「ポジティブハシゴ」と「ネガティブハシゴ」

カテゴリー: Journal

「ついでにやってしまおう」ということで、1つの作業のついでに関連する別の作業も一緒にやってしまうことによって、全体の作業効率をアップさせたり、後で行う作業の負担を軽くできたり、といったメリットが得られることがあります。

こういった「ついでにやる」ことを自分の中では「ハシゴ」と呼んでいるのですが、「ハシゴ」には上記のように望ましい「ハシゴ」(=ポジティブハシゴ)と、余り望ましくない「ハシゴ」(=ネガティブハシゴ)の2種類があると思っています。

ポジティブハシゴ

例えば、「紙copi」ビフォー・アフターというエントリーで取り上げた次の事例は、「ポジティブハシゴ」です。

例えば、メールチェックの際に「あ、この情報は案件Bで使えそうだ!」と思ったらその情報を案件Bのコレクションに加えます。そして、案件Bの仕事に取りかかった際に、案件Bのコレクションを目にすることによって「そうそう、この情報はこういう風に使えるんだよね」などと、先ほど加えた情報にメモを追記します。このメモが仕事を前に進めます。

こうすることで、ある案件に関連する情報は他の案件に紛れこむことなく排他的に管理できます。さらに、同じコレクションを何度も目にすることによって、自然とそのメンテナンスも進むでしょう。工具箱と同様に、コレクションを使いやすくしようという意識が働くため、そのコレクションにふさわしくない情報は、より適切なコレクションに移したくなりますし、不要な情報であれば廃棄したくなります。工具箱にマキロンが入っていれば薬箱に移したくなるでしょう。

こういったことは仕事をしながらでも「ついでに」できますし、整理することによって見通しがよくなれば、それだけ判断もしやすくなりますから、全体のパフォーマンスも向上するはずです。

あるいは、1週間分の仕事を前倒しして終わらせるための3つの条件で取り上げた「+α」も同様です。

それゆえに「+α」が必要になります。今回の場合は、もともと連休中にすべき仕事があったことが「+α」に当たります。

 「どうせ仕事をするのだから、似たようなものか」

という、冷静に考えると誤った現状認識ではあるのですが、「ついでにパワー」は時に“馬鹿力”になりえます。単体の商品で1万円の値がつくものには非常に慎重になる人であっても、高額商品を買う段になると「+1万円で便利なオプションがつきます」という誘いには簡単に応じてしまうという状況に似ているかもしれません。

さらに、仕事をスムーズに進めるコツにおけるティッシュの事例もしかりです。

で、別の用事で席を立つときについでに次の予備ティッシュを持って帰ってくるようにするわけです。その時のサインがカラになったティッシュの箱。これがあるということは予備を取りに行かないといけない、という標(しるし)になります。

いずれも、「後回しにするより今やってしまえば、後で楽になる」という具体的な成果が確約されるからこそ行動を起こすことができる、という共通点があります。

ネガティブハシゴ

一方、携帯メールをPCから送りたい時ににおける次のような状況は「ネガティブハシゴ」と言えます。

外出間際に急いでGmailにアクセスして、送信元を自分の携帯メールのアドレスにした上でメールを送るにしても、このプロセスにおいては、ほぼ間違いなくGmailの受信箱を目にすることになります。

もし、何か気になるメールが届いていれば、「ついでに」そのメールを開封してしまうかもしれません。たとえ「ちょっと目を通すだけ」というつもりであっても、気づいたら10分たっていた、ということもありえます。

今回のような、「携帯メールをPCから送りたい」という場合には、「携帯メールをPCから送ることしかできないサービス」を使うのが最も安全かつ速い、と言えるわけです。

あるいは、「リアルタイムロギング」メソッドの拡張で取り上げた「『こだわり』の悪魔」との闘い。

僕自身も、この「『こだわり』の悪魔」とは常に闘っています。ちょっと調べものをしようとWebブラウザを開いて目的のものを探しているうちに、「ついでに」ということでGmailのチェックを始めたり、そこで見つけたり思いついたりしたことに「ちょっとのつもり」で脱線して、だんだんと深みにはまっていって、ふとウィンドウだらけになった画面を見て「何をやろうとしていたんだっけ?」と立ち止まるのです。

そして、すぐに呼び出せる効用では、注意が奪われることに注目しました。

集中を妨げる最大の要因は、注意を奪われることだと思っています。いろいろなツールやアプリケーションを使い分ける必要がある状況というのは、途中で注意が奪われるスキを受け入れることになります。

 1.何かやるべきことを思いつく
 2.そのための最適なツールを選び出す
 3.そのツールを呼び出す(あるいは取り出す)
 4.目的の機能を実行する(あるいは発揮させる)

という一連のステップで、例えば、キッチンタイマーを取り出すために机の引き出しを開けたら、未精算の領収書の束が目に入り、「あ、経理に回さなきゃ」と思いついてしまったり、Webツールであれば、Webブラウザを開いたタイミングで「ついでにmixiをチェックするか」という寄り道をしてしまう、などのスキがあるわけです。

こちらは、やろうと思っていることと関係のない情報が目に入ってきてしまうことによって生じる脱線とまとめることができます。この脱線を防ぐためには、

 1.1つのツールには1つの用途に限定する
 2.1つの入れ物には1つの種類の道具しか入れない

といった1対1の関係、すなわちピアツーピア(P2P)のリレーション(関連づけ)を徹底しておくという対策が考えられます。そして、この「ネガティブハシゴ」対策はそのまま、「ポジティブハシゴ」強化に直結します。

すなわち、1つのことから辿ることができる筋道を1本に限定しておくことによって、本筋とは関係のない情報に注意を奪われることがなくなり、逆に本筋と関係することは目に入ってくるために、ついでにやってしまうための準備、すなわち「ポジティブハシゴ」の準備が整うことになるのです。

オフィスの整理整頓を行う場合や、タスクリストの順番を考える際には、このP2Pのリレーションが感じられるかどうかを目安にすると、「ネガティブハシゴ」に陥らずに済むかもしれません。

▼関連:
思い描いた通りに一日を過ごすためのコツ

記録というからには当然過去のことになります。でも、以前ご紹介した自作のタスク管理ツールでは、未来のこと、つまり翌日の予定(タスク)を想定時間とともに書き出していきます。あらかじめ“一日のデッサン”が描かれることになります。

何もない白紙にやったことを書いていくよりも、あらかじめ鉛筆で描いたデッサンに沿って書いていくほうが、自分が思い描いたイメージに近い一日を過ごせるのではないか、と思っています。

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