概要は以下の通り。
- 情報の保管場所としてのEvernote
- アイデアメモの扱い方の要点
- どのようにメモを置くか
さっそくいきましょう。
情報の保管場所としてのEvernote
Evernoteは情報の保管場所として最高のツールの一つです。
情報の保管は「一元管理」が望ましいのですが、従来のツールでは難しくありました。メモする環境によって使えるツールが異なっていたからです。
Evernoteはクラウドツールであり、多様な端末から情報を送信できるので、「多元式一元管理」が可能となります。多元式一元管理とは、入力する端末を複数使いながらも、着地する地点は同じ場所になる、という管理方式のことです。一元管理方式のアップデートバージョンと言えるでしょう。
また、Evernoteでは、テキストだけでなく画像やその他のファイルも保存できます。その点も、一元管理方式に適しています。
アイデアメモの扱い方の要点
しかし、Everntoeには情報のinとoutが重なりにくい、という問題があります。前回指摘した問題です。
» Re:メモから始める知的生活 その3「inとoutを重ねる」 | シゴタノ!
この点が、アイデアメモの扱いに課題を生じさせます。
アイデアメモを扱う上で重要なのは、「折にふれて見返し」、「手を入れる」ことです。この二つの行為によって、アイデアメモは死蔵されることなく、むしろ育っていきます。見返さなければ保存した意味はほとんどありませんし、また見返しただけで手を入れなければアイデアは成長していきません。この二つを行ってこその、アイデアの育成なのです。
しかし、「折にふれて」とは、「機会があればそのたびに」という意味であり、アイデアを放り込むだけで終わってしまう、あるいはノートブックにノートを移動させるだけでアクションが完了してしまうような環境では、そもそもの「折にふれて」が発生しません。
また、検索によって特定のノートだけをピックアップする使い方でも同様です。基本的にアイデアメモとは「何の役に立つのかわからない」ものですから、用途が明確なノートだけを拾い上げるやり方では、アイデアメモが目に触れる機会がほとんどありません。
よって、何かしらの仕掛けによって、目に触れる機会を増やしてやる必要があります。
どのようにメモを置くか
おそらく多くの人のEvernoteの使い方は、inboxとなるノートブックと、その他のノートブック(たとえばプロジェクト別や情報の性質別)を作り、ホームベースをinboxにして後は必要に応じて他のノートブックを利用する、という形になっているのではないでしょうか。
- 起動時:inboxノートブック表示 → 作業開始:○○ノートブックに移動 → 作業終了:inboxノートブックを表示
パソコンを使っている間はずっとEvernoteのクライアントを立ち上げている人ならば、高い確率でこのような形になっているはずです。
重要なのは次の二点です。
- 必ずinboxを経由している(inboxのノートブックが表示される)
- ノートブックが表示されるとトップにあるノートが表示される
たとえば、あるノートブックで4番目のノートを表示していても、どこか別のノートブックに移動して、またそのノートブックに帰ってきたときは、表示されるノートは4番目のそれではなくトップ位置のノートです。つまり、「選択されているノート」の位置は記憶されず、ノートブック移動のたびにリセットされます。
この性質を利用します。つまり、inboxノートブックに、複数のアイデアを書き留めたノートを入れておくのです。そして、ノートの整列方式を「更新日」の「新しい順」にします。
こうしておくと、ノートブックを移動してinboxに戻ってくるたびに、この「アイデアメモ」ノートが表示されることになります。「折にふれて」目に入ることになるのです。
しかも、inboxは基本的にゼロになるはずなので、常にこのノートだけが表示されることになります。いくつか別のノートが残っていても、多少「アイデアメモ」ノートに手を入れてやれば、(更新日順なので)再び最上位に返り咲きます。
さいごに
これでEvernoteにおいてアイデアメモを育てていく環境が整いました……と言えるでしょうか。
実は、そうはいきません。なぜなら、今整えたのは、「折にふれて見返す」の部分だけだからです。「手を入れる」に関してはほとんど放置されています。
アイデアメモの保存体制には、1アイデア1ノートの形と、上記のように一枚のノートに集めていくやり方があります。今回は一枚のノートに集め、それを常時目に触れる体制を作りました。しかし、この形では1アイデア1ノートのような融通が利きません。マージなどの作業ができなくなるのです。つまり、少し「手を入れ」にくくなってしまっています。
もちろん、そのような編集的行為はコピペなどを使えば実行できるわけですが、少々の面倒さがそこにある点は否めません。それが「手を入れる」を促進させる効果は持たないであろうことは想像に難くないでしょう。この点は、やはりアウトライナーなどのツールの方がはるかに適しています。
かといって1アイデア1ノートの体制に戻ってしまうと、今度は「折にふれて見返す」の部分が欠損します。さすがにinboxにすべてのアイデアメモを入れておくのは得策とは言えないでしょう。
あちらを立てればこちらが立たずな状況ではありますが、少なくとも、ノートブック移動時のノート表示の性質を押さえておけば、頻繁に見返したいと思っているアイデアメモを見返せるだけの環境は整えられます。これはたとえば、心に留め置きたい目標などの扱いにも応用できるでしょう。
他にもいろいろな使い方ができると思いますが、とりあえず「折に触れて表示されるノート」をうまく使ってみてください。
▼今週の一冊:
そもそもEvernoteじゃなくて、最初からアウトライナーに入れておけばこんな苦労しなくて済むんじゃないか? と言われればその通りです。素直に以下の本でアウトライナーを学んでみるのもよいでしょう。
» アウトライナー実践入門 ~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術~[Kindle版]
Follow @rashita2
今、アウトライナーでもEvernoteでもUlyssesでもない新しいタイプの情報管理ツールを自作しています。これが結構斬新で、我ながら気に入っています。とりあえずα版をメルマガにて公開予定なので、ご興味ある方は覗いてみてください。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由