今ふり返ってみると、受験勉強というのは、必要な情報を見極め、それをいかに要領よく記憶に刷り込むかという、ある種の“競技”のようなものだと考えています。
機械的に暗記しただけで、その後に何の役に立っていないことも少なくないため、“狂技”と呼んでも差し支えない反面、必死に作り上げた知識基盤がその後の勉強の役に立っていると実感できる部分もあるため、僕にとっては有用でした。
有用だと感じているのは知識そのものもさることながら、それを身につける方法を自分なりに確立できたことです。
その方法の1つが暗記法。
借方と貸方の覚え方
たとえば、社会人になって簿記の勉強を始めたときに、最初に「借方・貸方」という概念に出遭います。
- 「借方と貸方、どっちが左でどっちが右だっけ?」
という「あるある」な基本をいかに覚えるか。
参考書などにも掲載されているので、ご存じの方も多いと思いますが、以下のように覚えます。
- か「り」かた → 「り」の右側が左にはらっているので左側
- か「し」かた → 「し」が右にはらっているので右側
ひらがなにしたときの2文字目に注目するわけです。
ついでに英語でどう書くのかも一緒に覚えておきましょう。
これはたぶん僕のオリジナルです。
- 借方 → debit side
- 貸方 → credit side
意味を考え始めると混乱するので、最初は文字の形にのみ注目するのがおすすめです。
まず、debitは「clebit」のように「d」を「c」と「l」に分解します(「なんで?」と思われるかもしれませんが、それはすぐにわかります)。
分解したうえで、以下のように並べます。
- clebit(借方)
- credit(貸方)
例によって2文字目に注目すると…
- cLebit(借方)
- cRedit(貸方)
借方は「L」が、
貸方は「R」が、
それぞれ浮かび上がります。
- cLebit(借方) → Left → 左
- cRedit(貸方) → Right → 右
というわけで、やはり文字から「左」と「右」を読み取ることができました。
多少強引でも、このように「不変の法則性」を見つけてしまえば、忘れても思い出すことができます。
とりかじ(取舵)とおもかじ(面舵)の覚え方
最後にもう1つ。
これは最近ひさびさに観た映画「タイタニック」(1997年)の中に出てきて、気になったので調べて、暗記したものです。
- とりかじ(取舵)
- おもかじ(面舵)
どちらが右でどちらが左かわかりますか?
答えは以下の通り。
- とりかじ(取舵) → 左方向に舵を取る
- おもかじ(面舵) → 右方向に舵を取る
覚え方ですが、これまた2文字目に注目します。
- と「り」かじ → 「り」は左にカーブしている(ひだりの「り」も共通)
- お「も」かじ → 「も」は右にカーブしている(みぎの「み」と「も」は同じ行)
たまたまですが今回も2文字目がカギでした。
せっかくなので、語源も付記しておきます。
- とりかじ(取舵)
└十二支の酉(西)の方向に舵をとることから。
└英語ではPort(ポート)。 - おもかじ(面舵)
└十二支の卯(東)の方向に舵をとることから、卯の舵(うのかじ)が徐々に転じて面舵(おもかじ)と呼ばれるようになったとされる。
└英語ではStarboard(スターボード)
簿記や舵取りに限らず、あらゆる学習において、こういった基本的な知識を最初にきちんと固めておくと、その後の知識習得が効率よく進みます。
「どっちだったっけ?」と迷うことが2回以上続いたら、こじつけでも良いので「不変の法則性」を探してみてください。
「暗記法」のバイブル
大学受験といえば『受験は要領』です。本書において「暗記」は外せないキーワードです。また、現在の僕の仕事術の原点をさかのぼると、この本に行き着きます。
この本から学んだことについては以下の記事でまとめていますのでぜひご一読を。
» 『受験は要領』は大人になって、いつのまにか失われていた要領を取り戻すための一冊
たとえてみるなら、受験勉強は、農作業のようでもある。農民が毎日、野良に出て、根気よくかつ丹念に畑を耕し続けるように、暗記の畑にクワを入れ、暗記の量を増やしていく。またある面では、製造業でもある。腕のいい細工ものの職人が、毎日コツコツと緻密な細工を加えて、製品を完成していくように、自分の暗記を細心に積み上げていくことでもある。
これをなまじ知的労働と美化すると、頭の良さ=考える力などというきれいごとに逃げこむことになり、その結果、暗記の精度は低下してしまう。暗記勉強を続けていくには、自分は“肉体労働者”であるという覚悟が必要なのである。
» 難関大学も恐くない 受験は要領 たとえば、数学は解かずに解答を暗記せよ (PHP文庫)[Kindle版]
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