです。そしてほとんど毎日そうであれば、あなたは幸せなのです。
以下は6年前に自分が書いた読書メモです(以降同様)。
自分のことを知ることは何をするにしても必要なことで、それがわからなければ次に進めない。でも現実には、知らなくても進めてしまうことが少なくない。自分のことを知っているつもりで、実はよくわかっていなかった、ということに気づいていないことが問題で、このような人をそれとわからずに雇用したばかりに、お互いに不幸なことになっている個人あるいは会社も少なくないと思う。
成功した人の話を聞いて、真に受けて、真似をしても、成功できる、という保証はない。成功した人は成功すべき手順に従ったから成功したわけではなく、自分にぴったりの道を歩いたから成功したのだと思う。自分にぴったりの道を見つけることが成功への近道、あるいは自分にぴったりの道を歩くことそのものが成功なのかも知れない。
そう考えると、成功した人の話を聞くのは時間の無駄のような気がしてくる。
そもそも、成功した人の話というのは、成功したからこそ世の中に現れることができたのであって、その陰には失敗した人の話が無数にあるはずです。そして、その多くは人の目に触れることなくひっそりと息を潜めているものです。ということは…。
2. 慎重さ Delivative
あなたは用心深く、決して油断しません。あなたは自分のことをあまり話しません。あなたは世の中が予測できない場所であることを知っています。すべてが秩序正しいように見えますが、表面下には数多くの危険が待ちかまえていることを感じ取っています。あなたはこれらの危険を否定するよりは、一つひとつ表面に引き出します。そうして、危険は一つずつ特定され、評価され、最終的に減っていきます。言うなれば、あなたは毎日の生活を注意深く送る、かなりまじめな人です。
たとえば、何かがうまくいかない場合に備えて、あらかじめ計画を立てることを好みます。あなたは友人を慎重に選び、会話が個人的な話題になると、自分のことについては話をせず、自分自身で考えることを好みます。誤解されないように、過度に誉めたり認めたりしないように気をつけます。人になかなか打ち解けないという理由で、あなたを嫌う人がいても気にしません。あなたにとって、人生は人気コンテストではないのです。
人生は地雷原を歩くようなものです。そうすることを望むならば、ほかの人は用心せずにこの地雷原を駆け抜けるかもしれません。しかし、あなたはちがう方法を取ります。あなたは危険を明確にし、その危険が及ぼす影響を推し量り、それから慎重に一歩ずつ踏み出します。あなたは細心の注意を払って進みます。
以下、読書メモより。
かつてスパイに憧れていたことがあった。小学校低学年の頃だったと思う。無数の小道具を使いこなしながら、困難な任務を静かに遂行する様は見ていて地味だがカッコいい。探偵にも興味があった。トリック犯罪や密室殺人の謎解き本を夢中になって読んでいた。当時はスパイと探偵の違いには気づいていなかった。いずれにしても、対象に集中することで、自らの存在を透明化する、という部分がそのコアにあった。
2つめの資質は「慎重さ」。
忙しいのはいいことだと思っている。人からせかされる忙しさであればなおさらいい。忙しいと自分が本当にやりたいことが見えてくる。時間がないから自分が本当にやりたいことだけを慎重に選ぶようになる。選択の純度が高まる。時間があれば、あっただけ「あれもこれも」と手を出して、わけがわからなくなり、カオスの淵にずぶずぶ沈む。そういう意味で、一度は極限状態の忙しさを経験しておくのも悪くない。
会社から帰る頃には翌日になり、休日も会社にいない日の方が珍しい、というような生活を送っていると、本当にやりたいことだけしかやらない。無意識にやりたいことに向かっていく。やりたいことがわからなくても、そういう生活の中で日々瞬間に疑問を持って、その疑問に取り組む時間を持つようにすれば見えてくることもある。
人は持てる時間が少なければ工夫をし始める。諦めるにしても、上手な諦め方を身につけるようになる。諦めるにも経験と技術が要る。経験と技術を深めることで、カンが磨かれ、わずかな機微をも察知でき、迫る危険を回避する。
誰かに愚痴をこぼしたり当たったり打ちひしがれたりするのは簡単だが、そういう衝動に駆られる自分を冷静に観察していると、自分の側面がよく見えてくる。見えてきさえすれば、それを何とかしようとするべく、コントロールすべく、工夫を開始すれば良い。
スパイが慎重になるのは自分のことをよくわかっているからかも知れない。
スパイにはなれませんでしたが、自分がやっていることを客観的に人に説明することについては、関心を持ち続けています。そもそも、このブログは自分でやってみてうまくいった仕事術を記録に残しておくために始めたものであり、そうすることで“地雷原”を避けようとしているのかもしれません。
3. 学習欲 Learner
あなたは学ぶことが大好きです。あなたが最も関心を持つテーマは、あなたのほかの資質や経験によって決まりますが、それがなんであれ、あなたはいつも学ぶ「プロセス」に心を惹かれます。内容や結果よりもプロセスこそが、あなたにとっては刺激的なのです。あなたは何も知らない状態から能力を備えた状態に、着実で計画的なプロセスを経て移行することで活気づけられます。最初にいくつかの事実に接することでぞくぞくし、早い段階で学んだことを復誦し練習する努力をし、スキルを習得するにつれ自信が強まる──これがあなたの心を惹きつける学習プロセスです。
あなたの意欲の高まりは、あなたに社会人学習──外国語、ヨガ、大学院など──への参加を促すようになります。それは、短期プロジェクトへの取り組みを依頼されて、短期間でたくさんの新しいことを学ぶことが求められ、そしてすぐにまた次の新しいプロジェクトに取り組んでいく必要のあるような、活気にあふれた職場環境の中で力を発揮します。
この「学習欲」という資質は、必ずしもあなたがその分野の専門家になろうとしているとか、専門的あるいは学術的な資格に伴う尊敬の念を求めていることを意味するわけではありません。学習の成果は、「学習のプロセス」ほど重要ではないのです。
以下、読書メモより。
学習することは気づくことだと思う。しかし、行動と気づきとの間には規則性はない。何をすれば何に気づくのかの定式は規定できない。むしろ偶然の手順が習慣になり、知恵として純化するというプロセスを辿る。
3つ目の資質は「学習欲」だった。当たっているところもあるがピンと来ない部分もある。
人は気づこうと思って「気づく」のではなく、ふと気づくと「気づいている」ものである。学習のプロセスは自分がまだ気づいていないことに気づくことをひたすら繰り返すことだと思う。気づいたら、気づいていた自分に気づくことが新しい気づきを生む。
勉強そのものは好きではありませんが、物事の仕組みを知ることには人一倍関心があります。こうしてブログを書き続けているのも、自分という謎だらけの“システム”の仕組みを知りたい、という動機がありそうです。
4. 最上志向 Maximizer
優秀であること、平均ではなく。これがあなたの基準です。平均以下の何かを平均より少し上に引き上げるには大変な努力を要しますが、あなたはそこにまったく意味を見出しません。同様に努力を要しますが、平均以上の何かを最高のものに高めることのほうが、はるかに胸躍ります。自分自身のものか他の人のものかにかかわらず、強みはあなたを魅了します。
真珠を追い求めるダイバーのように、あなたは強みを示す明らかな兆候を探し求めます。生まれついての優秀さ、飲み込みの速さ、一気に上達した技能──これらがわずかでも見えることは、強みがあることかもしれないことを示す手がかりになります。そしていったん強みを発見すると、あなたはそれを伸ばし、磨きをかけ、優秀さへ高めずにはいられません。あなたは真珠を光り輝くまで磨くのです。
このように、この自然に長所を見分ける力は、ほかの人から、人を区別していると見られるかもしれません。あなたはあなたの強みを高く評価してくれる人たちと一緒に過ごすことを選びます。同じように、自分の強みを発見しそれを伸ばしてきたと思われる人たちに惹かれます。あなたは、あなたを型にはめて、弱点を克服させようとする人々を避ける傾向があります。あなたは自分の弱みを嘆きながら人生を送りたくありません。それよりも、持って生まれた天賦の才能を最大限に利用したいと考えます。そのほうが愉しく、実りも多いのです。そして意外なことに、そのほうがもっと大変なのです。
以下、読書メモより。
4つ目の資質は「最上志向」。
会社によるとは思うが、会社としてはなるべくいろいろなことができる人であって欲しいと思うところが少なからずあるように感じられる。だからいろいろな職場や職種や職能を経験させようとする。もちろん、自分だけの狭い視野では到底気づけなかったような新たな活躍の場を知るチャンスになるかも知れないし、自分だったら絶対にしないような決断を会社の命令だからということで仕方なく身を任せたところ、ふたを開けてみたらまさに自分にぴったりの天職のような仕事に巡り合うということもあり得なくはない。
ただ、そんな風に感じられるためには、日頃からあれこれ思いを巡らせて考え続けているからこそ、確信を持ってそう感じられるのであって、無難に平和に穏便に過ごしていたら気づかずに通り過ぎてしまうような微妙なものだとも思う。
これは、『仕事は楽しいかね?』で言うところの「試してみることに失敗はない」に通じる考え方といえそうです。
5. 戦略性 Strategic
戦略性という資質によって、あなたはいろいろなものが乱雑にある中から、最終目的にあった最善の道筋を発見することができます。これは学習できるスキルではありません。これは特異な考え方であり、物事に対する特殊な見方です。
ほかの人には単に複雑さとしか見えないときでも、あなたにはこの資質によってパターンが見えます。これらを意識して、あなたはあらゆる選択肢のシナリオの最後まで想像し、常に「こうなったらどうなる? では、こうなったらどうなる?」と自問します。このような繰り返しによって先を読むことができるのです。
そして、あなたは起こる可能性のある障害の危険性を正確に予測することができます。それぞれの道筋の先にある状況がわかることで、あなたは道筋を選び始めます。行き止まりの道をあなたは切り捨てます。まともに抵抗を受ける道を排除します。混乱に巻き込まれる道を捨て去ります。そして、選ばれた道──すなわちあなたの戦略──にたどり着くまで、あなたは選択と切り捨てを繰り返します。そしてこの戦略を武器として先へ進みます。
これが、あなたの戦略性という資質の役割です。問いかけ、選抜し、行動するのです。
以下、読書メモより。
何にしても「ばっかりやる」のが大事だと思う。1つのことばっかりやっていれば、当然その分野に強くなる。言い方を変えれば、強みを伸ばすことである。弱点の克服に精を出しても、行き着く先は特徴のない平均的な目立たぬ存在にしかなれない。そんなことを考えていたらこの本に出会った。
まとめ
こうして、自分の5つの強みを人に紹介しようとすると、それはそのまま自己紹介あるいは自己分析になります。
自己分析とは自分の目で見た自分ではなく、自分以外のフィルタを通して見た自分を知ろうとする行為といえます。自分で思っているだけの自己分析は自己暗示と区別が付かないからです。
本書では、「才能」を次のように再定義しています。
無意識に繰り返される思考・感情・行動のパターン
「持って生まれた特殊能力」といった何か特別なものではなく、誰もが持っている思考や行動の傾向というわけです。
就職活動で「自己分析」を必要としている人はもちろん、人生の岐路に立たされている人にとって、本書で言うところの「才能」(じぶん)を知っておくことは、よりよい意志決定を行ううえで役に立つはずです。
さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす 田口 俊樹 日本経済新聞出版社 2001-12-01 by G-Tools |
※本書は1冊ごとにユニークなIDが振られており、自分の強みを診断するオンラインテスト「Strengths Finder」を行うにはこのIDが必要になります。IDは一度しか使えないため、中古で入手した場合、テストが受けられない可能性があります。