Scrapboxはリンクだが
Scrapboxのポイントはリンクです。同一プロジェクトにある他のページへのリンクを簡単につけられる機能が、Scrapboxを他とは違った情報マネジメントツールに押し上げています。
しかし、注意は必要です。なんでもかんでもリンクにすると、あまりよい結果にはなりません。
特にこの問題は、Scrapboxでブログ記事を、つまりある程度まとまった分量のある文章を書くときに出てきます。
例
たとえば、先日R-styleで「考えと世界と隙間」という記事を書きました。
それをScrapboxにも移植したのが以下のページです。
それほど長くはない記事ですが、それでも「キーワード」になりそうな言葉はたくさんあります。もし、それらすべてをリンクにしてしまったらどうなるでしょうか。
このようにたくさんリンクをつければ、たしかにこのページが他のページとつながる可能性は増え、関連ページに表示されるページも増えます。ブログの「回遊率」を考えれば、そうした関連ページは少しでも多い方が良いかのようにも思えます。
しかし、上のページの内容に「広い」や「真ん中」はほとんど関係ありません。にも関わらず、「広い」や「真ん中」というキーワードを持つ別ページが関連ページとして表示されたどうなるでしょうか。
簡単に言えば、ノイズが増えます。言い換えれば、真に関係性を持つページの存在が埋もれてしまうのです。これではあまり意味がありません。
だからこそ、ページの内容に直接関係を持つキーワードに絞ってリンクにした方が良いのです。なんでもかんでも、それこそ自動的であるかのように言葉をリンクにするのではなく、自分が読んで、「これ」と思うものをリンクにしていく。そういう作業が欠かせません。
上のページで言えば、「影響」はページリンクにして良さそうです。あとは「一歩」あたりもキーワードになりそうです。それ以外のものは通常のテキストとしてそのまま置いておくのが良いでしょう。
思わぬつながり
ここまでの話は、Scrapboxにある程度親しんでおられる方ならば、だいたい理解されていることでしょう。話はここからが本番です。
そもそもなぜ、R-styleに記事としてアップした文章を、わざわざ発想工房にもアップしたのか。それには理由があります。
私は上の記事を、最初「人間の行動は思考に強い影響を受ける」という一つのメッセージを元に書き始めました。どのように筆を進めるのかは事前にはわかっていません。ただ、広い部屋の中にたたずむ人が、自分が壁に囲まれていると思い込んでいてまったく動けないイメージだけを頼りに文章を書き始めました。
変化が起きたのは後半です。
文章を書き進めていると、書き始めるまでにはまったく想定してなかった「隙間」や「間(あいだ)」というフレーズが出てきたのです。このフレーズは、私が前々から考え、メモとして書きだしておいたものと見事に一致します。
こういう「書く前には考えていなかったことが、書くことによって発見される」という経験があるのは文章執筆の面白いところですが、WordPressではその「つながり」をうまく明示することができませんでした。そのもやもやが、この記事を発想工房にも転記しておく動機になったのです。
結局「間」というキーワードをページリンクにし、見事に過去のメモとこの記事につながりが生まれました。
さいごに
Scrapboxの良さは、こういう点にあります。私はあらかじめ「間」について書こうと企んでいたわけではありません。だから、この記事を書き終えた後であっても、そのカテゴリは「間」にはならないのです。
しかしScrapboxでは、本文中にふと出てきた「間」というキーワードを軸にして、他のページとつながりを作ることができます。このようなつながりは、あらかじめ「箱」を作っておき、そこにコンテンツを「まとめていく」ようなやり方とはかなり違っています。「箱」に関係なく、コンテンツの中身に応じて「つながり」を作れるのです。
そして、その「つながり」は、最初に述べたように、自動的に(≒機械的に)つけるのではなく、自分が「あっ、これは!」と思ったものだけを選別してつけることで、ページとページのつながりがスパムまみれになることを防げます。
このように意識しておくと、Scrapboxでのブログ運営もきっと面白くなってくるはずです。
▼参考文献:
Scrapboxの基本を学ぶにはこの一冊。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。