「居酒屋礼賛」というブログがあります。
» 居酒屋礼賛(いざかやらいさん)
酔っ払っているはずなのに、なぜここまで正確に記録が起こせるのか、ただただ感心させられます。
例えば、以下は渋谷にある富士屋本店という立ち飲み屋さんの紹介記事の一部です。
まずはビール(サッポロ黒ラベル大瓶、450円)とハムキャベツ(300円)を注文し、カウンターの上には千円札を2枚出します。この店は商品と引き換えにお金を払う、キャッシュ・オン・デリバリー。こうやってお金を出しておくと、
「ビールとハムキャベツで750円いただきます。 それじゃ、この千円をもらって、250円お釣りね」
と、そこから取っていってくれるのです。
(中略)
ビールで喉を潤して、ハムキャベツでお腹を満たしたあとは、燗酒(寒梅、280円)をもらって、マグロ中落ち(350円)です。このマグロ中落ちが、これまた「富士屋本店」の名物メニューのひとつ。何といっても、マグロは東京の居酒屋の華ですからねぇ。ガラス製1合瓶で出された燗酒を、猪口(ちょこ)でチビチビとやりながら、マグロの中落ちをつまみます。
1時間ほどの立ち飲みタイム。目の前に残ったお釣りは620円。今日の支払い総額は1,380円でした。どうもごちそうさま!
このような調子で、どこで何をいくらで飲み食いしたのかを公開しているわけです。
おそらく、どこかで飲んだらもれなくこのブログに記事としてアップしているのでしょう。それにしても大変な記事数です。
こんなに飲み続けて、身体は大丈夫なのだろうかと心配になります。
当然のなりゆきとしての出版
実は、管理人の浜田信郎さんとは20年来の友人で、僕が大学時代からのつきあいになります。
浜田さんとご一緒した飲み会(2007年3月9日)も当然、記事になっています(なぜ大学生だった僕が15歳年上の浜田さんと友人になったのかの経緯についても、この記事を読むと分かります)。
» 中華を囲んで同窓会!? … 中華料理「湘園(しょうえん)」(新橋)
「飲むのが本当に好きなんだな~」と、読みながらニヤニヤさせられてしまうほどに、実に楽しそうに綴られています。「飲んだり食べたりすることってこんなに楽しいものだっけ?」と自分がひどく損をしているような気分にさせられます。そして、うっかり飲みに行きたくなります。
まったくもって当然のなりゆきとして、このブログの内容をもとにした書籍がぞくぞくと出版されています。
» 居酒屋礼賛 立石編 (学研スマートライブラリ)[Kindle版]
「好きなことを仕事にしている」の本当の意味
浜田さんは「いつか本を出版するぞ!」という目的をもってブログに記事を書いていたわけではないでしょう。
とにかく飲み屋で過ごすのが楽しい! そのひとときをブログに書いてみんなに読んでもらうのがうれしい! という純粋な気持ちでひたすら続けています。
その証拠に、本が出た後も変わることなくブログの更新は継続されています。相変わらず飲み続けており、その記録も記事としてアップし続けているのです。
飲むのはともかく、きちんと記録をとって記事にまとめるという作業はもはや「仕事」といってもいいでしょう。実際にグルメ記事を専門にするプロのライターもいるわけですから。
浜田さんは、しかし、記事を書いても誰からも直接の報酬は受け取っていないでしょう(広告収入や印税収入は別として)。それでも、好きだし、楽しいから飲み続け、書き続ける。
このように、お金がもらえなくても仕事レベルのことを続けられるときに初めて「好きなことを仕事にしている」と言えるのではないでしょうか。
つまり、報酬が得られなくても仕事レベルのアウトプットを出し続けることができる状態です。
報酬のためではなく、楽しみのために「仕事」をすることによって、その「仕事」はもはや「楽しみ」と一体化します。
本来「仕事」と「楽しみ」は別のものであり、「仕事」を通して報酬を得るという交換、さらに得たお金と「楽しみ」を得るという交換、という2つの交換が必要でした。
それが、「仕事」と「楽しみ」が一体化することで、面倒な交換をせずに済んでしまうのです。
とはいえ、「楽しみ」だけでは生きていけませんから、「楽しみ」と一体化しない、生活費と交換可能な「仕事」も必要です。実際、浜田さんの本業は会社員です。
従って、「好きなことだけで食っていく」のは不可能ではないにしても、せいぜい「好きなことで大いに飲んで楽しみ、悪酔いしない程度に仕事で食べていく」というところが現実路線ではないかと思います。