分類問題について | Aliice pentagram

カテゴリー: R25世代の知的生産

» 前回:記録の管理法=情報整理法について | Aliice pentagram



「分類すべきか、しないべきか。それが問題だ」

とハムレットが言ったことはおそらくないでしょうが、何かしらの記録を蓄えていくときには、必ずこの手の問題が生じます。分類に関する問題です。

分類に関する問題には、

「分類するのかしないのか」
「分類するとしてどう分類するのか」
「分類しないにしてどう利用するのか」

などがあります。これらを総じて≪分類問題≫と呼ぶことにしましょう。

今回はこの≪分類問題≫について考えてみます。

分類とは何か

情報を分類するとはどういうことでしょうか。

分類とは、「類に分ける」ことを意味します。同種類のものにまとめ、全体に区分を与えることと言えるでしょう。

たとえば、記録として保存する対象として、以下のようなものをあげました。

この七つの分け方も、一つの「分類」です。分類することで、それぞれの性質に合わせた管理法が考えられるようになるわけですから、整理を行う上でこの「分類」が役立つことは論を待たないでしょう。

とは言え、です。

「分類さえしておければ、それで万事OKだ」と断言するのはあまりにも短絡的でしょう。もう少し精緻に捉えたいところです。

分類問題の実際例

「チェックリスト」で考えてみましょう。

何かしらの作業を進める上で参照するチェックリストがいくつかあったとして、それを一つのフォルダ(ノートブック or アプリケーション)にまとめておくことは、それ自体が「分類」です。基本的にはそれだけで十分なはずですが、その数があまりにも増えてきた場合は、目視で探すための時間がかかるようになります。その際は、それぞれのチェックリストをさらに分類しなければなりません。

では、どんな分類が考えられるでしょうか。

まっさきに思い浮かぶのは、使う状況(コンテキスト)でしょう。資料作成で使うチェックリストがいくつもあるならば、それをまとめてフォルダに放り込んでしまう。これも「分類」です。これはこれでわかりやすいのですが、コンテキストが事前には想定できないものが出てきた場合は少しややこしくなります。また、一つのチェックリストが複数のコンテキストにおいて参照される場合もやっかいです。

分類問題が生じてきました。

では、分類しない選択はどうでしょうか。そのままの状態では探すのに時間がかかりますが、キーワードを使った検索で見つけられるかもしれません。あるいは、チェックファイルの作成日時ではなく、参照日時で配列されるようにすれば、よく使う物が上に並ぶようになるので、トータルの「発見するために必要な時間」は減少します。

このように、一切の分類をしなくても__正確にはチェックリストという分類は行っているのですが__情報を見つけること・見つけやすくすることは可能となります。

分類は、絶対に必要なものではないのです。

分類に適した情報とそうでない情報

分類という行為は、対象に潜む要素の類似点によってグルーピングを行うことですが、問題はその要素や類似点が重複したり、時間と共に変化してしまう点にあります。

逆に言えば、それらの要素が静的(≒変化しない)であれば、分類はうまく機能します。整理も簡単で、情報を探すときも容易です。

「作業日誌」「アーカイブ」「テンプレート」「チェックリスト」

上記のような記録は、比較的分類が機能します。大きく分類しておけば、それで困ることはほとんどありません。しかし、

「着想メモ」「スクラップ」「読書メモ」

は、なかなか厄介です。これらは事前に使用時の文脈を想定できませんし、また「この情報とこの情報は同じ」とグルーピングすることも難しく、仮にそれを行っても追加の情報によって変化してしまう可能性があります。動的な性質を持っているのです。

もちろん、事前に使用時の文脈が想定できたり(「これはあの企画案で使おう」)、一度設定したグループから絶対に逸脱が起きないようなもの(本の書籍情報など)であれば、分類は機能します。つまり、同じ記録の種類でも、その内側に異なった性質を抱えているのです。これが、記録の管理をますますややこしくします。一つの管理法だけでは、うまくいかない可能性があるのです。

さいごに

今回は、分類にまつわる問題を考えてみました。

大切なのは、記録の種類やその特性を考慮せずに、「一つのやり方さえやれば、万事うまくいく」と考えるのをやめることです。そういうシンプルな方法は、聞こえがよく、自分でも実行できる気持ちが湧いてきますが、情報が持つ複雑さから目を背けているに過ぎません。

次回は、やっかいな三つの記録の管理(分類)について、もう少し突っ込んで考えてみましょう。

▼今週の一冊:

アメリカ合衆国の先行きに特に興味があるわけではありませんが、あの「現象」は何だったのか、という知的好奇心は強くあります。

途中読んでいて、苦しくなってきました。どこにも行きようもない絶望感。そんな壁に囲まれた人たちが願ったことが壁を作ることだった、というのはなんだか皮肉なことです。

» ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)


▼編集後記:




自分の電子書籍と、「かーそる」の第二号と、他の人の原稿チェックなどを進めています。それぞれ頭の使い方が違うのですが、それでも何かしら共通する学びがあるのが面白いところです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由


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