今回紹介するのはデジタルツールの「アウトライナー」です。
さまざまな用途に使える奥深いツールですが、今回はその基礎を紹介してみようと思います。
しかしながら、「アウトライナー」という呼称は、実は非常におおざっぱなものでしかありません。細かい機能はツールごとに大きく異なっています。
そこで今回は、基本的な素養とも呼べる共通する機能だけに絞ってみていきましょう。
基本の動作-項目の操作
まず、アウトライナーは、一行一行が独立しています。そして、それぞれが操作可能です。
この「操作」には、さまざまな動作が含まれているのですが、以下では、一行目と二行目を入れ替えてみました。これも「操作」の一つです。
テキストエディタでも、一行目と二行目を入れ替えることは可能ですが、コピー&ペーストを使わなければいけません。アウトライナーであれば、行頭の黒丸をドラックし、移動させたい場所にドロップするだけで移動が完了します。あるいはショートカットキーを使うことも可能です。つまり、アウトライナーでは、要素の移動が基本的な動作として織り込まれているわけです。
基本の動作-階層
もう一つ、アウトライナーでは階層を作ることができます。
具体的には「ある項目の下に項目を作ることができる」という機能です。当然、下に作られた項目にも「ある項目の下に項目を作ることができる」が適用されるので、いくらでも__そのツールの上限までは__階層を深く作っていくことができます。
また、そうして作った下位の階層を非表示にすることもできます。
テキストエディタでも、Tabキーで行頭の字下げを作ることは可能ですが、下位要素の表示・非表示を切り替えられるものは特殊なエディタに限られます。
基本の動作-構造の変化
この機能が一番重要です。上記二つの機能があることで、作った構造を後から変化させることができるのです。
上の二行は、もともと並列関係にあった要素を、上位・下位の構造にまとめてあります。階層構造になっていますね。その下では、まったく別のところにあった項目を、それまで存在しなかった最下位層に放り込んであります。結果、当初の構造とはかなり姿が変わりました。
今回のサンプルはごく小規模なものだったので、テキストエディタで構造を変化させることとの差異があまり感じられないかもしれません。しかし、項目の数が多くなってくれば、これが容易に行えることのメリットも大きくなっていきます。
ちなみに、こうした手順が若干面倒なアウトライナーもありますが、基本的に「作った構造を後から変化させられる」点は共通しています。
さいごに
今回は、ごく基本的なアウトライナーの動作について紹介しました。
実際のツールでは、たとえば項目に対する「操作」に違いがあったり、変化させられる構造に違いがあったりします。そのあたりの違いが、使い勝手に結びついていくので、細かいところは実際に使って確かめるしかありません。
それでも、アウトライナーは「一行ごとに項目が独立しており、それが操作対象になっていて、階層構造を作ることができ、あとからその構造を変化させられる」という点は、どのアウトライナーでも同様です。
では、そのアウトライナーは、知的生産においてどのように使えるのでしょうか。
使い道はいろいろあります。一番わかりやすいのは「章立て」を作ることでしょう。「章立て」ほど、アウトライナーが備えている機能を必要とするものはありません。なにせ、書きながら変化していくものなのですから。
このあたりの具体的な話は別の原稿に譲りますが、まずは「テキストエディタ」に加えて「アウトライナー」も、知的生産の道具箱にぜひ加えてみてください。きっと、強力な助っ人になってくれるはずです。
▼参考文献:
アウトライナーの奥深い世界へ足を踏み入れたいのなら、この一冊。
» アウトライン・プロセッシング入門: アウトライナーで文章を書き、考える技術[Kindle版]
▼今週の一冊:
以前も紹介しましたが、ちょうど二回目を読んでいるので、もう一度ご紹介。
あらためて、自分の中で「村上春樹」という作家の存在がどれほど大きいのかを確認している感触があります。作家が「作家」としてあり続けるために必要なこと__そこには技術およびその向上も必須なのですが、それだけでは足りない何かがありそうです。
自分はそれを持っているだろうか、と問うのは、自分には技術があるのかと問うのよりもはるかに恐怖があります。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。