前回は、まとめ方の大まかな方向性を検討しました。
- 大全的アプローチ
- 入門書的アプローチ
どちらも良さそうではあるのですが、とりあえず「入門書的アプローチ」に舵を取ることに決め、アイデア出しをしてみました。
光明をつかみとる
紙の上には、いくつかの言葉が並んでいます。これらは、「内容」であり、「タイトル」であり、「コンセプト」でもあります。
名は体を表す、と言いますが、タイトルの決定とはその本が何であるかの決定であり、それは内容と深く関わってきます。タイトルから決まる内容があり、内容から決まるタイトルがあります。
だから、気の向くままに言葉を並べます。序列を設けず、階層を作らず、セクショナリズムは放棄して、言葉を並べます。
いくつか並べてみたところ、「情報社会の歩き方」という言葉にフックを感じました。「これはいけるかもしれない」という暗いダンジョンに差し込むほのかな光明です。
それを頼りに進んでいきましょう。
内容/タイトル
最終的な着地点が、知的生産の技術の入門書だとしても、「知的生産入門」というタイトルでは、興味を持ってもらうのは難しそうです。その言葉に反応する人は、おそらく知的生産にすでに深く関わっている可能性が大であり、領域で言えばすでに内側にいる人です。
その観点で言えば、「情報社会の歩き方」は、外側にリーチする言葉でありつつも、広がりすぎない抑制も持っています。なかなか良いあんばいです。
しかし、その本が知的生産の技術を扱うことも明示したいので、サブタイトルを採用しておきましょう。
『情報社会の歩き方 〜知的生産とその技術〜』(仮)
これが仮題であり、課題です。
このようなタイトルならば、まず情報社会とは何か、それはどんな性質であり、何が重要になってくるかを解説し、その連なりの中に、知的生産の技術を紹介する、という流れを取ることになるでしょう。
このようにタイトルが決まれば、内容も自ずと絞られてきます。内容からタイトルが決まり、タイトルから内容が決まる。どちらが先で、どちらが後という明確な切り分けはできません。相互作用を持っています。
あくまで仮の
とりあえず、タイトルが決まれば、そこから内容を詰めていけます。さらなる一歩を歩めるのです。
とは言え、これは決定ではありません。中身を詰めていった後で、「やっぱりこれはダメだった」ということは十分に起こりえます。少し曇っている日に、突然雨が降り出す程度にはありえます。
なんだかんだで、「大全的なアプローチの方が良いな」とわかって、そちらに舵を切り直すこともあるかもしれません。
しかし、です。現時点で、どちらのアプローチが「良い」のかはわかりません。それがはっきるするのは、もっと具体的にアイデアを詰めていった後のことです。
頭の中にあるアイデアは、無限に等しい可能性を持っています。それは具体を伴わないので、いつでも「すばらしい本」になりうるのです。そのような本(の企画案)が二つあったとしたら、どちらが良いのかを決めるのは難しいでしょう。なんといっても、いくらでも可能性を持つのですから。
だからこそ、一度頭の中から「出す」ことが必要です。決めること。決めて、前に進むこと。それが肝要です。
さいごに
暗いダンジョンにいるとき、目の前の道がどこかにつながっているのか、それとも袋小路なのかは、その地点ではわかりません。どれだけ頭をひねっても、答えは得られないでしょう。答えを得るためには、進むしかありません。
もし進んでみて、そのまま進めるなら進めばいいですし、袋小路なら引き返せばよいのです。残念ながら、立ち止まっている状態で答えを得ることはできません。無駄を避けようと思っても、無理なのです。
もしそのダンジョンが、誰かに攻略されているのならば地図を譲り受ければよいでしょう。しかし、これから書かれる本は、常にまだ書かれたことのない本です。つまり、そのダンジョンは未踏なのです。だから、自分で進んでマッピングするしかありません。
ポイントは、二つです。
- なんであれ、何かを決めて進んでみること
- ダメだったら、やり直すこと(作り直すこと)
つまり、決定しつつも、その決定を仮のものとして扱うことです。そして、そのような操作を引き受けてくれるのが、アウトライナーというツールです。
ですので、次回はアウトライナーでアイデア整理をやってみましょう。
▼今週の一冊:
倉園さんの新刊は、実にパワフルです。しかし、騒がしいわけではありません。むしろ逆です。
ゆっくりと水滴がしたたり落ちるように、その思想が流れ込んでくる一冊です。それでいて、実用名的な側面もきちんとあります。
不機嫌な自分といかに付き合っていくのか。そういう本だとも言えそうです。
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新刊の発売が迫ってきました。タイトルが長いので、何かうまい略称を考えています。別にどう呼称していただいても結構なのですが、エゴサーチ的な問題がありまして……。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。