第3回です。
前回は時間割の効用について書きました。一言でいえば、時間というキャッシュをどう使うかについて迷いを最小化できる、ということになります。
このキャッシュは次の2つの意味を含んでいます。
- 1.cash(現金)
- 2.cache(蓄え)
いずれも、「集める」「使う」という動詞の目的語です。つまり、時間の問題とは次の2つの課題にどのように取り組むかを考えることといえます。
- 1.必要な時間をどのように集めてくるか
- 2.集めた時間をどのように使うか
1.必要な時間をどのように集めてくるか
お金と違って、時間は借りたり増やしたりできませんから、必然的に「今やっていることのうち今やらなくてもいいことから引きはがす」ことになります。
例えば、明日が締め切りの仕事Aを抱えている時、3日後に締め切りを迎える仕事Bに取り組んでいるとしたら、仕事Bに割り振っている時間を引きはがし、仕事Aに再分配します。
これはコンピュータのOSの仕事に近いかもしれません。稼働中のアプリケーションの要求に応じてCPUの処理能力を割り振るのですが、異常に高い負荷のかかるアプリケーションがあれば、他のアプリケーションの動作に影響を与えますから、これを強制終了させることで対処するわけです。
仕事でも、複数の仕事を同時並行して進めたり、時間ばかりかかっていっこうにはかどらない仕事の仕切り直し(強制終了)をする、といった形でコントロールをしているはずです。
とはいえ、いつもこうしたコントロールをするのは大変です。
2.集めた時間をどのように使うか
そこで、時間割が活きてきます。アルバイトにシフト表があるように、仕事でも時間割というシフト表を作ることで、仕事全体を「鳥の視点」で眺めることができ、限りある時間というキャッシュを少ない手間でコントロールする上で役に立つわけです。
そのためには、時間割に落とし込めるくらいに仕事の流れをパターン化する必要があります。言い方を変えれば、時間割を作ろうとすれば、おのずと仕事のパターン化が後押しされるのです。
ただし、「鳥の視点」で眺めているだけでは次のような問題が生じます。
- 実際に仕事に取りかかってみたら思わぬ盲点に気づく
つまり、イレギュラーな事態が生じ、時間割で定めておいた以上の時間が必要になってしまうような状況です。
例えば、資格試験の勉強をする際に、
- 問題集を1日5ページやれば10日で50ページできる
- と思ったら、実際には途中から問題が難しくなって1日5ページが不可能になった
といった想定外の事態です。
このような状況に陥らないためには、上記の場合でいえば、50ページ分の内容をざっと見て、
- 本当に1日5ページをキープできるのか?
- 問題の難易度によっては1日2ページしか進められないこともありうるのではないか?
といった事前検証をしておく必要があります。
いきなり印刷を実行するのではなく、プレビュー機能で仕上がりを事前に確認することに似ています。
仕事でいえば、以下の図のように時間割にはめ込んだ仕事がそのコマの中できちんと終わるかどうかを事前にひととおり確かめておく(プレビューしておく)ことです。
具体的には、各仕事を5分ずつ、実際にやってみて手応えを確かめるようにします。そうすれば、「このペースなら終わるだろう」あるいは「このペースでは難しいかも」といった、意志決定に必要な材料が得られるはずです。
このように、予定している仕事にちょっとだけ手をつけることで、一時的に「アリの視点」で仕事をとらえることができますから、「鳥の視点」では見えなかった盲点に事前に気づきやすくなるでしょう。
そして、5分だけとはいえ一度でも手をつけておけば、実際に本腰を入れてその仕事に取りかかる際にもスムーズに行くはずです。
つまり、キャッシュが効くわけです。
まとめ
時間に“キャッシュ”を効かせる:
- 時間割を作って、仕事をパターン化する
- 時間割を作ったら、各コマごとに5分ずつ試行してみて手応えを確かめる
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補記
今回のキーワードは「パターン化」です。自分でパターンを作り出すこともあれば、すでにあるパターンを見つけ出してこれに沿うことで、毎回イチから考えなくても済むようになったり、要らぬ“摩擦”を避けることができるようになります。
自分なりのパターンを作り出すにしても、既存のパターンを見つけ出すにしても、必要になるのは記録です。記録をとって振り返ることで、そこにパターンが浮かび上がります。
記録を取らずとも、繰り返しているうちにパターンに行き着くこともありますが、記録を取ったほうが早く到達できます。
時間割はこのパターンを可視化したものであり、一度可視化すれば以降は“カンニング”ができるため、考える手間と時間が省けます。また、時間割はすでにある制約を織り込んだものになっているはずですので、改めて制約とバッティングしないかどうかの調整も不要になります。
このあたりのラクさ(落差)を極めてわかりやすく示してくれるのが、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」という映画です。
最初は死にまくる主人公ですが、繰り返すうちにパターンを掴み、パターン通りに動くことで目的を達成しています。
「オール・ユー・ニード・イズ・キル」とパターン化の関係については、以下の2記事で詳しく解説しています。