『毎月の給与の中身、把握できていますか?』
もし今お手元に会社からの給与明細があれば、ちょっと開いて見てみてください。
そこには、給与額の表示と、そこから差し引かれる税金や保険料の額が表示されていると思います。
特に差し引きの部分(控除)については、毎月馬鹿にならない金額が引かれているなあ、と、ため息が出てしまいそうです。
が、そこで明細書をたたまず、もうちょっと良く眺めてみてください。特に 給与明細に表示されている控除の部分、それぞれの費用はどういうものか、またなぜその金額なのか、隅々まで理解できているでしょうか?
独立してフリーランスになったら、明細書に記載されているのと似たような計算を、事務のかた頼みではなく自分でこなしていく必要があります。また、個人事業主とサラリーマンでは、支払う項目の種類自体にも差があります。
一見するとややこしく、面倒くさい!という意識が先行してしまう控除のお話ですが、個人事業主になる以上、税理士さんにお願いするのでもなければ逃げ道なし。絶対に必要な知識です。
「腹黒税理士先生が初歩から教える、節税バッチリのお金講座」
「とにかく節税重視のぶっちゃけた講義をお願いします」
「ぶっちゃけですか?」
「ぶっちゃけです。」
(中略)
「名前を出さないならいいですよ。ウッシッシ」
「そこはもちろんですよ。ウッシッシ」(P.5)
本書の冒頭、著者と、講義の先生役として登場する税理士さんはこんなノリで登場します。お金に関わる本としては異例のゆるさ。そして腹黒さ。このぶっちゃけトーク的な文体は、本書の中で一貫していて、ところどころクスッと笑いながら読み進めていくことができます。
本書の登場人物二人は腹黒さんですが、書籍の中身は至極まっとう。また、税金初心者にとても優しい内容です。
≪章立て≫
第1章 税金ってなんぞや?
第2章 カシコクいこう社会保険
第3章 記帳業務はシゴトの家計簿
第4章 ムダなく納税の青色申告
第5章 知らずにすまない消費税
第6章 いずれは見すえる法人化
第7章 しのびよる税務調査の影
「そもそも税金ってなあに?」という謎に、税の歴史や種類をおさえつつ迫る第一章。
給与明細の控除項目の中で幅をきかせるニクイあいつ、社会保険料(でも実はサラリーマンのほうがずっと恵まれてるんですよ!)について学ぶ第二章。
そして、もし書店で立ち読みすることがあれば、特におすすめしたい第三章は、フリーランスでいる以上必ず必要、でもフリーランス初心者はみんな分からない『記帳業務の謎』を追ってゆきます。
今日も日本中で、提出された会社名義の領収書を一生懸命に処理する総務さんがいらっしゃいます。その苦労を、フリーランスは全員が知っている必要があります。何せ国や公的機関とのお約束ごとですからね。
「ぶっちゃけた話、どこまでが経費になりますか?」
経費に積んでよいのはあくまでも「仕事に必要な出費」です。しかしどれが「仕事に必要な出費」かなんて、誰にだって正解は分かりません。たとえばお寺修行レポートを記事として書いているライターさんなら、お寺修行体験ツアーのお金は経費になるでしょうが、そんなの全然お仕事として持っていないライターさんが「新ネタを考えるために滝に打たれる必要があったのだ」と言っても鼻でフフンとあしらわれるだけでしょう。
じゃあ、「お寺修行体験をルポ漫画として書くという企画を出すために体験ツアーを試してきた」なら?ダメ?でも実際にそういう企画書を出してたら?(P.97)
上記の例に限らず、“これは仕事に関わる出費?”という問いは、しばしば判断に困るグレーゾーンで起こります。もしあなたが独立をして、
「これは経費として認められるんだろうか・・・?」
という とーっても微妙な判断が必要になったとき、どうするのが最適解なのでしょう?
経費として組み込まなければ、その費用は所得と見なされ丸々税金がかかってきてしまいます。とはいえ、無理矢理組み込んで、もし税務署に否認されるようなことがあれば、「おまえ嘘をついたな!」と、税金をさらに持って行かれてしまうのでは・・・。そんな不安も残ります。
無理せず経費に含めない? それとも、「この経費はなんですか」と質問されたときに説明できればOKと、無理矢理組み込んでしまうでしょうか?
詳細な解説は本書に譲るとして、先に結論だけを言うと、「経費として認められるか微妙なものについても、とりあえずのっけておいたほうが、最終的にはお得になる(ことがおおい)」のだそうです。
この解説を一例として、この本は「なんだか申告ってややこしい、面倒くさい、怖いイメージがあるけど、実際のところはどうなの?」という疑問に、真正面から立ち向かい、答えを教えてくれる一冊と言えます。
サラリーマン時代は自分でお金の計算をしなくて済む分、節税については医療費控除や家族面くらいでしか考えられないものでした。しかし、独立して事業者になると、節税対策の幅が一気に広がります。
これを、悩みが増える、ととらえるか、勉強すればするほど節税になってお得だ!と考えるかは人それぞれですが、どちらにしても事業者として税金や保険料とつきあっていく必要がある以上、節税効果の大きい方法を知らないのは損というもの。
まずはこの一冊で、事業者としてお金と付き合っていく方法を、基礎から学んでみてはいかがでしょうか?
▼新井ユウコ: