リンクあらずんばScrapboxにあらず、とまで言えるかどうかはわかりませんが、ページにリンクを作っていくことが、Scrapboxの特徴を最大限に発揮させる方法であることは間違いありません。
今回は、この点をもう少し確認してみましょう。
関連ページはレベル1
Scraoboxにおいて、すでにある記述に対してリンク付けを行えば、ページの下に「関連ページ」が表示されます。
※no link
※add link
※関連ページ
このおかげで、自分の手持ちの情報がゆるやかにつながってくれる、というのがScrapboxの良さの一つなのですが、これは第一段階の便利さでしかありません。
というか、似たような機能であれば、WordPressなどで記事をタグ付けし、related entryを表示させれば(ある程度は)代替できるでしょう。つまり、Scrapboxだけにしかない機能、というわけではないのです。
レベル2の便利さ
Scrapboxの第二段階の便利さは、ブラケット内での入力補完にあります。簡単に言えば、「あれ」をブラケットから取り出せるのです。
「あれ」とは何か?
たとえば、以下のようなページを作成したとします。そのときに、以前自分がブロガーの種類について何か書いた、というような記憶が想起されたとします。それが「あれ」です。脳内に浮かんだ、概念の輪郭線と言い換えてもいいでしょう。
精緻にその内容を思い出せるわけではないが、何かしらそういったことを書いたという記憶とそのシンボルだけが浮かんでくる。そういう状況って、よくありますよね。Scrapboxであれば、それを掴まえられるのです。検索することなしに。
※「ブロガー」を入力
※目当ての語句までtabキーでフォーカスを移動
※リターンキーで本文に挿入
というか、「検索することなしに」と書きましたが、ブラケット内のテキスト入力がそもそも「検索」の代用なのです。
だから、UserScriptと入力しようとしたら、Userの段階でその結果が提案されますし、なんならScriptとだけ入れてもOKです。これは、ページを、つまりは概念を検索している、ということです。
※’User’でも見つかる
※’Script’でも見つかる
他にも、うろ覚えの書名などをパパッと見つけ出すことができます。
※ページを作ってあれば書名もうろ覚えでOK
以上のような、脳内に浮かんだ「あれ」を、ブラケットから即座に引き出せるというのが、Scrapboxの超絶的な魅力です。この簡便さに一度慣れてしまうと、他のツールがいかにもまどろっこしく感じられます。
概念対応
ただし、その簡便さは、プリミティブに実現されるものではありません。意識的な操作が必要です。
これは要件から逆算すればわかりやすいでしょう。
脳内に浮かんだ「あれ」があるとして、それとはぜんぜん違う文字列がページのタイトルになっていたら、どうなるでしょうか。さすがにScrapboxでもそれを引っ張ってくることはできません。
同様に、脳内に浮かぶ「あれ」よりも、はるかに粒度が大きい(言い換えれば、複数の「あれ」が混ざっている)ページに情報がまとまっているときも、同じことになります。
少なくともこのような状態では、ブラケットへの入力から「あれ」を引き出すことはできません。
「あれ」とページタイトルをできるだけ対応させることが重要で、それはつまりページの粒度できるだけ小さくし、一つのページに一つの概念を代表させることが鍵を握ることを意味します。
さいごに
リンクが重要だ、ということは、ページタイトルが重要だ、ということです。
できるだけ細かい粒度でページを作り、それに対応するタイトルを付けることで、ブラケット内でのテキスト入力がおどろくほど便利になります。
もちろん、そういうことをせず、本文中のキーワードをリンクにしていくだけでもScrapboxはかなり便利に使えるのですが、その「キーワードをリンクにする」行為が、実はページ作りと対応している、ということに気がつくと、Scrapboxの世界はさらに広がっていきます。
ぜひ、意識してみてください。
▼参考文献:
Scrapboxの基本的な操作説明と、このツールの哲学をまとめた一冊です。ぜひ導入のお伴にどうぞ。
▼今週の一冊:
たぶん、次回がっつり紹介すると思いますが、堀正岳さんの新刊です。今から読むのが楽しみです。
Follow @rashita2
怒濤のごとく進捗を進めようとしていますが、いったん「考える」溝にはまってしまうと手が止まりますね。できるだけその溝にはまりたくないのですが、そうはいっても考えなければならないことは結構あります。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。