とはいえ、「楽しくない」時間を意図的に盛り込むのは不自然な感じがします。
では、どう考えればいいのか?
そもそもの発端は『こころのふしぎ』という本の以下の一節でした。
楽しいことだけずーっとしていたいんだけど、いい?
いいと思います。でも、そのためには「楽しさ」について知っておいてほしいことがあります。
じつは「楽しさ」には二しゅるいあるのです。
一つは、マンガを読んだり友だちとあそんだりといった、自分が楽しむための楽しさ。
もう一つは、自分ががんばって、だれかを楽しい気もちにさせることで、自分も楽しくなる楽しさです。
じつは、ずーっと楽しいことだけをするには、「だれかを楽しませる楽しさ」じゃないと、いけないのです。
与えられるものが増えると幸せになる
子ども向けの本ではありますが、実際に読んでみると「子どもでも読める大人向けの本」です。
引用した部分では「楽しい」を自動詞(自分が楽しむ)だけでなく他動詞(誰かを楽しませる)としてとらえるという視点が示されています。
「楽しい」を理解するための補助線といえます。
そこでふと以下のフレーズを思い出しました。
得られるものが増えると
幸せになるのではなく
与えられるものが増えると
幸せになる
「誰かを楽しませる」ことは言わば価値の提供であり、大きくとらえるなら社会への貢献ということになります。
でも、そのためにはまず「自分が楽しむ」ことが欠かせません。自分の楽しさを犠牲にして、誰かの楽しさを優先することもできますが──時にそれが求められることもありますが──長く続けようと思えば、「自分が楽しむ」 → 「誰かを楽しませる」という順番は守ったほうが良いでしょう。
自分の「楽しい」の傾向を知る
そうなると、自分にとって何が「楽しい」と感じられるのかを把握しておく必要があります。「おそらく楽しいはず」ではなく「間違いなく楽しい」と自信を持って言えるのはどんなことなのか。
「間違いなく楽しい」と自信を持って言えるようになるためには、根拠が要ります。
つまり記録です。
何かをしていて「楽しい」と感じたら、すかさず書き留めておく。あるいは、ある程度まとまった時間をとって、「自分にとって楽しいと感じられることは何か?」という問いに答える(=思い浮かんだことを書き出す)という方法でもいいでしょう。
いずれの方法でも、メモが蓄積されるほどに、自分の中での「楽しい」の傾向が見えてくるようになります。
「しかるべき形」と「しかるべき相手」は?
結局は過去の自分が得てきた恩恵をこれからの誰かに恩送りすることになるでしょう。
貢献とはそのようにしてしか成しえないと思うからです。
今までに経験のないことをイチから学び、誰かの役に立てるレベルになるまで自分を成長させるだけの時間は人生には用意されていません。
手持ちの“駒”で何とかするしかないのです。
言い換えれば、新たに何かを仕入れる前にすでにあるものをしかるべき形でしかるべき相手にアウトプットすることができれば、十分に貢献できる、ということです。
ここで問題になるのは「しかるべき形」と「しかるべき相手」です。
これを知るためには、まず自分自身に目を向ける必要があります。
- どんな形で受け取ったときに一番グッときたのか?
- そのときの自分は何に困っていたのか?
この2つが明らかになれば、それがそのまま「しかるべき形」と「しかるべき相手」の答えになります。
『こころのふしぎ』にはこれを見つけるための「気もちの日記」というワークが紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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「僕らの業界」の場合、「おしゃれな中学2年生の女の子」のハートをつかまえられるかどうかがカギだと書かれています。彼女たちが騒ぎ始めることで、そこから徐々に高校生・大学生・OLに広がっていく、と。
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では、自分の業界における「おしゃれな中学2年生の女の子」を見つけるにはどうすればいいでしょうか。ヒントは「匂いをかぎつける感性」という言葉です。すなわち、自分の嗅覚を磨くこと。
では、嗅覚を磨くにはどうするか? 直接の答えは書かれていませんでしたが、個人的には以下がその問いに答えているように思えます。
今ある仕事に真剣に打ち込めているとしたら、それはその仕事が自分にとって得意なものであったり、楽しいものであるといった、“噛み合わせ”の妙もさることながら、それ以上にその仕事にかかわる人からほめられたり認められたりすることも大いに影響しているはずです。
- 好きで得意な仕事に取り組み、
- その成果にお客さまが喜び感謝し、
- 上司からは努力を正当に評価される、
この3つのどれか1つでも欠ければ、その仕事はたちまち辛く厳しいものになってしまうでしょう。
つまり、どうしたら人にほめてもらえるか、あるいは認めてもらえるかはあらゆる行動の大前提になるのです。
プロだからといって、何か特別な必勝法を持っているわけではなく、地味ながらも着実に勝てる手順を習慣として身につけている。
「持っている」のではなく「身につけている」というところがポイントです。
一夜漬けではないのです。