「オール・ユー・ニード・イズ・キル」という映画はまさにこの「パターン化」の重要性をつきつけてくる作品である、と僕は解釈しています。
この映画については、以下の記事で詳しく書いています。
ひとことで言うと、同じ一日が繰り返しやってくる物語。
ただし、「同じである」と認識できるのは主人公だけで、それ以外の人々は「新しい一日」として過ごしています。
「同じである」と認識できるということは、記憶が引き継がれている、ということです。
初日は主人公にとっても「新しい一日」なのですが、“翌日”以降は、“前日”の繰り返しになるため、何がいつ起こるのか、誰によって引き起こされるのかが事前にわかるようになります。
同じ一日が繰り返しやってくるということは、どのタイミングで何をすればうまくいくのか、そのパターン化がきわめて簡単ということです。
事前に何がどんな順番で起こるのかが見えているため、容易に先手が打てます。
仕事でいえば、やってくるメールの内容、かかってくる電話の要件、話しかけてくる上司の要望、などをすべて事前に把握しているので、先に「答え」を用意して“迎え撃つ”ことができます。
その都度その場で考える必要がないので、焦らずに済みますし、焦らないのでミスも減ります。
相手を待たせる時間も最小化できるので、評価もアップするでしょう。
いやいや、そんなことができれば苦労しないよ、と思われるかもしれません。
でも、すべてではないにせよ部分的には実現できます。
毎日にはパターンがある
事前に何が起こるのかが見えていなくても、毎日起こる出来事にはパターンがあります。
抽象的な言い方になってしまいますが、仮にAとBとCという3種類の出来事が、A → B → Cという順番で起こる日もあれば、C → B → Aという日もあるかもしれませんが、AやBやCの中身は変わらないのです。
AとBとCそれぞれの対応方法が身についていれば、反射的にそれぞれに応じることができるでしょう。
出来事の種類が増えても、頻度の高い出来事の数はある程度絞られるはずなので、身につけるべき対応方法の数は実はそれほど多くはありません。
とはいえ、いつもランダムな順番でやってくるよりも、いつも同じ順番でやってくるほうが、対応スピード、もっと言えば反応スピードは格段にアップするはずです。
ちょうど、テトリスでブロック(テトリミノ)がランダムではなく、常に同じ順番で落ちてくるようなものです。
ランダムに落ちてくる場合は、常に判断を要求されます。
- 次に落ちてくるブロックの形を確認する
- そのブロックを収めるための最適なスキマを見つける
- きちんと収まるようにブロックの向きを変える
この3つをほぼ同時に行うわけです。
達人のプレイを見ていて驚かされるのは、この3つが瞬時に行われており、落ちてくるブロックがまるで収まるべきスキマに吸い寄せられているかのように見えることです。
▼「初代テトリスグランドマスター20G世界最速動画 777さん」
でも、このようなプレイは、相当な集中力と精神力を必要とします。この負荷がほどよいからこそ面白いと感じるわけです。
もし、常に同じ順番で落ちてくるとしたら、テトリスとしてのゲーム性は著しく損なわれてしまい、つまらなくなってしまうでしょう。
でも、仕事であれば、ゲーム性が高い必要はまったくなく、むしろ一つひとつ確実に対応できるほうが、提供側としても安心できますし、受け取る顧客側の満足度もアップするはずです。
可能な限りパターン化する
従って、仕事においては可能な限りパターン化することが、勝ちパターンということになります。
具体的には、いつも同じ順番で同じ仕事に取り組むようにするのです。
例えば、
- 午前中はAをやり、次にBを手がける
- 午後はCを進めた上で、Dをこなす
- 退社前にEを確認し、明日の流れを調整する
といった具合です。
同じ時間帯に同じことをすることで、取りかかりやすくなります。「昨日の今頃もこれをやったから、今日も今がこれにふさわしいタイミングだ」と、過去の記憶が背中を押してくれるからです。
もちろん、ときにはパターンを変えることで、よりスムーズに流れるように調整をかけることは必要ですが、毎日ランダムなパターンで行うのはあまりにも消耗が激しく、続けるのが困難だと思うのです。
たとえ時間を取られたとしても、毎日の流れを記録に残すことで、パターン化のための材料が手に入り、翌日以降に少しずつ先手を打てるようになります。記録のために投じた時間以上の時間がリターンとして返ってくるでしょう。
映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の原作コミック『All You Need Is Kill』に以下のようなくだりがあります。
どこでどう動くか
相手は何をしてくるのかこれらはすべて技術なんだ
繰り返しやれば誰でも身につく
「どこでどう動くか、相手は何をしてくるのか」を記録を通して把握することで、先手を打てるようになるわけです。